一本道
フリントさんを先頭にして、私達は進む。しばらく進んでいると、私の前を歩いているフジヤさんが、その前を歩くフリントさんに声をかけた。
「……ねぇ、ずーっと一本道って、おかしくない?」
「フジヤさんも、そう思いますか。僕もおかしいなって思い始めていたところです」
私は二人の後ろからついて行ってただけだから気づかなかったんだけど。どうやら、今まではずっと一本道だったらしい。確かに、ストーリー重視のRPGでのダンジョンって一本道の場合もあるけれど、わざわざダンジョンを本物っぽくするために、真っ暗に設定してあるようなこのゲームで、一本道なんかにするかな。
ふと、昔やったゲームのことを思いだす。
「どうかしたか」
「いえ。小学生くらいの時にやったゲームで、ダンジョンから出られなくなったことを思いだしたんです」
シュウさんの問いに、私は答える。すごく人気のゲームで私も大好きだったんだけど、ある日ダンジョンで適当に歩いてたら道に迷ってしまって。怖くなってセーブしてしまったのが、運のつき。セーブしてなければダンジョン前の町からスタートできたんだけど、何度やり直しをしたってダンジョンの中からスタートになって、えらい目にあった。
「まだ、インターネットもそこまで普及してない時代で、攻略情報を知ろうと思ったら、友達に聞くか攻略本を買うしかなかったんですよね」
今はインターネットで攻略情報もすぐ見られるし、文章では分かりにくかったら、動画サイトで調べたら出てくるからいいけど。
「あの時代は、迷わせる目的のダンジョンが多かったからな。今は道が少ないダンジョンも多いが」
そう、それがちょっと悲しい。難しいのも嫌だけど、簡単すぎるのも嫌。なんだか、とっても複雑なんだよね。
「……新しく追加されたダンジョンは、実は完全に初心者用に設計された、クリアを目的とされたものだったのかもしれない」
シュウさんが言う。私も頷いた。
「確かに、ありえますね」
「でも宝箱は!? 一本道だとしても、宝箱があるはずですよね? ダンジョンの最奥にあるという感じでしょうか」
フリントさんが言う。すると、フジヤさんが何かに気づいたような声を上げる。
「ねぇねぇ、奥に何か見える。ぼんやり光ってるように見える!」
「宝箱ですかね?」
私もなんだか気持ちが高ぶってくる。目をこらして遠くをよく見てみると、確かに、ぼんやりとした光が見えてきている。でも、私はその光に違和感を覚えた。
「あの……、考えすぎかもしれないんですがあの光……」
「……二つならんでいるように見えるな」
シュウさんが私の思ったことをぴたりと言った。これは、嫌な予感。
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