第107話 樹たちの慰安旅行計画

 慰安旅行には皆、賛成してくれた。

あとは、どこに行くかだけである。

あまり、遠くに行くのも逆に疲れるということで、旅行先はウェールズ国内に決まった。


「迷うなぁ。夏だから海とかでもいいんだろうけど」

「そうですよね」

「セザールはどこか行きたい所はないの?」

「行きたい所ですか……」


 セザールは考え込んだ。


「温泉街というのはどうでしょうか?」


 セザールが提案した。


「いいですね!!」

「私も賛成です」

「温泉街なら、王都からもそれほど離れていませんし、いいと思います」

「私も異論はありません」


 アリアをはじめとする皆、温泉街ということで話はまとまった。


「一応、陛下にも話を通しておいた方がいいよな」

「そうでございますね。また、王都を離れることになりそうですから」

「じゃあ、ちょっと行ってくるわ」


 樹は屋敷を出ると王宮へと向かった。


 いつものように応接間に通され、待つこと数分、陛下が入ってきた。


「お疲れ様。オリエンス王国はどうだったかな?」

「はい、色々と楽しませてもらいましたよ」

「そうかね。そいつはよかった。それで、また、何の用かね」

「はい、また急な話になるのですが、慰安旅行に行こうと思いまして、そのご報告に」

「おお、慰安旅行か。いいな。楽しんで来いよ。お前さんたちにも休みは必要だろうしな」


 そう言って陛下は笑った。


「陛下も一緒に行きます?」

「行きたいのは山々だが、何せ立場上、国を離れる訳にはいかないからな」

「そうですよね。では、僕らは来週から2泊の予定で旅行に行ってきます」

「分かった。楽しいでな。セザールにもちゃんと休むよう言ってくれ。あいつは言わないと永遠に働くからな」

「分かってます」


 そう言うと樹は王宮を後にしようと席を立った。


「では、この辺で失礼します」

「おう、またな」


 歩き慣れた道を歩き、屋敷へと戻った。


「陛下には話を通してきたから旅行に行けるよ」

「左様ですか。それは良かったです」

「セザールも休むように言ってたよ」

「それは恐縮です」


 セザールは綺麗に一礼すると夕食の配膳へと向かった。


「言ってるそばからこれだよ。何でも自分でやらなきゃ気が済まないんだろうな」


 樹は半ば呆れながらも、セザールには感謝していた。

このバカ広い屋敷の管理にはセザールは欠かせない存在だ。


 それから、夕食時、陛下のお許しを貰えて旅行に行ける事をみんなに話した。


「これで温泉に行けますわね」

「マスターと温泉かぁ」

「言っとくが、一緒には入らないからな」

「チェぇ」


 シルフィルが拗ねた。


「当たり前だ。来週の頭から行くから準備しておいてくれ」

「「はい」」

「「かしこまりました」」


 それから、皆んなで他愛もない話をしながら夕食を楽しむのであった。

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