第19話

「ただいま~♪」詩織が帰ってきた。

「おかえり」母の声がキッチンのほうから聞こえる。

「お兄ちゃん、今日も学校休んでいるの?」詩織はダイニングテーブルの上にある煎餅せんべいを一枚口に咥えた。

「ええ、頭がずっと痛いって言っているけど学校で何かあったのかしらね」包丁で何かを切る音がテンポよく響いている。

「お兄ちゃん、空気読めない処があるから虐められたのかな」制服のまま、ソファーに座り込みテレビのリモコンを押した。

「先に着替えてきなさい」母は振り向かずに言った。詩織の行動を熟知しているようだ。


ピンポーン♪


 インターホンの音が鳴る。

「はーい」詩織が通話のボタンを押しながら対応した。モニターに物凄い笑顔とそれに反比例するようにうつ向いた綺麗な女の子が二人写されていた。

「こんにちは、山本直樹くんおいでですか?」笑顔の女の子が声を発した。

「え、ええ、居ますけど……」女っ気が無い兄への来訪に詩織は驚愕した。

「お見舞いに来たんですけど……」

「は、はい、少し待ってください」詩織はあわてて玄関に走っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る