迷いの洞窟前

 私たちは、迷いの洞窟の前までやってきていた。フリントさんが先頭、フジヤさん、私、シュウさんの順番に並んで歩いて、洞窟前まで来たけど、現状、何事もなくここへ来られた。


 私は、カンナさんが持たせてくれた、ちゃんと傷薬を作り慣れた職人さんたちが作った、よく効く方の傷薬を持ってきていた。私達が作った傷薬は、効果が薄いからね。


「順調だね」

「はい」


 私とフジヤさん、頷きあう。フジヤさんがイラストを描きながら、私は物語やら、次のアイテムのアイデアやら書きながらでもここまで来られた。それはひとえに、フリントさんとシュウさんの戦闘能力の高さのおかげだ。


「まったく。女性陣は完全に、創作活動に忙しいですからね」

「……彼女たちを戦闘人員とカウントしてはいけない」


 シュウさんが落ち着いた声で言う。


「戦闘を行えるのはあくまで、フリント、キミとこちらだけだと考えろ」

「はーい」


 フリントさん、大きなため息。そう、私達は戦闘人員とカウントされても困る。だって、役に立たないもん。創作活動に忙しいもん。


「それで、何かいいアイデアは浮かびそうですか」

「もちろんです」


 私は大きく頷いた。ここまでくる道のりでも収穫はあった。要は、アンテナの張り方の問題だよね。私とフジヤさんは、何かを吸収して帰るぞって気持ちでアンテナを張り巡らして、色んな所に目線をやってるから。


「それでは、いざ、ダンジョン攻略、スタートです」


 フリントさんは言うと、一足先にダンジョンへと入っていく。フジヤさん、私、しんがりをシュウさんが続く。


 ダンジョンの中は真っ暗だった。


「うわぁ、真っ暗ですね」


 私が思わず言うと、シュウさんがふっと笑う気配がした。そして、前と後ろに、仄かな光。


「……本物のダンジョンに近づけて設計されているからな。普通のゲームと違って、プレイヤー側に道が見えるような作りにはしてない」


 確かに、RPGのダンジョンって基本的に、ダンジョンに入ったからといって、真っ暗なのがコンセプトのダンジョンでもない限り、何もなくても道が見えてる場合が多い。もちろん、何らかの操作や技を出さないとどんなダンジョンでも真っ暗で進めません、みたいなゲームもあるけれど。


 目の前に、松明を差し出される。フリントさんもまた、フジヤさんに松明を渡してる。どうやら私達女子陣は、どちらも同じことをやらかしたらしい。


「まったく。松明もなしにダンジョン攻略をしようだなんて、自殺行為もいいところです。光がなければ、モンスターがよってきますし」


 フリントさんのどこか呆れた声。やっぱり心強い仲間は、大事だね。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る