小さな冒険開始?
次の日の朝。目覚まし時計の音で私は起こされた。あれ、なんでこんなに朝早くに設定したんだっけ。今日は休みのはずじゃ……。
そう思いながら、腕だけを伸ばしてアラームを止める。それから上半身だけをベッドから起こす。そしてベッドわきの小さなテーブルの上の、スマートフォンを手に取る。スマートフォンの画面には、カレンダーアプリからの通知が一つ。
『今日9時ゲーム内にて待ち合わせ』
それを見て、私は昨日の夜のことを思いだす。そういえば昨夜、シュウさんと『小さな冒険』に出る約束をしたんだった。
街から遠く離れたところへ出かけるような大きな旅、冒険は装備や人手を整えてからじゃないと厳しいけれど、街の散策や街の周辺なら、そこまで危険はないし、高レベルプレイヤーであるシュウさんが一緒なら問題ない、そう二人で話し合って今日、『小さな冒険』に出ることが決まったんだ。
もちろん遠くへ出かけてみたことのない場所や景色、人を見るのも何かを吸収するきっかけになると思う。でも遠くに行かなくても、身近な場所の人の会話や売られている品物、そういったものに目を向けるとまた別の発見がある。どこに行っても、吸収できることはきっとある。まずは『小さな冒険』から、気づきを得たいよね。
私は準備を整えると、ヘッドギアを装着。ゲームにログインした。昨日、ログアウトする前、スキルがもったいないから店の商品の補充だけは済ませておいた。今日は、新しいアイテムづくりに使えそうなアイデアを回収できるといいな。
そう思っていたら、私はゲームの世界にたどり着いていた。カンナさんのお店の商品を陳列し直しながら、シュウさんを待つ。ちょっと早くログインしすぎたけど、頭を起こすにはちょうどいいよね。
そう思っていたけれど、それはシュウさんも同じだったようだ。予定時刻より30分も前に到着したシュウさんは私を見て、顔をそむけながら言った。
「待ち合わせ時刻より早く来ておいて、待ちながら頭を働かせ始めようと思っていたところだ」
「私もです」
私が言うと、シュウさんは少しだけ安心したような表情を浮かべた。
「『小さな冒険』で行きたい場所のリクエストはあるだろうか。街の散策か、街を出た先にある平原か、それより少し先にある始まりの森くらいなら、出かけても支障はないと思うが」
私は、即答した。
「平原に行ってみたいです。森はまだちょっと早い気がして。まずは、採集クエストでも受注して平原をぶらぶらしてみたいです」
その答えを聞いて、シュウさんは頷いた。
「承知した。では、まずはクエスト受注所に向かうとしよう」
こうして、私の『小さな冒険』は幕を開けたのだった。
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