第6話 千歳

(1)


「こら~!空起きろ!!朝だぞ!!」


そう言って空の部屋に乱入する天音。

私はゆっくりと服を着替えて持ち物を鞄に入れて空の部屋に行く。


「空……そろそろ朝ごはん」

「ああ、わかった」

「天音も自分の準備しないと」

「もう済んでるよ!」


天音の言葉を背に私は一足先にダイニングに行く。

そして席に座って皆を待つ。


「冬夜さん、そろそろ時間ですよ。起きてくださいな」

「おはよう愛莉」

「子供たちに見られたらどうするんですか?困った旦那様ですね」


ちなみに何度も見たことがある。

それで困ってるそぶりを見せたことは一度もない。

空と天音が降りてくる。

そして、祖父母もそろって食事。

ご飯を食べると支度をする。

さすがに小学生で化粧はない。……なんて思ったら大間違い。

リップくらいはする。

天音はまだ早いって言われてるけど。

仕度を済ませる頃水奈が来る。


「おはよう水奈」

「あ、お、おはよう」


水奈が戸惑ってるのは私の機嫌がいいから。

こんなに晴れ晴れとした朝を迎えるのは生まれて初めて。

空が私を見守ってくれる。

あの一件で空は私を意識しだした。

例え双子だと分かっていても意識しだした。

何も恋愛の終着点は結婚と思い込む必要はない。

子供なんていらない。

それとも空は欲しいのだろうか?


「なあ、天音。今日の翼なんか様子変じゃないか?」

「朝からずっとああなんだ。水奈」


水奈と天音が不審がってるのは私が空と腕を組んで歩いているから。

私の想いはあの時しっかり「共鳴」で示した。

そして彼も「反応」を示した。


「翼!抜け駆けは無しって約束したぞ!空から離れろ!」

「抜け駆けしてない。ただ空の意思も尊重するべきじゃない?」

「うぬぬ……」


悔しがる天音。

水奈も羨ましそうに見ている。

そんな彼女たちと一緒の時間も昇降口まで。

そこからは校舎が違う。

恨めしそうな二人の視線を受けながら教室に向かった。


「おはよう」

「おはよう」


美希や麗華と話をする。

美希ごめんね、空は私のものになったから。

授業中も空との「対話」は続く。

私が空に心を開いてるから。

空もそれに反応してくれる。


昼休み。


「ねえ翼、なんかいいことあった?今日やけにご機嫌じゃない?」


美希が聞いてきた。


「まあね、良い事はあったよ」


そしてこれからも続くよ。


「今日翼ちゃん達家庭訪問だよね?」


麗華が話題を持ち出した。


「うん、高槻先生がくるみたい」

「私のところは明日。ああ憂鬱だわ」


麗華が言う。


「私のところは大丈夫かな?ママは高槻先生より強いから」


美希が言う。

美希の母親は石原恵美。芸能事務所「USE」の専務を務めている。

地元の芸能事務所じゃ最大手。東京にも支社を構えている。

父親は石原望。貿易会社「ETC」芸能事務所「USE」の代表取締役。母親には頭が上がらないのはうちのパパと一緒。

パパの知り合いは皆妻に頭が上がらないらしい。

そうでないのもたまにいるみたいだけど。


「それにしても、空君低学年にも人気出て来たみたいだね」


美希が話題を変える。

それが悩みの種だった。

空は誰にでも優しい。遠足の時の天音の事件を境に1年生や2年生の女子からも目をつけられた。

空は基本的に何もしなかったらイケてると思う。それは父親似だと愛莉は言ってた。

あの性格はどうにかしないとただでさえ水奈や目の前にいる美希に惚れられているのに。

その空は友達の光太や学と給食を食べてる。

食べた後は大体ベランダで時間を潰してる。

私達は教室で喋って時間を潰す。

そして午後の授業を受けると家に真っ直ぐ帰る。

今日は家庭訪問だ。

時間も決まっている。

天音は明日らしい。

母さんは部屋を掃除していた。


「先生は千歳ちゃんですよね?」


高槻千歳先生の事だ。

水奈の父親・多田誠の妹らしい。

旦那の高槻翔は中学校の体育教師。

バスケットボール部の顧問をしてる。

ちなみに水奈は父親の事を嫌ってるらしい。

理由は至ってシンプルで「気持ち悪い」

そういうお年頃なんだろうか?

