ステータスは、リアル依存。


「さて、サランさん。貴女のステータスおよびビジュアルが決定しました。髪の色や髪型、瞳の色、肌の色などはいつでも変更できますので、ぜひどうぞ」


 そう言われて、あたしはおそるおそる、右上に表示された「ステータス」ボタンに触れる。


(基本情報)

 名前:サラン(Lv.1)

 身長:151cm

 ジョブ:冒険者

 二つ名:ドジっ子怠惰物書きもどき


(ステータス)

 STR:1

 VIT:1

 DEX:1

 AGI:6

 INT:1

 MND:10


(エクストラステータス)

 LUK:20(-20)

 CHA:20(-20)


(保有スキル)

 速読

 記憶術

 危険察知

 言霊・物語付与


 ステータス画面を一度閉じて、私は大きく溜め息をつく。ちょっといきなり情報量多すぎて、読む気がなくなる。そして何より、私はステータスに詳しくない。英語省略で書かれちゃってたら、分からんのですが……。


 そう思っていたら、小さくステータスボタンにビックリマークがつく。もう一度開いてみると、さっきまで英文字で表示されていた部分の内容が更新されていた。


(ステータス)

 攻撃力:1

 防御力:1

 命中力(器用さ):1

 すばやさ:6

 魔法攻撃力:1

 魔法防御力(精神力):10


(エクストラステータス)

 幸運度:20(-20)

 カリスマ度:20(-20)


 再度ステータス画面を見て、英文字だった部分のステータスの読み取りができて私は安心する。こういうステータスの英文字省略、私一切覚えてなかったから一瞬焦った。RPGとかだとご丁寧に日本語で記載しているものもあるけど、こうやって英文字表記のものもあるもんね。


 そしてステータスを見て、私はどことなく納得する。現実の私も力は全くと言っていいほど、ない。防御力ってどうやったらつくかは知らないけど、持久力はない方。手先は器用じゃないし、むしろ不器用。すばやさは、走る速さだけなら、それなりに。精神力は、社会人になって鍛えられたから高いとは思う。


「あの、アリッサ様。……この、エクストラステータスというのは、何でしょう」


 私が問いかけると、女神様はにっこり笑って答えてくれる。


「これは、持っている人とそうでない人が存在する、特別なステータスです。貴女はどうやら、幸運度とカリスマ度を持っています。けれど、マイナスもある……」


 私のステータスを見て、女神さまは首をかしげる。


「つまりは、いい方向に作用するときは、とてもいい結果を生み、そうでないときには、とても悪い結果を生む、といったところでしょうか」


 何気に、恐ろしいことを言ってくれるな。私は、苦笑いする。幸運度とカリスマ度。これは、現実の私にも覚えのあるものだ。


 何度も幸運の女神様に救われた経験がある。だから、幸運度は折り紙付きだとは思う。カリスマ度。これは、相手にもよる。リーダーシップはないけど、一部の人には魅力があるとよく言われる人間だった。


「カリスマ度は、一部のジョブにおいてとても重要な役割を果たしますから、いいものですよ」


 女神はそう言うと、私に尋ねる。


「それでは、ジョブの希望をお聞きしましょう」

「ジョブの……希望……」


 私は、ここで首をひねる。選択肢が目の前には表示されてこないのだ。こういうのって大概、目の前に表示されるもんじゃないの。


 私が不思議そうな顔をしていたのか、女神様は私に向かって言った。


「ジョブの幅は多岐にわたります。ですので、直接貴女とお話をしながらご希望に沿うようなジョブを決めていくのです」


 ああなるほど。


「サランさんは、どのようなジョブがよろしいですか」

「私の保有スキルの中にあった、言霊・物語付与が役に立つようなジョブがいいです」


 女神様の質問に、私はそう答えた。すると、女神様は大きく目を見開く。


「言霊・物語付与……。それは、とても珍しいスキルですね」

「どんなスキルなんですか」

「モノに様々な《言霊》や《物語》を付与することができるのです。それがどのように活かせるのか、分かりかねますが……」


 女神さまの困ったような口調。このスキルを持った人、よっぽど少ないのかな。私、『言霊』を信じてるんだ。言霊って、簡単に言えば言葉に宿る力のことで、言葉にするとその物事が本当に起きたりするの。そんな力をモノに付与できるのかぁ……。



 今更だけど私は、力や防御、魔法攻撃力が低いから、そもそも前線に立って戦えるようなタイプじゃなさそう。それに、スローライフを送りながら、小遣い稼ぎするつもりだったんだもん、極度にストレスがかかりそうな戦闘には、できるだけ参加したくないかな。それに、せっかくの言霊・物語付与のスキルが使えるシーンを残念ながら、思いつかない。サポート役なら、使う方法もあるかもしれないけど。


 そうなると、言霊・物語付与が使える生産系のジョブか……。昔、異世界でスローライフを送るコンセプトのゲームで、服を生産したりするの、楽しかったんだよね。自分で説明つけて、スキルつけてみたりとか……。


 そこまで考えて私は、ぽんと手を打った。そして、女神さまに勢い込んで言う。


「女神様! モノに《物語》を付与することができるってことは、例えば、そのモノに対する伝説を自分で作って、付与することとか、できますよね」

「ああ、それならできると思います」

「それなら! その《物語》に関連するスキルをつけることも……」


 私の言葉に、女神様は大きく頷く。


「細かな条件などは発生するかもしれませんが、可能なのではないでしょうか」


 女神さまの言葉に私は、飛び上がってガッツポーズ! これは、すごいスキルを手に入れたかもしれない。ここでなら、もしかしたら私、居場所を見つけられるかもしれない。人に怒られなくて、人に必要とされる存在になあれるかもしれない。


 私の心は踊っていた。女神様が嬉しそうに頷いた。


「どうやら、貴女の心は決まったようですね」


 するとステータスボタンの下に、小さなステータス画面が出て来た。


『サラン(Lv.1) 言霊付与術師』


 どうやら、ジョブが無事に獲得できたみたい! よかった。あとは、実際使ってみないとね。

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