第2話 異世界召喚ですか?
夢がある訳でもなく、なんとなく選んだFラン大学に進んだ俺こと
女神さまのドジである。
その日、休講で暇になった俺たちは興味はあったがまだ行ったこともなかった都内近郊のテーマパークに遊びに来ていた。
アトラクションに乗り込む前に落としては危ないとスマホはカバンに入れて貴重品ロッカーにしまい込む、ついでにかえでのも入れれば一ヶ所で済むだろう。
テレビでも紹介されていた垂直落下式のフリーフォールの座席に並んだ2人はゆっくりだがどんどん上へ上へと昇っていき⋯さあ落ちるぞ!と咄嗟に目をつぶった。
あれ?
さあ来るぞ!!
ん?
いつまで経っても例の胃が浮くようなあの衝撃が襲ってこないのでゆっくり目を開くと⋯そこにあったのは湯気の立つ赤い透き通った紅茶を湛えたティーカップだった。
確かに遊園地には時に高速で回転するという人の乗るサイズのものはあったと思うがコレは普通の陶磁器だ。
「あれ?落ちないよ?故障でもしたかな?」
横を見ればまだ目を強く閉じたかえでの顔。
「どこだよここ⋯?俺たち確かにフリーフォールに乗ってたよな?」
立ち上がり周りを見渡せばそこはただただ真っ白な無限に拡がっているかのような空間だった。
そこにちょこんとテーブルセットが置いてあり、俺たちは絶叫マシンに乗った時の並びで席に着いていたのだった。
『ようこそおいでくださいました勇者様。』
そこに突然空間全体に響き渡るような、それでいて騒々しさは感じさせない声が聞こえ、俺たちの前に白いシースルーのドレスを纏った外国のモデルのような美しい女性が突然現れた。あ、色々と透けてるんですがいいんですか?痴女?
『わたくしは複数の異なる世界を担当する女神シルバーです。突然のことに戸惑われているかもしれませんが貴方を呼んだのはほかでもありま⋯あれ?』
今の今までこのシルバーと名乗る女神さまも目をつぶっていたのだがここでゆっくり目を開けて俺たちを見るとわかりやすく驚いた顔に変わった。
かえでも今ようやく開けたようだ。
『なぜ2人もいるんです??ええ確かにティーセットは自動で皆様の前に出るよう設定はしていましたが。』
「いや、俺たち遊園地でフリーフォールに乗ってたらいつの間にかここにいただけなんですけど。」
「あれ?お姉さんだーれ?」
「かえではちょっと待てな?」
「あ、エコーうるさいから切りますね?」
「普通に喋れるのかよ!」
「えー、こほん。改めて私は貴方がたの世界とわたくしの管轄する世界を担当する女神のシルバーと申します。そしてゴメンなさい!!」
と俺たちの前に座った女神は突然謝罪した。
「えと、貴方がたを召喚したのは私の完全なミスです⋯申し訳ありません。」
「はい?」
「本来であれば勇者として別の方をお呼びしてこちらの世界を救っていただく手筈だったのですが⋯言い難いのですが一度召喚を行うとむこう百年はやり直しが効かないんです。」
と、また頭をさげる女神。
「で、俺たちは日本に帰れないのか?」
「そんなことありません、ご希望であれば元の時間に戻せますが⋯元凶を取り除いて頂かないとこちらも直ぐにとはいきませんのです。」
「ふむ、いいんじゃない悠介。元の時間に戻してくれるなら。それに異世界召喚だよ!ラノベの鉄板!」
「またそれか!」
かえでは典型的なオタクである。俺はよくわからないがこういった空間で神に会うのはよくあるパターンだと熱弁している。尚、俺にそういったアングラ知識があるのは大概コイツのせいである。
「テンプレなんですか私!?まあ、そういった一部の事実がラノベ⋯?書籍となっているのが貴方がたの世界なんですよね、話が早いのは助かります⋯。コホン、脱線しましたね。
ウィトルースというのがこれから貴方がたを送り込む世界です。実はこの世界を想定し得なかったバグ、他所の世界からの侵略者が現れているんです。」
女神が言うには、バグはその世界では魔族と呼称されるものだが俺たち(というかほぼかえで)の知る魔族とは違う存在でウィトルースでも認識されていない生き物らしい。
「それにしたって俺たちはただの一般人だぞ?先祖代々おかしな力を持ってたりしないし。無いよな?」
「そんな力あったら世界が変わると思う。」
「⋯この世界にはジョブとスキルという概念があるんです。本来であれば数百年かかっても習得できない能力を貴方がたに授けます。」
そういった女神に手を取られた俺たちに暖かい光のようなものが伝わってくる。
「それは無二の力です。けして悪用なさらないように⋯。
紅茶は飲み終わりましたね?では、あなた方を件の地へと送り出します。向こうでも私との話を忘れずにお願いしますね?」
「うん、女神さまも元気でね!」
「チートとやらがショボかったら呼び出すからな!」
「それは勘弁してください⋯では参ります。」
「勇者たちに幸あらんことを⋯【テレポート】」
そう女神が呟くと俺たちは更なる光に包まれて⋯気がつくと草原のど真ん中に立っていた。
「⋯あれ?なんで私も二人と並んでるのです!?」
何故か女神と一緒に三人で。
「しまった、送り出すなら転送ではないですか!!しかも丁寧に二人に触れながらそんな魔術使えばそうなるに決まってます!!」
「⋯あの白いとこに戻れないんです?」
「あの場所からはどんな魔術を使おうとも一方通行なのです⋯神とは基本的に直接介入するのはタブーなので。」
「そら難儀なこったな⋯仕方ない、俺たちと世界を救いましょうぜ女神さま?」
「そうだね、頑張ろう駄女神さま!」
「誰がポンコツダメ美女神ですか!!あとシルバーです!」
「んなこと言ってねぇよ!!」
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