ファンタジー美少女たちが俺の世界に異世界転生してきた

神木界人

序章

第0話 ありきたりな異世界転生

 大野健おおのたけるは死んだ。


 高校へと向かう通学路において信号待ちをしていたところ、高齢者の運転する車が歩道まで突っ込んできてあえなく。

 抵抗という言葉さえ頭に浮かばないほど一瞬の出来事。


「あぁ、せっかく期末テストに向けて勉強頑張っていたのにな……」


 彼は死の間際、そう思ったらしい。


 死とは不思議なものである。人間は死んだ後どうなるのかを誰も知らない。それは死んでみなければ分からないのだから。

 でも死んでしまったら生きている人間にそれを伝える術はない。だから誰もが未知である死を恐れる。

 健はその恐れが生まれないように少しだけ死に対して自分なりの考えを持っていた。


『死んだらそれは夢を見ていない眠りと一緒で、特に意識があるわけでも無く真っ暗な世界が広がっている。ただそれを認識することも無いから自分自身の苦痛というものは何もないし生活もそこで終わる』


 はたまた……


『死んだらその先には天国と地獄の審判を受ける場所があり、これまで善い行いをしてきた人間は楽園のような天国に送られ、悪い行いをしてきた人間は地獄絵図のような地獄に送られる。そこでは意識がしっかりとしていてまるで第二の人生を送る様な気持ちになる』


 そんな予想をしていたのだがそれは見事に裏切られた。

 彼が意識を取り戻し、目を開けばそこには普通の町が広がっていたのだ。中世ヨーロッパに存在していたような煉瓦張りのおしゃれな家々が立ち並ぶ。

 だが、話す言語はみな健の知る日本語。通貨こそ円では無かったものの、不自由のない生活を送れる環境がそこには整っていた。

「ここが天国か」

 初めはそう思った。だが、ここは天国ではないらしい。

 町の人曰くここはレクセルという世界らしい。もちろん地球とは全くもって世界観の異なる世界。

 つまり健は異世界転生を果たしたのだ。


 そして健はこの世界で生き延びていくため、先人たちの知恵を使い(ただのラノベとウェブ小説を生前読んでいただけだけど)冒険者となり、この世界に脅威をもたらそうとする魔王を倒すという壮大な目標を持って旅を始めた。

 嬉しきことに彼は生まれながらに(転生ながらに)ステータスがこの世界の人間よりも高いようで、モンスターと呼ばれる敵たちは彼に一切歯が立たない。

 それどころか行く町々で悪事を働くもの達を成敗しているうちに自然と「英雄」だの「勇者」だのと言った呼称がついていき、あっという間にこの世界でもそれなりの有名人になってしまった。

 もちろん、転生モノの醍醐味である仲間たちもたくさん(っていう程でも無いけど)集まった。

 最初に仲間になってくれたのがユグドラシルという森に棲んでいたエルフの少女――シリア。

 彼女の森がダークエルフの連中に占領されそうになっていたところをたまたま通りかかった縁からダークエルフたちを根絶やしにし、そのカッコよさに惚れただ何だで一緒に旅をすることに。

 次に仲間になったのがドワーフのメル。マイルドニア鉱山という場所の資源を不当に受け流ししていた近くの村の領主から圧政を受けていたドワーフたちの願いを聞き入れて領主をボコボコにしたところ、感謝の印だと彼女が差し出された。

 一応「奴隷みたいなことはやっていないので少女をお礼代わりにされても困る」と話はしたものの本人たっての「一緒についていきたい」という願いだったらしく受け入れることに。

 その次がラグナリア。この子だけは少し変わっていて、どうやら人間ではなく、人間に作られた機械だったとか。彼女は人間を殺すためにプログラミングされており、時期に魔王の手に渡る予定だったのだが、俺たちの働きかけ(作戦)でこっそり誘拐して数日過ごしたところ、どうやら彼女に人間としての心が芽生えだした。なんだそのご都合主義と思うかもしれないが本当にそうなったのだからしょうがない。

 彼女は「もっと人間が知りたい」とついてくることに。

 最後の一人は紹介するにも及ばない。いよいよ本当にただ勝手について来ているだけのやつだから。

 何も前の三人みたいに何らかのきっかけがあって一緒に旅をしているわけでもない。いわばストーカーのようなものだ。サキュバスのキーラ。突然健の夢に現れたかと思うと、なんか昼間でも平然と現れるようになり、彼ら一行らを付け回している。

 彼女的には健たちの仲間になったらしいがほかの三人含め全員が仲間と認めているかは微妙なところ。


 と、まぁこんな感じで仲間にも恵まれ健は何不自由なくこの世界で楽しい生活を送ってきた。 

 そして転生から六年。ついに魔王のもとへ。

 数々の戦いの中で健たちも強くなり、それなりに戦えてはいたのだが、さすが魔王。

 一進一退の攻防を繰り広げていた。


 お互いの戦力もどんどん消費していき、いよいよ決着が決まろうかというところ、健と魔王は示し合わせたかのように最大級の魔法をぶつけ合った。

 光と闇が会合し、爆風を感じられるほどのエネルギー衝突が発生。その瞬間にブラックホールのような渦が現れたかと思うと、健と魔王、さらには周りにいた彼の仲間と魔王の仲間をも飲み込んでしまった。


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