ちなみに私のパパはそんな事がない。

愛莉が押さえているのか分からないけど水奈の父親のような溺愛というわけではないらしい。

基本的に自由にさせてくれる。育児に興味がないとかそういうわけでも無い。

現に私達がキスをしたと言った時落ち込んでた。

パパにもそういう感情あるんだなって思った。

後日愛莉のお父さんに相談しに行ったらしい。

飲んで帰って来た。

パパでもそういう気分があるんだ。

パパは基本的に優しい。甘いとかそういうのではなくて優しい。

愛莉と同じで私たちの主張をちゃんと聞いてくれる。

現に浴室の拡張工事をしてくれることになった。

そんなパパだけどさすがにファーストキスの相手が空だってことは言えなかった。

でも空が愛莉に言ったみたいで愛莉からパパに告げられたみたいだ。

それでもパパは何も言わない。

悩んではいるみたいだけど。


「翼、そろそろ高槻先生くるみたいだよ」


空が部屋の外から呼んでいる。

私は部屋を出て二人でリビングに向かった。


(2)


家庭訪問の時期に入った。

まあ、家庭の事情を聞いて学校での生活を伝えるだけの仕事だけど。

簡単なようで難しい。

幸い私のクラスには問題児はいない。

問題と言えば問題は抱えているけど。

まずはその問題から取り掛かることにした。

片桐家の呼び鈴を鳴らす。


「千歳ちゃんいらっしゃい」


母親・片桐愛莉が出迎えてくれた。

片桐愛莉は私の兄・多田誠の友達・片桐冬夜さんの友達の嫁。

掴みどころがない。


「愛莉さん。今日は私仕事で来てるから」

「あ、そうね。いらっしゃいませ、高槻先生。さ、どうぞ」

「失礼します」


そう言ってリビングに通される。

リビングには翼と空がいた。

私は腰掛けると説明をする。

と、いってもこの二人に関しては特に問題はない。

成績も常に上位を保ってるし、問題を起こすことは無い。

問題は妹の天音だ。

職員会議でも天音の行動についてたびたび問題になる。

桜子先輩は大変だろうな。

私の説明を笑顔で聞いていた。


「ご家庭で何か変わった事とかありませんか?」

「ん~特にないですね。2人とも良い子ですよ」


愛莉さんはそう答える。


「親子のトラブルとかはないですか?」


トラブルを起こすような2人じゃないけど。


「特にないですね。2人共学校では何かやってるんですか?」

「いえ、さっき説明した通り特に問題ないです」


天音と姉妹とは思えないくらいに。


「強いて言うなら交友関係が非常に狭いくらいですね。休み時間も2,3人で固まってるし。もう少し友達を作ることが出来ればいいのですが」

「協調性が無いという事ですか?」

「いえ、そういうわけではないんです。ただ自分たちの殻を作ってそこから出ないんです。2人とも家では何をしてるの?」


翼と空に聞いてみた。


「宿題してゲームやってテレビ見てる」

「宿題して本を読んでる」


空と翼が答えた。

そういうご時世ではないけど聞いておいた方がいいだろうな?


「友達と遊びに行ったりしないの?」

「大体翼や天音と遊ぶから」


空が答えた。


「そこが問題かもしれないですね。もっと友達と遊んだり。外で野球やサッカーしたリ」

「僕球技苦手だし」

「私がやると皆しらけるし」


翼は何でもこなす。見ただけで理解してしまう。愛莉さんそっくりの才能を持っている。


「翼はスポーツとかに興味ないの?サッカーとかミニバスケとか」

「面倒だからやらない」


そこは冬夜さんに似たのか。


「お母さんから何か2人に要望はありませんか?将来こうさせたいとか?」

「まだ2人共進路を決めてないみたいですから。中学になってから決めればいいと思ってます」

「私は決めてるよ」


翼が答えた。

愛莉さんも初耳らしい。


「いつの間に決めたの?母さん聞いてないけど」

「この前決めたから」

「翼さんの夢は何なの?」


私は翼に聞いてみた。

すると予想だにしない答えが返ってきた。


「空と一緒に父さんの事務所継ぐ」


空と一緒?


