幻と謡われし者たちよ ─もしも現実世界に“使い魔”がいたとしたら─

星月 猫

いつもの帰り道

『リンねぇ、早く次見せて〜』

「(ちょいまち!)」

ガタゴトと揺れる電車の中、少女とその使い魔はとある物語に夢中だった。


***


“使い魔”

それはこのセカイに住まう人が、握って産まれてくる“使い魔の卵”から生まれる唯一無二の友だ。

どんな時でも傍に居て、共に泣き共に笑う自分と繋がった生き物。

そんな存在が、いつからか使い魔と呼ばれるようになったという。


***


「(うぅん……続きが気になる)」

『本当にね!』

私は物語を読んでいたスマホアプリを、タスクから消しながら心でそう呟いた。

その声に答えたのは、服のフードから覗き込んで来ていた私の使い魔──羽毛竜フェザードラゴンであるクルルだ。

「(次読むの、クルルが選んで良いよ)」

『わぁい!じゃあ……月の猫のお話!』

「(……ほんとにコレが好きだね)」

嬉しそうにキャッキャと、でも静かにはしゃいでいるクルルを軽く撫でてから、私はお目当ての作品を探しにかかった。



そんな一人と1匹の様子は、周囲の人々の多くを和ませたのだが……それは別のお話。

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