チラシ作りのアイテム


 自分たちが小学生の時に、図画工作でやったことのある木版画。あれと似たような構造をした、チラシ作り、さらにはフジヤさんの今後の創作活動の役に立つようなアイテムを作ろう。


 私はそう思って、アイテムのアイデアを考える。木版画のように一枚の板を作るべきか。でも、板だと書き心地はどうなんだろう。木版画だと彫刻刀で作品を作っていくけれど、フジヤさんの創作活動的には、ペンとかで描いていくスタイルだよね。


(そうなってくると。材質は紙に近い方がいいか)


 私はそう考えると、カンナさんのお店の中に置いてあった羊皮紙を手に取った。手の中にある羊皮紙に対して、ポップアップ画面が立ち上がる。


『ごく普通の羊皮紙に、言霊・物語付与のスキルを使用しますか』


 私は、『はい』のボタンに指を沿わせる。そして、さらに羊皮紙の傍らに置いてあったガラスペンを手に取る。これも、後でスキルを付与しよう。


 まずは、羊皮紙のアイテムの内容を変更していく。私は、声に出してスキルを付与していく。


「『ごく普通の羊皮紙』を『量産できる羊皮紙』に変更。内容は、この羊皮紙に描いた作品は、書き手が望めば保存することができ、また保存している作品を写し取るには、この羊皮紙の上にまっさらな羊皮紙を重ねることで保存できる。これにより、同じ作品を同じクオリティーで量産することが可能となる」


 羊皮紙は、スキルによって新たな羊皮紙になった。あとは、相方のペンだね。


「『ごく普通のガラスペン』を『七色ガラスペン』に変更。これは、今色をぬりたいものの上でぬりたい色を言えば、インクがその色に変わる仕組み。透明のガラスでできているので、中の色が自分の求めている色になっているか、確認しながら作業することができる」


 これで、ガラスペンも好みのアイテムに変更した。私は、羊皮紙とガラスペンをフジヤさんの前まで持っていくと、彼女に手渡した。


「羊皮紙とガラスペンを作ってみました」


 そして、彼女に二つのアイテムの仕様と使い方を伝える。フジヤさんはそれを聞いて、飛び上がらんばかりに喜んだ。


「こんな素敵なアイテム、本当にもらっていいの!?」


 ああ、このアイテムがゲームの中だけじゃなくて、現実世界でも使えたらいいのに。そうぼやきながら、フジヤさんは嬉しそうにアイテムを受け取ってくれた。そして早速、二つのアイテムを使って、店のイラストを描き始めた。


「こういうのは、1日で決めない方がいいんだ。何日か通って、いい案をいくつか出してみて、最終的にそこから選んでもらうつもり。それまで待っててね」


 フジヤさんの言葉に、私は頷く。確かに、創作活動において、時間を置くのは大切だ。その時は、とてもいい作品に見えたけど、日を空けてみると、そうでもないような気がして来たり、改善点が見つかったりする。だから、日にちを空けて再度確認してくれたり、案をいくつか出してくれると最初から言ってくれるフジヤさんは、信頼できると私は改めて感じた。

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