僕らと一緒にゲームをしたママが、二〇二〇年の夏を飾るというお話。

大創 淳

第一回 まず初めに、私の一人称とは?


 ――きっと『ママ』なのだろう。



 二人の娘は二人とも、私に対する呼び方が違う。……生まれてから十三年間、私と一緒に暮らしてきた千佳ちかは、私のことを『お母さん』と呼ぶ。


 ……生まれてから十三年、私と一緒に暮らさず、別の家庭の子供として育ってきた梨花りかは、私のことを『ママ』と……そう初めて呼んでくれた。


 私もね、今朝までは『梨花ちゃん』と呼んでいたけど、これよりは『梨花』……と、本当の意味で、心からの『おかえりなさい』だ。私の、もう一人の娘へ。


 この日、……この日は、

 私の生まれて初めての、執筆の日。……つまりは小説サイトの『書くと読む』の登録日で、初の投稿日。二〇二〇年の四月八日、娘たちの初の登校日……になるはずだった。


 自粛。……そう外出は自粛。

 不要不急の外出は自粛するようにと、そうTVのニュースなどで促されている。


 政府より昨日、発表された。――我々の住む所、この地域も例外ではなかった。



 ……つくづく思う。


 こんな時でないと、娘たちと同じ時間を過ごせるママになれなかったという現実に泣けてくる。一緒に、娘二人と一緒にゲームをしたり、こうしてエッセイを綴るのに、娘二人にレクチャーを受けながら、娘二人に囲まれながら執筆している。


 ――何もかもが新鮮で、


「ありがとう」という言葉が溢れて、この四畳半のお部屋に収まらなかった。


 こんな間近で千佳と梨花の顔を見るのは……まるで初めてのようで、私に似てくるその過程に於いて、千佳と梨花は一卵性双生児なだけに瓜二つのように激似なのだけど、やはり違いがあり、恥ずかしながらだけど、今日、ようやくわかるようになった。


 ……やっと、二人の『ママ』になれたのと、僅かながらでも自信になった。



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