「それって共同で経営していくって事?」


そういう意味だと思ったけど確認せずにはいられなかった。


「そうです、一緒に暮らして一緒に働いて生活する」


翼は楽しそうに答えた。


「一緒に暮らすって……」

「私だって姉弟で結婚できない事くらい知ってますよ」


その回答に空も驚いていた。


「まあ、仲のいい兄妹なのは良い事ですね」

「私と空そう言うレベルじゃないから。恋人だよ」


私はどう返事したらいいか分からなかった。

冷静になれ。

まだ、小学5年生。心変わりはいつあってもおかしくない。

しかし愛莉さんの子供……油断はできない。


「空はそれでいいの?」


愛莉さんが空に聞いていた。


「父さんの会社継ぐのは僕も一緒だから翼がそうしたいならそれでもいいんじゃないかな?って」


どうでもよさそうな回答だった。

あまりまじめに考えると頭が痛くなりそうだ。


「わかりました。そろそろ次に行かなければならないのでこの辺で失礼します」

「はい、お疲れ様です」


愛莉さんはそう言って見送ってくれた。

私は次の家に行く。


「空と一緒に暮らす」


翼の一言が嫌な予感しかしないのは気のせいだろうか。


(3)


次に訪ねたのは桐谷家。

ここも桐谷学に対しては何の問題も無い。

問題があるのは弟の遊。

やっぱり桜子先輩の受け持ちだ。

私が関与する事じゃない。

呼び鈴を鳴らす。

母親・桐谷亜依さんが出てきた。


「千歳、いらっしゃい!」

「桐谷さん、私今日仕事で来てるから」

「あ、それもそうね!どうぞ。高槻先生」


そう言って居間に通される。

壁には秋吉有栖。昔のアイドルALICEのポスターと最近の売れっ子俳優烏丸こころのポスターが張られてあった。


「ああ、それ、うちの馬鹿亭主の趣味。困ってるんだよね」


亜依さんの旦那は桐谷瑛大。

大学時代からの困った人で仲間に迷惑をかけてる。

大体のトラブルはうちの兄と瑛大さんが起こしてた。

居間に座ると学の学校生活について報告した。

学も特に問題はない。優等生だ。

成績もいい、社交性もある、そして真面目で責任感がある。


「鳶が鷹を生むってこの事だよね」


亜依さんはそう言って笑っていた。


「ご家庭ではどうですか?」

「凄いいい子だよ。私の代わりに家事もやってくれるし娘の面倒も見てくれる……問題は遊よね。旦那の血を見事に引いたみたい」


亜依さんが言う。


「それは水島先生に相談してください」

「そうね……ごめんごめん。で、学に何か問題ある?」

「いえ、学校でも面倒事を進んで解決しようとする責任感あるお子さんですから。学級委員も自らするし」


ある意味、片桐兄妹より優秀かもしれない。


「学君は遊びに行ったりはしないんですか?」

「私が不規則な生活してるでしょ?だから兄弟の面倒見るのが精いっぱいみたいで。悪いことしてるなとは思ってるんだけどね」

「学は何か困ったこととかないの?」


私は学に聞いていた。


「特にないですね。恋も大人しいけどいい子だし。ただ遊にてこずってるくらいですね」


桐谷遊。片桐天音たちとつるんで問題を起こす困った存在。

首謀は天音と多田水奈……兄の娘だけど。

毎年……毎日のように問題を起こす、


「わかりました。それではそろそろ次があるので失礼します。お茶ご馳走様でした」

「いいのよ、また昔みたいに女子会しようよ!」

「はい、それではまた……」


天音と言い水奈といい遊といい粋といい問題児は3年生に集中しているらしい。

そして学校は全員を同じクラスにまとめて水島先輩に押し付けた。

水島先輩は毎日胃が痛いらしい。


(4)


今日の最後の訪問。石原美希の家についた。

石原美希は石原恵美先輩の長女。

やはり特に問題も無い。

そして弟の大地にも問題がない。

恵美先輩の躾がいいのだろうか?

