第32話 十九人目①
学習能力に欠けた馬鹿が順当に破滅したって感じかしら?
私――星と運命の女神ズヴィオーズは前回の事を回想する。
どうして異世界転生する奴は無条件で異世界の知能水準は低いので自分は何をしても許されると思っているのかしら? 転移、転生特典を貰って気持ちが大きくなるのというのも要因ではあるけど、どいつもこいつもフィクションと似た展開になるからってそのセオリーを鵜呑みにし過ぎなんじゃない?
知らんけど。 そんな事を考えていると引っ張られる感覚。
さてさて、今回はどんな馬鹿が来るのか。 それとも馬鹿じゃないのが来るのか。
どちらでも私が楽しめれば何の問題もないわ。 さぁ、いらっしゃいな。
さぁ、女神の導きの時間よ!
現れたのはこれと言って特徴のない男だった。 中肉中背、顔も平凡。
直接の交流がなければ居てもいなくて気が付かないレベルの陰の薄さね。
二十八歳、会社員。 性格は――ふーん? 割と珍しいタイプかもね。
取り合えずいつもの説明を行うと驚いてはいたけど理解はしたみたい。
好奇心もあったのか取り合えず一回引くみたいね。 お試しをどうぞ。
SR:治癒魔法
あら、これはちょっと珍しいわね。
彫尉 也撫斗が引いたのは他者を癒す能力でステータスや付与される外付けのスキルではないので現代日本でも普通に扱えるわ。 日本では超能力とカテゴライズされる異能ね。
ただ、外傷限定なので病気にはあまり効果がない点は注意は必要だけど死んでいなければ大抵はどうにかできる人間基準だと規格外の能力だ。
私がそう説明すると彫尉 也撫斗は気分を良くしたのかもっと引くと言い出したわ。
ちょろい男ね。 怪しい勧誘に何度も引っかかりかけただけあるわ。
よしよし、その調子で寿命を吐き出してちょうだいな。
SR:魔力強化
SR:魔法効果拡大
SR:異世界転移権
SR:治癒効果向上付与 (スキル)
SR:詳細鑑定(薬草特化) (スキル)
SR:状態異常完治 (スキル)
N:金貨
N:銀貨
N:金貨
N:銅貨
十回引いたのだけれど、これはまた随分と運がいいわねー。
SRが最初に引いたのを合わせて七連続。 その後は力尽きたのかNだけど充分に当たりの部類ね。
取り合えずざっくりと引いた物を説明すると――
魔力強化は単純にそのままで通常よりも魔法などの異能を使う際の効果が上がる。
魔法的な能力の底上げね。 効果拡大は効果範囲が広がるので効率化に繋がるわ。
こちらも底上げね。 異世界転移はいつものなので省略。
ここから先は転移先で付与される能力ね。
効果向上は治癒に特化した効果を強化する。 要は薬草や魔法薬の効果を引き上げるのでより効果的な治癒が見込めるわ。 状態異常完治は能力の適用範囲が病気にまで及ぶようになるみたいね。
転移先の異世界限定だけど病気にまで対応できる以上、他者を癒すといった点だけで見るなら老衰以外は全てに対応できる万能選手になったわ。
能力の詳細を説明すると彫尉 也撫斗は少しだけ嬉しそうにしていた。
性格上、争い事には不向きなのでそういった意味でもいい感じに偏ったわね。
さて、追加で引くのかしら? 一応、性格と思考の傾向は掴んでいるのでもう満足してそうねと思っていたら案の定、もういいですと言い出したわ。
特に深追いするつもりもないので私は分かりましたとだけ言って今回は終了となる。
さてさて、この男が異世界でどうなるのか楽しみに視させてもらうわ。
――どうでもいいけど最近、異世界に呼ばれる奴多すぎるわね。
正確な所は私にも不明だけど、数多の異世界は生物に近い。
良質な餌を求めて異世界人を呼び出しているのは理解しているので、召喚、転移、転生と手段は様々だが本質的には変わらず世界としての存在を確立する為の肥料である事を異世界人に求めている。
そこに疑問はないけどそれを差し引いても多すぎるわ。
――恐らくだけど原因はアレかしら……。
世界の外は時間の流れがおかしいので正確に観測する事は不可能に近いけど今この瞬間にも新しく生まれたり消えたりを繰り返している。
だけどここ最近は消えるスピードの方が速くなっているような気がするわ。
理由は非常に単純で異世界を滅ぼして回っている世界があるのだ。
正確には自らの糧とする為に喰らって回っている世界だけど。
あの世界は接近すればすぐに分かるほどの禍々しい気配をばら撒いているのでこの空間に来た者達を通してでも観測する事は躊躇われる。 中がどうなっているのかは気になるけど、命を懸けてまで知りたい訳じゃないから基本的に接近を感じたら即座に接続を断っているわ。
世界を生物の一種と定義するなら捕食は最も効率の良い成長方法よ。
他所から異世界人をチマチマ吸収するより世界を丸ごと食べてしまった方が得られるエネルギーは圧倒的に多い。 しかもそんな事を繰り返しているのだ。
早々に巨大になり手が付けられなくなるのは明白よ。
恐らくだけどもう自滅を期待しない限りどうにも――っといけないいけない。
ついつい余計な事を考えてしまったわ。
彫尉 也撫斗に向けて私は微笑んで見せると――
「では、私はこれで。 貴方に良き運命が訪れん事を」
――いつもの社交辞令を告げてその意識を後にした。
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