ダンジョンの宝箱

「あの宝石っぽいのがお宝じゃないんだとしたら……」


 どこにお宝があるんだろう、とフジヤさんはきょろきょろと周りを見渡す。


「絶対、この部屋がゴールだと思うんですけどね」


 私が言うと、シュウさんが静かな声で言う。


「……実は、はしごがあるだけとか」

「えー、まだこのダンジョン続くってことですか。それはちょっと勘弁ですかね」


 私はそう答えて、フジヤさんと同じく周りを見渡す。あの宝石っぽいものは、ダミーだとしても。あの像自体は、怪しいんだよなぁ。


 そう思いながら、像の後ろに回り込んだ。そして上から下まで眺めまわす。すると、見つけた。像と床の境界線あたりから、像に向かって長方形の細い線。これは、この場所にスイッチか何かがあると見た!


 私はそっと近づいてその線を押してみた。すると、ぺこん。いとも簡単に、その場所がへこんだ。


「「あ」」


 私のやってしまったという声と、別の誰かの声が重なる。声のした方を振り返ると、そこにはシュウさんの姿が。見てしまったという顔をしていたシュウさん。すぐに、真顔に戻って言った。


「……押してしまったものは、しょうがない」

「ありがとうございます。思ったより簡単にへこんでしまいまして」

「……お互い様だ。さっきこちらも、同じ失敗をしたしな」

「だぁ~かぁ~らぁ~。あなたたち、本当に用心という言葉を知らないんですね!」


 フリントさんの怒った声音が室内に響き渡る。


「すみませんって」


 そう言った瞬間、私の目に像の手に載せられていた宝石が映る。


「あー。……すみません、今回は本当にやらかしたかもしれません」


 私が正直に言うと、私の視線を追ってフリントさんとシュウさんが像を見上げる。像の手の上に載っていた宝石。それが像の手が裏返しになることで、今にも落ちそうになっていたの。


「……そういう日もある」

「いやいや! そうじゃないでしょうよ! どうするんですか! あれ、さっき罠かもしれないって言ってたやつでしょ! 落ちてきたら、確実に罠が発動しちゃうじゃないですかっ!」

「うるさいうるさい!」


 フジヤさんがばっと走ってきて、フリントさんの肩をばんと叩く。


「うまく行くかもしれないでしょ!」


 そうこう言っているうちに、宝石がすごい高さから落下。自分たちに命中しないよう、私たちは端っこに避難。


「「ガチャアアアアンッ」」


 ものすごい音がして、宝石は粉々になってしまった。でも、宝石の破片以外にも何かがあることに、私たちは気づいたんだ。


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