創作落語~コロナ禍
黒井真(くろいまこと)
演目その1 コロナ退治
ツクテンテン、テンテン・トンテン、チャカテンテン♪
えー、毎度バカバカしい
「政治家は何をやっているんだ!」って、みんな怒っちゃってるけど、アベの
これは、もう、国策としてダジャレでウィルスに対抗しようということですかね。もう、治療する手段がないから笑って自己免疫力をアップするしかない、と。
いや、ほんと。コロナウィルスってね、治療薬とか特効薬ってのが、まだないんですね。だから、自分の治癒力で直すしかない、だから我々としてはひたすら健康度を上げるしかないわけですね。あとは、とにかくウィルスを避ける。「コロナ、コロナ、こっちに
しかし、それでは収まらないのが民衆というやつで。政治家が何か言ったりやったりするたびにネットで炎上しちゃうもんだから、政治家ももう、身動きがとれなくなっちゃう。
えー、ここから先は時計の針をいくぶんか進めた未来のお話でございます。
政府の方は、民衆がやいのやいのと鎮まらないものだから、仕方がない、しょうがないってんで、「コロナ退治のアイデアを出した人に報奨金を出します!」なーんてやったもんだから、みんなソーレってんで、あれこれと言い始めた。
「じっ」
「何してんの?」
「向き合ってるの。コロナと」
「コロナ『
「あれ、腕やら足やら振り回して、何やってんの?」
「コロナ
「いや、タイチーじゃない、退治。そんなんで、ウィルスやっつけられるわけないでしょ。あと、それ、
「あれ? ボク、空気をなでなでして、何してるの?」
「コロナさんが人間に優しくなるように、コロナさんを撫でてるの。『コロナさん、
「うーん、とってもファンタジーな発想で可愛いけど、まったく効果ないねー」
とまぁ、一般大衆が馬鹿なことをやっている間に、政治の世界でもコロナ対策、どうしようか、ってんで政治家、官僚、有識者の皆さんがいろいろと話しあいをしてですね、対策を立てたわけです。
「医療崩壊を避けるためには、医療機関に一気に人がなだれ込むことを避けねばなりません。そのために、感染のピークを低く、長いものに抑えるのが大事です」
「じゃ、検査の数を減らしましょう。そうすれば、『感染者は存在しない』ってことになるじゃないですか」
「マスク不足が深刻です。転売ヤーが朝イチでドラッグストアに並んで高額でネット上で転売していて、本当に必要な人に届きません」
「じゃ、洗って何度も使えるマスクを国民みんなに配ろう! 466億円かけて」
「人から人への感染を防ぐために、過密・密集・密接を避けることが必要です。外出制限しなければなりません」
「しかし、経済への影響が懸念されるなぁ」
「すぐに使わなきゃいけない金券を配りましょう! お肉券、お魚券、お米券、旅行券……」
「国民が家に閉じこもることで、ギスギスしすぎて、DVとか増えちゃってます!」
「よし、ここは動物だ! 昔から、子供と動物には勝てないって言うじゃないか。首相と愛犬が一緒に出ている癒し動画を配信しよう」
が、しかし。
検査数を控えることに――
「いや、患者はいるんだよ! いないってことにしたって現実にいるんだから、患者は減らないんだよ!」
というツッコミ。
マスク不足対策に――
「どうせ布で作って洗うんなら、動画とかテレビで、布で自作する方法を広めればよくない? その方が金かかんないよね? ってか、台湾みたいに個人の認証して買うようにすればいい話だよね?」
というツッコミ。
金券政策には――
「一番必要なのは日本銀行券だよ! ってか出かけられないのに、旅行券ってオカシイだろ!」
というツッコミ。
癒し系動画に――
「余計にイラっと来た――――――っ!」
という、もはやツッコミを通り越して罵声の嵐。
やることなすこと、全てが裏目。
「わざとやってんのか?」
「ワザとボケてんのか?」
「っていうか、ツッコミどころ満載じゃないか? 大丈夫か、この政府は?」
の声。
そうしてみんな、さすがに気づいちゃった。
「ひょっとして、一番悪いのって、ウイルスよりも政治なんじゃない?」
とうとう、暴動が起きちゃった。三密どころじゃない。国会と首相官邸の前には、大群衆の密・密・密。壇蜜……じゃなかった、
これを受けて、首相も閣僚も一斉に退陣と相成って、
はい、これが本当の「コロナ
お後がよろしいようで。
みなさんもね、うがいと手洗いはしっかりやりましょうね。
三密を避けましょうね。
では。ここいらへんで失礼をば。
ツクテンテン、テンテン・トンテン、チャカテンテン……
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