閑話 ミア、樹との出会い
彼女の名はミア、オリエンス王国の第二王女だ。
これウェールズ王国の魔術学院に留学することになった。
王女という立場から、ほとんど外には出たことが無く、国外に行くのは初めてのことであった。
期待と不安を胸に、馬車に揺られていた。
「姫、もう少しでウェールズ王都です」
「分かったわ」
姫の警護ということで、馬車の周りは騎士たちが囲んでいる。
ウェールズ王国に入ってからは、学院長と副学院長が直々に護衛に入ると聞いていた。
「オーウェンだ」
「グリフィスです」
「学院長の綾瀬樹です」
「副学院長のアリアです」
国王、公爵に続いて、樹とアリアが挨拶をした。
『若い……』
ミアは思った。
自分より、年上のことは確かだが、若い青年とメイド服を着た女性という組み合わせにミアは驚いた。
仮にも世界最強と言われた賢者が目の前にいるとは思えなかったのだ。
「何この学院、学長は弱そうだし、副学院長はメイドじゃない」
ミアはつい、反抗的な態度を取ってしまった。
しかし、この発言には全力で後悔することになる。
そう、この綾瀬樹という賢者を名乗る化け物、世界最強の男に。
「なら、模擬戦をしましょう」
樹がそう提案した。
正直、負けることは無いと高を括っていた。
オリエンス王国では負けを知らなかったためだ。
「そんな木刀一本でやるつもり?」
賢者のくせに樹の手に握られているのは木刀一本。
舐められているのだと思った。
「ああ、気にするな。ちょっとしたハンデだ」
『ファイアートルネード』
ミアは渾身の魔法を放った。
それを見た樹は動きもしなかった。
勝ったと確信した。
「ふっ」
その瞬間、樹が笑ったように見えた。
「はっ!」
樹がその木刀を縦に振るうと、炎の渦は真っ二つに切り裂かれ、樹の後ろで爆発した。
「そ、そんなのあり!?」
「ありだ。行くぞ」
『ファイアーアロー』
高速の炎の槍を放った。
『ファイアーカッター』
樹はいとも簡単に下級魔法で中級魔法を相殺した。
「う、嘘でしょ」
『魔弾』
「きゃぁぁぁ!」
ミアは吹き飛ばされた。
立ち上がろうとすると、木刀が目の前で止まっていた。
敗北だ。
「諦めろ」
あちこちが痛む。
しかし、その痛みからもすぐに開放された。
「回復魔法をかけた。これで痛みはなくなっていつはずだ」
「よ、余計なお世話なのよ」
樹はミアをその場に残し、陛下の元へと戻って行った。
『絶対にあいつを超えて見せる』
ミアはそう誓った。
それが、いつしか恋心に変化することにこの時はまだ知らなかった。
樹は強い。
しかし、それだけじゃない。
誰かの心に寄り添い、誰かのために怒れ、行動できる人だ。
その姿にミアは魅かれていくのであった。
【あとがき】
今回は閑話として、ミアと樹の出会いをミア目線で書かせて頂きました。
オリエンス王国の王女というプライドが邪魔をして、中々素直になれなかったミア。
しかし、樹と出会い、過ごすことで樹の人柄に魅かれ、段々素直になってきました。
これから、樹とミアの関係がどのように変化するのでしょうか。
それは、作者である私次第ですが……
読者の皆様も楽しんでいただけましたら幸いです。
あとがき失礼しました。
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