第8話 蜘蛛ですか?「アリアドネです。」
「アレは・・・アラクネかな?」
「荒くね?」
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【アラクネ】
パピヨンと同じく昆虫系の亜人種である。
大きな特徴として鼠径部辺りまでは人体、それより先は巨大な蜘蛛といった感じだ。
地球上の蜘蛛と同じく糸を匠に操る、毒液を生成する、八本の脚を高速移動や強力な武器として扱うなど柄物と持たずとも強力な戦闘力をその身に秘めた種族である。
ややあれば魔物として認識される危険もあるほど好戦的な連中でもある。
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「というかアレは・・・誘拐でもされてるんでしょうかね?」
「レッドキャップだしな、あんまり想像したくないがだいたい酷い目にあいそうだし・・・助けるか?」
「そうだね!女の子として見逃せないよ!」
「はああ!やあっ!!」
といの一番に駆け出したのはシルバーだった。
受け取ったばかりの長剣で素早く殿を務めていたレッドキャップを袈裟懸けに切り付けていく。
「GURAAAAAAAAAAA!?」
残った奴らは獲物のアラクネをその場に投げ出すとめいめいの武器を手に持つ・・・がそれじゃ遅い。
俺が手を振るとピシュっと軽い音がしたと同時に残党の首は綺麗に切断され、勢い余って背後の大木を数本刈り取ってしまったのだった。
やり過ぎたか・・・?
これは指先から水を出しただけだ。
ただし、発射口は絞りに絞って髪の毛ほど太さ。そこから一気に圧縮された水を撃ち出す、いわば水のレーザーである。これは現代世界にも存在するが大仰な装置にポンプ、大量の水があって初めて成り立つのでおおよそ携行武器としては成り立つわけが無い。
「何をしたのです悠介?貴方は剣など持っていなかったでしょう?」
「だから水を撃っただけですってば。水鉄砲の強力なやつだよ。それよりアラクネの子は・・・。」
「あっ無事みたいだよ?起きた起きた!」
かえでに体を起こされた彼女は目をぱちくりさせると俺たち三人を見定めはじめた。
深い青を湛えた両目、それが均整のとれた顔に通常サイズの双眸の他に眉毛に当たる場所にも数個複眼が並んでいる。
少し薄めの金髪をボリューミーなツインテールにまとめそれが褐色の肌と相まってエキゾチックな南国風の美女を彷彿とさせた。
最小限の鎧はところどころ壊れており、彼女の豊満な胸の魅力を抑えるには役者不足のようだ。
そしてはっと目を見開いたと思うと勢いよく頭を下げた。
「あ、もしかしてバランの冒険者さんですか?助けていただきありがとうございました!」
「それよりはいコレ、見えそうだから隠して。」
マントを外して渡す。
さすがにジロジロ見てしまっては目の毒だ。
「え?別に構いやしませんよ。もとから急所くらいにしか鎧着てませんしね。」
「アラクネの皆さんはみんなそうなのでしょうか・・・。」
「女神さまには言われたくないような気もするなぁ・・・。」
ギルドで支給された女神の装備はいわゆるビキニアーマーであった。
数種類あったにはあったのだが選んだのはよりによってソレ、自らの美しい肢体を隠したくないとのこと。
「ボクはアラクネのタランチュラ族アリアドネと言います。宜しければ皆様にお礼がしたいのですが・・・残念ながらボクのいた家はレッドキャップの奴らに夜襲を受けまして。」
と、かえでから水筒を受け取り乾きを潤した彼女は身の上話を続ける。
「確かに我々も夜行性であるんですが・・・体格的に死角から襲ってくる背の低い相手は苦手でして・・・おそらく父は既にこの世にはいないでしょう。」
モンスターとしてのゴブリンに近い性質のレッドキャップは数人で纏まって蹄のような足を使い、高速で連携した狩りを行うのが特徴だ。更には繁殖の為に他種族の集落を襲い、メスを拐っては苗床に使いその数を増やしていく。悪質な妖精とも言われる魔物である。
「すぐ向かえば女性は助け出せると思いますが・・・奴らは子さえ居なければ巣を変えながら移動するので特定は難しいんです・・・。
「なら俺の出番だな。」
「へ?」
直ぐに
「・・・よし、見つけた。じゃあ敵討ちといこうか。」
・・・ちなみに初めて人型の生物を殺した気分は大して応えなかった、が本音なので特に言う必要は無い。魔法で倒したからか、俺に自覚が無いからかは分からないが苦しむよりはマシだろう。嗚咽のひとつもなかったのには自分の事ながら少し引いた。
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