第119話 組織制圧の時①

 翌日、いつもより、少し早い時間に目を覚ますといつものコートに身を包む。


「おはよう」


 階段を降りると、リビングにいたアリアに声を掛ける。


「おはようございます。今日はお早いですね」

「ああ、今日は昼前には出たいからな」

「そうですね」


 リビングのテーブルには、朝食が並んでいる。

アリアと向かいあうような形で座り、二人で朝食を取る。


「ごちそうさま」

「ごちそうさまでした」


 二人は朝食を済ますと、屋敷を出る。

そのま、王宮へとへと向かって歩いた。


「お疲れ様です!」

「はいよ、お疲れー」


 王宮の衛兵に軽く挨拶をして、中に入る。

いつものように、メイドにより、応接間に通された。

樹とアリアは、横に並ぶようにして、ソファーに腰を降ろした。

そこで、待つこと数分、応接間の扉が再び開かれた。


「待たせたな」

「いえ、こちらこそ、朝からすみません」

「いや、構わんさ」


 書類を片手に陛下が入ってきた。

樹の対面のソファーに腰を降ろすと、一枚の紙を渡してきた。


「用意しておいたぞ。許可状だ。確認してくれ」


 樹は、三つ折りにされた書類を開いた。

そこには、制圧許可の旨と、必要に応じての武力行使の許可の旨が書かれていた。

最後に、国王のサインと押印がされている。


「確かに、確認しました。ありがとうございます」

「よろしく頼んだぞ。気を付けて行ってこい」

「「はい!」」


 樹は、再び三つ折りにし、コートの内ポケットに仕舞った。


「では、行ってきます」


 許可状を手にし、王宮を後にした。


「さて、早速行きますか」

「そうですね」


 樹たちは、突き止めた違法売春組織組織の、事務所と思われる所に向かって歩いた。

王都の中心からは少し離れた、歓楽街。

その中でも、裏の通り、治安が良くない所にその事務所はあった。


「なんか、凄い治安悪いな」

「ちょっと怖いですよね」

「ああ、そうだな。ここの二階だな」

「みたいですね」

「よし、行くぞ」

「はい!」


 樹とアリアは薄暗い階段を上った。

階段を登り切った所の、突き当りの扉を蹴り破る勢いで開けた。


「お邪魔するよー」


 樹は、土足のまま事務所の中に上がり込んだ。


「何だお前ら!!」

「勝手に入って来て、どういうつもりだ!!」


 柄の悪い人相をした男が怒鳴り付けて来た。


「責任者どいつだ?」

「おやおや、随分と騒々しいですね」


 紺のスーツ姿の男が、奥から出てきた。


「お前が責任者だな? 未成年売春の容疑で出頭してもらう」


 樹は許可状を突き付けた。


「ほう、制圧許可状まで出てしまいましたか。それに、綾瀬樹とアリアさんが直々に出張ってくるとは、光栄ですな」

「俺も有名になってもんだな」

「私もです」

「お前たち、やってしまいなさい」


 スーツ姿の男が、そう、指示を出すと、先ほどの人相の悪い連中に囲まれた。


「どうして悪党ってのは、こうもワンパターンなんどろうな」


 樹はため息をついた。



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