第15話 なぜ盗賊はヒャッハーと叫びたがるんですか?

タンッ

タンッ

タンッ

タンッ


「・・・。」


タンッ

タンッ

タンッ


「その、ユウスケさん?今何をされたので??」

「ん?見たとおりだろ?」


揺れる御者席の上でまっすぐ立った俺はカチンっと持っていた拳銃をホルスターに収め、またその場のクッションに腰を下ろした。

今撃ったのは『何が銃から放たれれば不自然じゃないか?』と考えた末に創った魔法、【鉄塊】アイアンクラスターだ。効果はその名の通り鉄の塊を無限に生み出し、礫を弾丸のように放つも鍛え上げられた剣とするも自由自在。欠点としては俺からの魔力を常に受けていなければ数時間から数日で消滅してしまうことくらいだろうか。

それを俺の魔法に耐えられるように強化したこの拳銃の中で火の魔術を応用して爆発させ、元の世界のマグナム弾程度の威力で【鉄塊】を発射するのだ。

俺の細腕でそんなものを撃てば腕にダメージが行くだろうがそれも反動を【亜空間】アナザーに強制的に捨てている為心配することもない。もちろん過剰な発砲音も耳が痛いだけなので最小限に抑えてある。

まあ、やろうと思えばどんな魔法だろうと撃つことは出来るだろうけど。


が寄ってきたのを倒しただけだよ。」

「わ、私もよくは知りませんが銃というものは素晴らしい威力なのですなぁ・・・武器は専門ではありませんが王都の本店に着き次第品揃えを考えたい程です。」


普通の銃じゃこの破壊力は到底無理だろうというのは伏せたまま俺は愛想笑いを返しておく。

それにしてもこんなに分かりやすくていいものなのかなぁ・・・?


あれから【探査】エクスプレーションは寝ていようと常時使用したままにしてあるので熟練度は相当上がり、最初半径一キロで限界だったものが今は五十倍の範囲が俺の手のひらの上だ。そして俺たちに害意を持った魔物や獣、人間は赤いビーコンで表示するようにしてあるのでわかりやすい。パーティは青、その他は白といった具合だ。

そこに俺の銃撃が加わればマップ上に逃げ場は無くなるだろう、流石に疑念を抱かれかねないからやらないが例えどんな方向へ向けて撃とうと軌道を変えて最終的に弾丸はターゲットを射抜くことが出来る。


「いやぁ、こんなにも安心してお任せできる冒険者さんは初めてです。まさか馬車を止めずに障害を除けるとは。」

「あまり持ち上げないで下さいよ、俺たちはただのペーペーのパーティなんですから。」

「いやいやご謙遜を。」

「「ははははははははは」」


そして太陽が真上に来たあたりでそろそろお昼にしますかね?とユーノさんが言いかけたあたりで後ろから猛スピードで追い上げてくる無数の影が現れる。


「ヒャッハー!そこの馬車止まれぇー!!」


それはとてもわかりやすい盗賊だった。

この世界では馬の他に地竜という、大昔の地球にも存在したユタラプトルのように二脚で走る低ランクのドラゴンが重用されている。スピードは劣るが馬より高い持久性でよく懐くのが特徴である。

スピードなら負けないだろうが幌馬車を引いた状態では到底適うはずもなく、俺たちは周囲を囲まれて停止を余儀なくされた。


「ハッハー、女と金目のものは全て出せや!そうすりゃ命くらいは助かるかもなぁ!?」

「そ、そんなぁ・・・。」


そうして俺たちは馬車から降り、は既にロープで縛られていた。


「はあ、やっぱりな。」

「おい、勝手に喋ってんじゃねえぞ!おめぇから殺すか?!」

「やってみせろ。」


と【亜空間】で腰の銃を手の中に出現させるとすぐさまリーダー格の額を撃ち抜いた。

突然の銃声に楽観ムードから一気に臨戦態勢に入った盗賊たちだったが途端に動きを止めてしまう。

魔法でなにかした訳じゃないぞ?

もうひとつの銃をを俺がユーノさんの首に突きつけたからである。わかりやすく早朝から俺の隣にずっといたに向けて。

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