【2話】緑鬼との縁起
なんでも、知識によるとダンジョンやアイテム、モンスターなどを作るにはDポイントというものを消費する必要があるらしい。
名前からして、某無線通信サービス会社のポイントを思い出すからやめて欲しいが、まあそう言うものなのだから仕方ない。
Dポイントを集める方法は基本的に3つある。
一つ目は、ログインボーナスみたいな感じで1日ごとにDポイントが貰えるらしい。
これは、ダンジョンのレベルに応じた量を貰えるとの事だ。
俺の場合は当然1レベルだから1×10で10Dポイント貰える事になる。
二つ目は、外敵を倒す事でDポイントが得られるらしい。
外敵というのはダンジョン内で作ったもの以外の生物という事で、動物だろうが魔物だろうが、人間だろうが何からでも得られるらしい。
それも、ダンジョンマスターやモンスターは自由にダンジョンに出入り出来るため、外に敵を倒しにいく事も可能らしい。
そのため、これが最もDポイントを稼ぐ事が出来る手段だと思う。
三つ目は、他のダンジョンマスターからDポイントを譲渡して貰う事でポイントを得る事ができるらしい。
これは、他のダンジョンマスターの合意が無ければ不可能なため、殆ど得る機会はないと思うが、仮に相当上のダンジョンからDポイントを譲渡してもらえれば、あっという間にDポイントを得る事が出来るから、一番夢があるな。
これらの方法でDポイントを集めて、アイテムやモンスター、ダンジョン機能などと交換していく事になる訳だが、初期ポイントって事なのか10Dポイントあるし早速試してみるか。
俺は球体に手を置く。
すると、目の前に光学ディスプレイで映されているかのように鮮明な映像が視界に映し出される。
「なんか、見た目的にはゲーム画面みたいだな」
喋りながらもぽちぽちと画面をタップして、何と交換できるのかを確認していく。
慣れれば、わざわざタップする必要もなく、念じるだけで操作できるらしいが、俺も生粋の現代っ子だ。
スマホ操作の方が慣れてるし、取り敢えず今はこれで良いだろ。
ダンジョン作成→0Dポイント
ダンジョン拡張1→10Dポイント
ダンジョン拡張2→20Dポイント
ダンジョン拡張3→40Dポイント
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ダンジョン増築1→10Dポイント
ダンジョン増築2→20Dポイント
ダンジョン増築3→40Dポイント
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色々見ていると、Dポイント交換(ダンジョン)という項目があり、よく見ると、一番上のところにタダで交換できるものがあった。
「つまりあれか、まだダンジョンはできてないから道が塞がってるけど、ダンジョンを作る事で道が開通するのかもな」
無料って事なら早速作らせて貰おう。
「作るぞ」
誰にともなく宣言をして、ダンジョン作成をタップしてみる。
直後、軽い地震が起こる。
「うぉ! ダンジョン作成をすると地震が起きるのか!?」
すぐに地震はおさまった。
さて、ダンジョンは出来てるかなと周りを見回してみると、一つ大きな変化があった。
洞窟に通路が出来てやがる。
それも、今まで無かった風が外から流れ込んで来てるから、外に繋がる通路のはずだ。
でも、ダンジョン作成って書いてあったから、もっとすごい物が出来るもんだと思ってたんだが
「ただ通路ができただけじゃん……」
「ま、まあいいや。 今回は無料だったしな。気を取り直してモンスターでも交換してみるか」
知識によると、ダンジョンマスターの行動は自由のようで、ダンジョンにいようと外に行こうと関係ないらしい。
だから、すぐにでも外に行きたいところだが、外では何があるか分からないし、出来れば、強いモンスターを護衛に連れて行きたい。
またぽちぽちと画面を押しながら、今度は、Dポイント交換(モンスター)という項目を見てみる。
1→グラスホッパー、ビッグアント
5→スライム、スケルトン
10→ゴブリン
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「手持ちのポイントが10Dポイントだから、この中から選ぶしか無いな」
…………俺が選べる最強のモンスターがゴブリンな件について。
「ちょっと待とうか。 いや、まだ分からない。 もしかしたら、この世界のゴブリンはめちゃくちゃ強いとかあるかも知れん」
流石にスライムとかだと不安だし、画面をぽちぽちっと押し、ゴブリンとDポイントを交換してみる。
すると、ダンジョンコアがより強く光り輝く。
まるで、太陽の下に出た中学の時の小林校長先生の頭のようだと思って眺めていると、光が止んだ。
ダンジョンコアの方を見ると、近くに体表が緑色の身長が120㎝くらいのゴブリンがいた。
ってか、ゴブリンの方が腰蓑をしてる分だけ、俺よりも上等な格好をしているんだが。
我、文明人ぞ。
その腰蓑剥ぎ取ってやろうか。
まあ、流石にゴブリンの腰蓑は要らないけどな!
