第125話 開会式

 あれから、一週間が経過した。

ウェールズ魔術学院の魔術競技大会の当日となった。


「さて、行くか」

「はい」


 朝というには遅く、昼というには早い時間に屋敷を出て、魔術学院へと向かった。


「おはようございます」

「お疲れ様でございます。学院長に副学院長」


 学院に入ると事務長のエドモンがで迎えてくれた。


「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。学院長たちの模擬戦、期待していますよ」

「はい、程々にやらせてもらいます」

「そうして頂けると助かります。学院長たちに本気を出されたら、アリーナが吹き飛びかねませんから」


 そう言って、エドモンは苦笑いをした。


「では、こちらにお願いします」

「分かりました」


 エドモンにより、模擬戦が行われるアリーナに案内された。

魔術学院に新たに、模擬戦闘用に増設されたものだ。


 開会式は既に始まっていた。


「続いて、樹学院長対アリア副学院長の模擬戦になります」


 司会のアナウンスがそう告げる。

いよいよ、樹たちの出番となった。


「学院長方、お願いします。生徒の手本となる戦闘をお願いしますよ」

「分かってます」

「承知しました」


 西の登場ゲートから樹、東の登場ゲートからアリアが登場する。

その時、観客席で見ている学生や、教職員からは歓声が上がった。


『さぁ、いよいよ学院長、副学院長の模擬戦です。お二人は先日、史上初のSSランクに昇格しました。どんな戦いぶりを見せてくれるのか楽しみです』


 そう、アナウンスが流れた。


 二人は、アリーナの中央付近まで移動すると、軽く頭を下げた。


『ルールは、致命傷となる魔術攻撃は禁止とうことのみです。よろしいですね』


 審判がそう宣言した。


「分かった。その前に障壁貼らせてもらう。万が一でも、アリーナを吹っ飛ばす訳にはいかないからな」


『断絶結界』


 樹は観客席と戦闘スペースを分けるように結界を展開した。


「これで、大丈夫だ」


 そう言うと、審判の方を向き直した。


「承知しました。では、只今より、樹学院長対アリア副学院長による、模擬戦闘を開始します」


 審判の合図により、二人は、戦闘態勢に入る。


 アリアが素早く銃を抜き、魔力が込められた弾丸を放つ。

それを、樹は素手で掴むと、粉々に粉砕した。


「おいおい、殺す気かよ」

「樹さまはこの程度では死にませんわ」

「さすが、よく分かっているじゃないか」


 二人の口角はわずかに上がっていた。


「うそ、今、弾丸を素手で受け止めたよね?」

「ああ、しかも、それを粉砕してるぞ」

「あの弾丸、一瞬しか見えなかったけど、凄い魔力が込められていた」

「マジかよ。そんなの、素手で止めれれるか? 普通」


 観客席からは、驚きの声が上がっていた。

その声は、二人に届いていないようであったが。

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