ミニ・ネズミ将軍

 二人の姿が暗闇に消えてしまったあと、私とフジヤさんだけが後に残された。


「フリントさんって、面白いよね」


 フジヤさんが、遠くを見ながら言った。


「え、もしかして好きになっちゃいました?」

「まさかっ!」


 フジヤさんが慌てて答える。


「でも確かに、フリントさんは面白いですね」

「ま、現実世界だったら他人押しのけて先に自分が逃げるタイプだと思うけど」


 フジヤさんの言葉に、私は頷く。それは思う。だってゲームの世界でもあれだけ逃げまくってるんだもん、そりゃあ現実世界で、本当に命がかかったら絶対我先にと逃げるだろうね。


 その時、シュウさんからチャットが飛んできた。


『問題ない』

「シュウさんから、問題ないとのチャットが来ました。行ってみますか」


 私とフジヤさんは早速、急ぎ足でフリントさんたちがいるところに向かった。すぐに、シュウさんとフリントさんの背中が見えた。


「どうですか」


 私とフジヤさんはシュウさんとフリントさんの間から顔を出す。すると、目の前に大きな穴があって、そこに小さな生き物がゆったりと動き回っていた。


 ネズミ将軍、あんなに小さくなっちゃったんだ。びっくり。


「……あとは、この効果がどれだけ続くかだな」


 シュウさんの言葉に、私ははっとする。そうだった、この効果は有限だ。そのまま放置していたら、またネズミ将軍は、元の大きさに戻ってしまう。


「それなら、この大きさでいてくれている間に、私がダメージ与えちゃいます」

「……任せる。この小ささだと、逆にこちらやフリントでは攻撃しづらい」


 確かに。小さすぎて、狙いが定めにくいよね。そのことは考えてなかった。私はアイテム欄をざっと眺めた。一つアイデアが浮かんだ。


 ここで私がネズミ将軍にダメージを与えることができれば、私の特別スキルレベルが上がるかもしれない。


 アイテムの一つを引っ張りだした。小さな薬瓶の中に、液体が入っている。


「毒薬か」


 シュウさんが納得したように言う。私は特別スキルを使う。


『毒薬【改】……現在かかっているデバフが時間制限なしに続いてしまう効果を付与する。また、少しずつダメージを与える』


 それからもう一つアイテムを引っ張り出す。大きな空瓶。何かに使えるかなと思って持って来たもの。


『空瓶【改】……この中に入れたものを空瓶の大きさに合う大きさに変える』


 空瓶も特別スキルでちょっとした細工をした。その空瓶に、毒薬を移し替える。すると、毒薬の量がみるみるうちに、増えていく。そして、空瓶の中が毒薬で満たされた。


 よし、やるぞ!

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