「ゴブゴブ!」
何かゴブリンがこっちを見て言っているが、何を言いたいのかさっぱり分からない。
その顔は、どこかずる賢そうないやらしい笑みを浮かべているようにも見える。
とはいえ、実際は分からない。
もしかしたらこの笑みは、こいつなりの精一杯の友好の証なのかもしれないしな。
知識によると、モンスターに命令すれば、その命令はちゃんと聞くようなので、取り敢えず何か命令してみるか。
「俺の事が好きなら首を縦に、嫌いなら首を横に振れ」
ゴブリンは、やれやれと呆れたような表情で肩を竦めながら首を横に振る。
それどころか、こちらをみるやペッと顔に唾を飛ばして来た。
カッチーン。
これには流石の誠さんもガチギレだよ。
まったく友好的じゃないんだが?
お前を信じようとした俺が馬鹿だったよ。
どうにかしてこのゴブリンを痛い目に合わせないと気が済まん。
「こっちに来い」
命令をしながら、俺の目の前を指差す。
「流石にさっきの態度は、良くないと思うわけだよキミ。 分かるかね? ん? そこでだ。 俺が一発本気のデコピンをするからそこで立っていろ」
流石にグーパンは悪いと思うから、デコピンにしといてやる。
ふっ、俺の全力を耐え切れるか見ものだな。
「行くぞ」
全神経を右手の親指と中指に集中させる。
未だかつて、ここまで集中した事があっただろうか、いやない!くらえ、デスフィンガー!
「オラッ!」
ペチンッ!
「グギャッ!」
洞窟内にデコピンの音とゴブリンの声が響き、ゴブリンの額にデコピンの跡が浮かび上がる。
何も言わずに耐えるとはこいつ分かっているなと思っていたら、ゴブリンがムスッとした表情でこっちを振り向く。
そして、右手を構え拳を握ると俺の腹目掛けて振り抜いてきた。
ドンッ!
「かはっ!」
仮にもご主人様である俺に向かってグーパンだと!?
俺だってグーパンは悪いかなって思ったのに何だこいつ。
それも、俺が腹を押さえてうずくまっているのを見て、馬鹿にしているのか、腹を抱えて楽しそうに笑っていやがる。
まったくこいつは、良い性格してやがるぜ。
そこまでするのならばしょうがない。
デコピンで許してやろうと思っていたのに俺にだって考えがある。
「よろしい、ならば戦争だ」
拳を構えニヤリ、とニヒルな笑みを浮かべてやる。
そこからは泥仕合だった。
お互いに殴り殴られの応酬だ。
右、右、左。
左に避けて左フック!
良いのが顔に入ったと思えば、ゴブリンにカウンターを決められ吹っ飛ばされる。
意識が霞みそうになるが、殴られた痛みが気つけ代わりになり、意識を覚醒させる。
こいつにだけは負けたくないと言う気持ちが湧いてくる。
こんにゃろ。
どれくらい殴り合っていたのか、いつの間にかお互いに地面に横たわり倒れていた。
「はぁ……はぁ……お前、ちっこい体のくせにやるじゃねぇか」
ゴブリンの方を向いてそう言うと
「ゴブ……ゴブ……ゴブゴブ」
お前もな、と言うかのようにゴブリンもニヤッと嫌らしい笑みを浮かべながら声を上げる。
もしかしたら、この嫌らしい笑顔はデフォルトなのかもな。
「そう言えば、お前の事をずっとゴブリンって呼ぶのもなんだし、お前に名前を付けてやるよ」
「ゴブ?」
「そうだなぁ、ゴブリン……緑……鬼……そうだ! エンギなんてどうだ?
なんか、縁起も良さそうだしな」
まあ、緑と鬼を組み合わせて、ちょっと読み方を変えただけだけどな。
「ゴブ…………ゴブゴブ」
ゴブリンは、少しの間、顎に手をやって考えていたようだったが、仕方ないなと言わんばかりに横柄に頷いた。
「よしっ、お前の名前はエンギに決定だ! これからよろしくな、エンギ!」
ようやく体を動かせるようになって来たので、上体を起こし、エンギと握手をしようと右手を差し出す。
しかしエンギは、ぷいと顔を逸らすと、パチンッと俺の手をはたき落とす。
どうやら、エンギと仲良くなるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
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