小さいぼくとただの悲鳴

あるた

ただの悲鳴

近頃になって、僕には何も無いんだなということをひしひしと感じている。


何かしたいことはないのか、だとか

こういうものって良いよね、だとか

そういう話が全く出来なくなりつつある。


高次的な欲が湧かない。

基本的な欲はもちろんある。食べたい飲みたい寝たい動きたい、その他もろもろ。

でもそれが何かに発展することがない。

飲み食いしたければそこらのコンビニで適当に買ってしまうし、寝たきゃ寝るし。

豊かさがない。

旅行だとかの、豊かさがない。

趣味にまで発展できるほどの色がない。

ただただ生きるための欲に近い。

欲ピラミッドの最下層。


なぜこうなのかなって言うことを考えると、僕は昔からそういう欲の対象の中でも高次的なものに触れることがほぼなかったことが浮かび上がる。

旅行もあまりしたことがないし、いいものを食べに行ったこともほぼない。

外食に行くくらいはたまーにあっても、それが何か変わったものというわけでもない。

具体的に言うなら、食べ物なら地方の特産物だとかの様な「美味しいもの」だ。でも僕が食べたいなと思うようなものは、ちょっとしたお菓子だとかの大衆的なものばかりでしかない。

わからないから。

何が美味しいとか、どこがいいとか。

わかはないし。興味もあまりわかないし。

嫌いなわけではないけど、熱を持った消費ができない。


豊かさがない。

だから、やりたいこともほとんど見つからない。

最近に至っては何かを始めるような時間すらなくなってきている。元からお金はないわけだし、結局進展しない。


子供の頃からの生い立ちがやはり影響しているように思えて仕方がない。

僕は、周りが買ってもらったり持っているようなものをほとんど持っていないような子供だった。

ゲーム機は買ってもらったことはあるが(かなり周りに遅れて)、ソフトはみんなが遊ぶようなものをひとつも持っていなかったし。周りが読んでいるような漫画も、ほとんど買ってもらったことはなかった。

でもその事に文句を言うつもりはあまりない。

僕も親が頑張っていることは知っていたから。

母子家庭だったし、そのうえ三人兄弟でもあったし。そのうちの一人はちょっとした問題も抱えていたから。

欲しい欲しいとは言いつつも、心の中では基本諦めていた。


もちろん、周りがやっていないようなもの(楽器だとかの習い事)もやっていない。

そのうえで周りの話にもついていけないのだから、特にこれといった趣味というようなものが育まれて来なかったのだろう。

その代わり学校には図書館があったので、僕は本を借りて読むことを趣味にしていたなと覚えている。

最近はほぼ読まなくなってきてしまったが。


中学生の頃、部活が始まった。

ここで大抵努力したりすることの味を理解するのだろうが、僕はちょっとしたトラブルで(深刻なものではない)周りからスタートが遅れてしまった。

出遅れというか出鼻をくじかれたというか、そういうことから部活をサボり始めることは想像にかたくないと思う。そこでサボってしまったことが今につながっているのだなぁと後悔したりもしているが、今となっては仕方の無い話である。


学業に関しては、僕は熱心に勉強しなくともいい成績を取ってしまうような生徒だった。

ここでも努力を怠ってしまったのだ。

あぐらのかき方だけが上手くなって、積み重ねるべきものを全く積み重ねずに生きてきてしまった。


どのことに関しても、ある程度の能力はあった。

突き詰めることをしなかった。

それだけの話である。


このことをなぜ今言うのか、というと。

僕は今大学生である。

学費を負担する意味でもバイトをしたりしているが、同様の理由で僕自身はそこまでお金を持っていない。

今から何かを始めるというには少々心もとない金額だけ手元にある。


だが周りは結構楽しんでいる様子だ。


その事に僕は焦りを感じる。

嫉妬ではない。そこまでの強い感情を抱くことも下手になってきている感じがするので。


大学生は、学生としての肩書きが崩れていく期間だ。

僕が今まで甘えてきた盾が崩れていく。

残るのは半端に大きくなった虚栄心、自尊心と、何も注がれず萎れて枯れた自分の人間性だけだということに気づいてしまった。


努力する根性がない。

何かを始める機会と余裕が無い。

言い訳する口先だけは達者である。


正しく今これを書いている時にも、心のどこかに優越のようなものを大事に置いている自分がいる。


その事を考えると、気持ちが悪くなってくる。


ふとした時にやりたいことがない。

将来やってみたいこともない。

その癖してどこか自信だけはありげで、危機感には鈍くあり続けている。


それとは別に。

僕がやりたいと思う数少ないこととしては、人とおしゃべりすることがあるのだが。

大学生になって、その頻度も下がりつつある。

お金が無いので遊べないし、実家なのでバカ話の通話もあまりできないし。

いよいよ本当にやりたいようなことまで消えつつある。追い詰められたような気分である。


家でぬぼーーんとしては、ちょっとコンビニに行って買った菓子をボリボリとぼんやりとかじる。

その癖して、自分のことをどこか特別かのように考えている節がある。


根本的にダメな人間。

最近下した結論。


やれることはいくらでもあるだろうに、探すことすら出来ず、やらずに。

やるべきことを熱心にこなすわけでもなく。

惰性と義務感でぼんやりと生きている。


僕は僕が嫌いだなと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

小さいぼくとただの悲鳴 あるた @crowdedbox

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る