最後の一撃
「シュウさん、今度はこれでお願いします」
私は、シュウさんに『ピリゴロジュース』が入った瓶を手渡す。シュウさんは無言で受け取って、とぽとぽと先ほどと同じように攻撃を仕掛けてくれる。
「なんだかちょっとだけ、ネズミ将軍がかわいそうに見えてきました」
フリントさんが大きなため息をつく。
「……仕方ない。攻略情報に載っていないモンスターだ。どんな攻撃をしてくるかわからない以上、戦わずして勝てるなら、それに越したことはない」
「攻略情報に載っていないって、どうしてわかるんです?」
「……攻略情報くらい、ここに入ってる。今日更新されたのなら、話は別だがな」
シュウさんが空いた片方の手で自分の頭を指さす。
「わぉ。さすがシュウさん」
私、思わず感嘆のため息が出る。ゲームをやりこむ人の中には、モンスターの種族値や特性すべてを頭に入れている人もいる。私は弱点くらいしか基本的に頭に入れないタイプなんだけど、シュウさんは全て頭に入れておきたいタイプなんだろうね。
「……何事も、情報は持っていて損はない」
シュウさんはなんでもないことのように言う。その間にも、ネズミ将軍のHPゲージは削れていく。既にかかっていたデバフは継続するという内容も付け加えておいたから、毒と火傷、サイズを小さくして動きを遅くするデバフは継続中。
「あとちょっと……!」
HPゲージは、ほんの1ミリほど。でもなぜか、そこから減らなくなってしまった。
「あれ……?」
火傷と毒のマークがHPゲージから消えた。これは、もしかして。
「……おそらく、状態異常ですべてのHPは削れないように設定されているんだろうな」
毒や火傷による状態異常では、倒しきれなくて最後は何かしら攻撃しないと倒せない。そういったゲームもそういえば、あったっけ。
「とはいえ、HPゲージは1ミリほどですからね、これなら」
フリントさんは言って、剣の鞘でネズミ将軍の頭をぽかん! すると、ネズミ将軍、くるくるとその場で回って、ぱたんきゅー。
そのとたん、周りに落ちるたくさんの金銀財宝。ネズミ将軍は起き上がると、キキーッと文句をいって、どこかへ消えていった。
『迷いの洞窟ボスモンスター、ネズミ将軍を撃破』
ポップアップ画面が表示されて、私たちは一安心。報酬を回収したら、光の先へレッツゴーだ。
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