呼び鈴を押すと恵美先輩が出た。


「ようこそ、高槻先生」


私はリビングに通される。

ソファに腰掛けると紅茶を出された。


「うちの娘はどうですか?」


恵美先輩から話を持ち掛けられた。

恵美先輩に学校での美希の状況を報告する。

恵美先輩はそれを聞いて満足したようだ。


「私も仕事が忙しくて子供にずっと構ってやれなくて新條に任せっきりの部分もあったから心配してたのよ」


恵美先輩は言う。

やっぱり新條さんの「教育」が影響してたか。


「美希さんも成績は良いし、ただちょっと友達作るのが苦手なところがあるけど上手く学校生活送ってます」

「そうみたいね、翼や麗華と仲良いらしいし」

「ただ、最近悩みがあるみたいなのでそれが気になりますね。恵美先輩は聞いてませんか?」

「美希?そうなの?なにがあったの?」


恵美先輩が美希に聞いていた。


「あ、えーと……」


美希は言うのを躊躇ってる。


「大丈夫、誰にも言わないから。どんな些細な事でもいいから教えてくれないかな?」


私が美希に言った。

美希は躊躇っていたがしばらくしてから話を始めた。

もう思春期なのだろうか?

美希は恋をしたらしい。

友達・片桐翼の双子の弟・片桐空に恋をしたらしい。

それで告白したら天音と翼が同時に告白して、翼に至ってはその場でキスをしたらしい。

どうアドバイスしたらわからなかった。

想定外だ。


「愛莉ちゃんの娘さんがライバルか。難しいわね」


そういう問題じゃないと思います。恵美先輩。


「遠足の時料理を教えてって言うのはそういう魂胆があったのね?」


恵美先輩が聞くと美希はうなずいた。

恵美先輩と私は悩んでいる。


「やっぱり無理なのかな?」


美希は今にも泣き出しそうだ。


「空君は誰を選んだの?」


恵美先輩が聞いていた。


「まだそういう感情を理解できないって言われた」


10歳じゃ無理もない。


「でも最近翼と妙に仲が良いから……」

「だから諦めるの?」


恵美先輩が聞いていた。


「姉弟だもの、仲が良くて当たり前。それは恋なんかじゃない。あなたにもまだチャンスはある」


恵美さんが言う。正論だと思う。……ただ翼の発言を聞いた私は複雑に思えた。


「そういう感情が理解できない?ならあなたが叩き込むくらいの勢いでやりなさい!私はパパをそうやって『教育』したわ」

「……わかった」


美希がうなずく。


「……恋愛もいいけど、学業を疎かにしないようにね」


教師として当たり障りのない事を言っておいた。


「あら?この子の成績なら問題ないって言ったのは高槻先生よ?それに勉学よりも大事な事があるのはあなたも学んだでしょ」

「……そうですね」


そろそろ時間だ。


「そろそろ失礼します。美希。頑張ってね」

「ありがとうございます」


そう言って私は家を出た。

まさか小学校5年生で恋愛話がでるとは……。

私は大学生になって初恋をしたというのに。

私のクラスには問題児はいない。

みんな成績もいいし、素行も悪くない。

しかしある意味皆問題を抱えていた。

私はつかれた、

学校に帰って残務をこなして家に帰って寝よう。家族の夕食も準備しなくちゃ。


(5)


夕食を食べ終わって家族が風呂に入って最後に愛莉が入った。

時間的に空達はまだ起きている。

愛莉に空と翼を呼ぶように言った。

すると二人は降りて来た。

気配からして天音も様子を伺っているようだ。

愛莉から家庭訪問の話は聞いていた。

父親としてちゃんと話を聞いておく必要がありそうだ。


「翼、家庭訪問の話を聞いたんだけど本気なのかい?」


翼に聞くと翼は黙ってうなずいた。

僕に怯えている?

