第30話 十八人目①
いやー、一周回って斬新な馬鹿だったわねぇ。
私――星と運命の女神ズヴィオーズは前回死んだ馬鹿の末路を反芻する。
前知識があるにもかからわず失敗して死亡したけど、よくよく考えてみたらあの世界そのものが話のモデルになっている可能性が高いのでまともな思考能力があったとしてもこうなっていたのかしら?
見方によっては因果が収束していると言っていいのでもしかしなくても何をしても同じ結果になっていた?
……まぁ、今回に限っては思慮の足りない馬鹿が突っ走った結果だから擁護のしようがないわね。
そんな事を考えているといつもの引っ張られる感覚。 お、来た来た。
今回はどんなのが来るのかしら? さぁ、女神の導きの時間よ!
いつもの空間に現れたのは中年男ね。 若い頃は運動やっていた名残かそこそこ体格はいいわ。
名前は
家族構成は妻が一人で子供はなし。
ざっと記憶を漁るとあぁこういう奴かと理解する。
今は割とどうでもいいのでそのまま流し、いつも通りガチャの説明を行う。
泝突 兩は胡散臭いといった様子でこちらを見ていたけど、好奇心が勝り一度試してみようといった気持ちになったみたい。
取り合えずお試しをどうぞ。
SR:異世界転生権
い・つ・も・の。 もはや初手で引くのはデフォルトなのかしら?
ここ最近、どいつもこいつも引いている気がするわ。 知ってるっぽかったけど念の為に説明を行い、死んだら強制的に異世界行きなのでここで使える物を引いておいた方がいいと勧めておく。
泝突 兩は少し迷っていたけど、もしかしたらこの状況は夢じゃないかとも疑っていたので割とすんなり引く事に同意したわ。
取り合えず十連を引く事になったわ。 で、結果は――
R:金槌
SR:スキル 鑑定眼(武具)
SR:スキル 武具製造
SR:スキル 保有スキル成長率倍加
R:金貨
N:銅貨
R:スキル 熱耐性
N:銅貨
N:銀貨
R:スキル 身体能力強化(小)
ふーん。 そこそこ良かったんじゃない?
SRが三連続は割と運がいい方だ。 それにスキルと銘打たれているところを見るとステータスを可視化できるシステムを採用している世界ね。 上手に立ち回れるならいい思いできるんじゃないかしら?
さて、引いた物の説明だけど、金槌、金貨やらの貨幣は見たままね。
問題はスキル関係の方なんだけど、この手の表記が付くのはあの世界でしか使えない事を意味するわ。
以前にも触れたけどスキルという外付けの技能は世界から支給されるものなのでその世界の影響下でないと効力を発揮しないわ。 これがあるからこの手の世界でスキルを振り回して得意げになっている連中は滑稽ね。 せめて自身で努力して技能を身につけなさいよと言いたくなるわ。
で、スキルの詳細だけどほぼほぼ見たままね。
鑑定眼はステータスの参照機能。
これの場合は武具に特化しており、範囲が狭い分かなり詳細にみる事ができるわ。
次に武具製造。 そのままで武具を製造可能な能力ね。
便利なもので材料と作りたい物をイメージするだけで体が勝手に動くみたい。
スキルにはそれぞれ熟練レベルのようなものが設定されているようで、使い込めば成長して高い効果を発揮するわ。 で、成長率倍加はその手間を半分にしてくれるって訳ね。
ま、世界からの優遇措置ってところね。
どうでもいいけどこの手の都合のいい
結局の所、スキルを筆頭に転生特典は馬鹿な異世界転生者を気持ちよくして、その世界の養分になる為に誘導する為の上質な餌。 転生者、転移者とは世界に飼われた家畜に過ぎない。
取り合えず家畜としての人生が決定した泝突 兩はどうなるのかしら?
一応、追加で引くかを尋ねたけどこいつはこの手のフィクションを低俗と馬鹿にする類の人種だったのでスキルと聞いて気持ちが萎えたみたいね。
ま、いいんじゃない? 目の当たりにした時にその考えが維持できるのかが見ものだわ。
念の為、引く気がないかの確認を取って今回は終了ね。
「では、私はこれで。 貴方に良き運命が訪れん事を」
――いつもの社交辞令を告げてその意識を後にした。
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