毒がだめなら


 シュウさんが毒薬【改】をネズミ将軍に与え続けてくれている間に、もう1つ分の毒薬【改】を作成する。


 しばらくすると、シュウさんが空になった瓶を差し出してきたので、毒薬【改】が入った瓶と取り換える。そしてシュウさんがまた毒薬【改】をネズミ将軍に与えてくれている間に、私は空になった空瓶【改】に先に作っておいた毒薬【改】を注ぐ。


 まだ毒薬【改】が必要となると、新たに特別スキルを1回分消費することになる。私はシュウさんの後ろから、ネズミ将軍をのぞきこむ。HPゲージを確認しないとと思ったんだ。


 ネズミ将軍のHPゲージは、残り3分の1といったところ。そこでシュウさんが持っていた毒薬【改】が途切れたので、また毒薬【改】の入った瓶を渡す。すると、シュウさんが残念そうに言った。


「……どうやら、ボス級モンスターには耐性の概念があって、状態異常系アイテムには使用回数制限があるみたいだ」


 あ、そういえばそんなのもあった! 私、今更気づく。モンスターを倒したりするゲームでは、そのモンスターそれぞれに『耐性』の概念があるものがある。


 状態異常、たとえば毒状態やマヒ状態、火傷状態といったダメージを与えるものや、行動を制限するようなもの、そういった異常を何度か与えると、効果時間が短くなったり、まったく状態異常にならなくなってしまったりする、それが耐性。


 どうやらこのゲームでも、その『耐性』のシステムは存在してるみたいで、とりあえずボス級モンスターにはそれが実装されていることが証明されてしまった。


「とりあえず、毒の状態異常はもう使えないということですね。他に何か手があるかと考えると……」


 私、頭をフル回転させる。少なくとも、今かかっている一番大事な、サイズを小さくするデバフと行動スピードを遅くするデバフはそのまま引き継いでくれて、それでいてダメージを与えられるようなアイテムが必要だ。


「毒が使えないなら、火傷させればいいじゃない! 作戦です!」

「……どっかで聞いたことあるようなフレーズだな」


 シュウさんが鼻をならす。だけどまんざらでもないって顔してる。私は、わたわたとアイテム欄を上から下まで眺める。あった! 火傷状態にできそうなアイテム!


 特別スキル使用3回目! 『ピリゴロの実』! ここへ来るまでに拾った実なんだけど、説明に、食べると火傷状態になるって書いてた。


 特別スキルで、『ピリゴロの実』を『ピリゴロジュース』に変えて、空瓶【改】の中へ。空瓶【改】にたんまり入った液体。


『ピリゴロジュース:とても飲み物として飲めるものではない。飲んだ人間は、炎を吐いたという話も。液体に触れるだけで火傷する』







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