翼は見えないように空の手を取っていた。

空はその気持ちに応えるように翼の手を握り返している。


「翼は空の気持ちを確認したのか?」


この二人は心を感じ合えることは把握している。


「言葉では聞いてないけど……空の気持ちくらい分かる」


僕は空を見る。


「空、黙ってないで返事をしてやりなさい。翼の気持ち分かるんだろ?翼の言ってる意味理解したんだろ?ちゃんと答えてやるべきだ」


僕が言うと空は答えた。


「僕はまだ恋というものの正体が良く分かってない。でも翼と「共鳴」すると近頃とても優しい気持ちになれるんだ」


翼はその答えにホッとしたようだ。


「そうか……」


愛莉は隣で僕を見ている。母さんたちも見ている。

親としての行動をテストしているように。

2人の気持ちは分かった。

だからニコッと笑って言った。


「だったらいいんじゃないか?」


その回答にみんな驚いたようだ。

翼と空も驚いている。


「冬夜、自分の言ってる意味わかってるの?」


母さんが言う。

愛莉は何も言わない。


「わかってるよ。でもこの二人間違いなく恋をしてるよ」

「冬夜さんは二人の心を覗いたのですか?」


愛莉が聞くと頷いた。


「だからって許される行動じゃないでしょ」


母さんは反対のようだ。

母さんを説得するのが先かな?


「まだ10歳だ。これから先何があるか分からない。成人するまでまだ8年。大学卒業するまで12年あるんだ」


その間ずっと同じ気持ちでいるのかは分からない。


「もし、大学卒業しても同じ気持ちを持てるのならそのときまた考えたらいい。何も結婚することが幸せじゃないでしょ?」


好きな人と一緒にいられるならそれが一番だ。


「この家はどうするんだい?誰が片桐家を継ぐの!?」

「それは愛莉にも言えるんじゃないの?遠坂家は誰も継ぐ人がいない」

「パパは私達の仲を認めてくれるの?」


翼が聞いてきた。


「……節度を持ってね」

「パパ……ありがとう」


翼がこんなに感情を露にするのは初めてだ。よほどうれしいんだろう。空は戸惑っているみたいだけど。


「ちょっと待った!」


様子を見ていた天音が乱入してきた。


「私の気持ちはどうなるんだ!?私だって空が好きだ!」


驚いた……。

て、ことはひょっとして……。


「翼と天音のファーストキスの相手って……」

「空だよ!」

「……空」


それで空は二回したのか。


「……天音も頑張ればいいじゃないか?父さんは中立を保つよ」


天音も翼も喜んでる。

僕は複雑な気持ちだった。

娘の彼女が息子。

この気持ちは愛莉パパに聞いてもわからないだろうな。


「じゃ、2人とももう寝なさい。遅い時間だし」


愛莉が言うと3には部屋に戻っていった。

その後父さん達と話をして僕達も部屋に戻って休む事にする。


「ねえ?冬夜さん」

「どうした愛莉?」

「本当にいいの?孫の顔みれないかもしれませんよ?」

「とりあえず娘を誰かに奪われるって気持ちは味わわずにすんだよ」


僕が笑ってそう答えると愛莉も笑ってた。


「でも困りましたね。空がどっちを選ぶか分からないけど選ばれなかったほうが可哀そうです」


愛莉が言う。

少なくとも現段階では空の結論は出てるよ。


「愛莉、じゃあ天音の相手作ってあげようか?」


愛莉は不思議そうな顔をしていた。そして意味を理解すると顔赤くして抱きついた。


「さすがにもうしんどいです」

「そっか」


愛莉を撫でてやる。

こうして不思議な恋の物語は始まった。

決して平たんな道じゃないと思うけど。影ながら応援することに決めた。

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