この作品の魅力は、鬱屈とするほどのディストピア的な舞台、そして機甲義体らによる、人間味あふれるやりとりにある。
物語は『悪性橋《あくせいきょう》』という橋の下、『香下《こうか》』で時空の歪みが見つかったことからはじまる。
『陥没樹海《メルトグリーン》』と『蘇怜《スー リィェン》』そして『士々瓦陽当《ししがわら ひあたり》』の三人は、その原因を取り除くべく、香下へと向かう。
『陥没樹海』というのは、右半身は人間、左半身は義手義足の男。
『蘇怜』は本作の主人公の女で、四肢が機械鎧の機甲義体。
そして、彼女に機械を移植した少年が『士々瓦陽当』である。
『半分人間』の機甲義体が紡ぐ物語は、どういうわけか人間よりも人間臭い。
そこに、『人間になりきれないぎこちなさ』というのがあるからだろうか。
この作品の文体は、若干漢文調で、テンポがよく読みやすい。是非一読することをお勧めしたいと思う。