アスマとベル
鈴女亜生《スズメアオ》
『竜王祭』
序
今から三百年ほど前のことである。アスターという男を王に立て、一つの国が誕生した。後に大陸有数の大国となるエアリエル王国である。
建国当時は領土が現在の王都ほどしかない小さな国だったが、国王であるアスターの気風もあり、絶対王政とは思えない自由な国家として有名になると、その領土は瞬く間に拡大していった。
その理由となるのが、当時はまだ強い迫害を受けていた魔術師や亜人である。迫害から逃れる形で魔術師や亜人がエアリエル王国を訪れると、アスターはその全てを積極的に受け入れ、国民として認めたのだ。
それにより、エアリエル王国は人口を増やすと同時に、魔術師の齎した魔術的知識を活用することで、国家を繁栄させることに成功した。
その時にできた基盤は三百年経っても崩れることがなく、現在の大国エアリエル王国に繋がっている。
そのエアリエル王国で脈々と行われている祭りがある。アスターが王となり、エアリエル王国が誕生するより以前から、その地で続けられていた祭りだ。
厳しい冬を無事に乗り越えたことを祝うと同時に、これからの豊穣を祈願する春の祭りと、作物を無事に収穫できたことを祝うと同時に、これから訪れる冬を無事に乗り越えられるように祈願する秋の祭りである。
元々は厳しい冬を無事に乗り越えたことを祝う祭りと、これからの豊穣を祈願する祭りが春に、作物を無事に収穫できたことを祝う祭りと、これから訪れる冬を無事に乗り越えられるように祈願する祭りが秋に、それぞれ行われていたのだが、その日にちの近さから同時に行われるようになり、二つの祭りに変化したものが春の祭りと秋の祭りである。
それら二つの祭りはエアリエル王国の建国後も忘れられることなく続けられ、今から十七年前、一人の赤子の誕生時の出来事から、春の祭りは竜王祭、秋の祭りは魔竜祭と名称が変更された。
その後、エアリエル王国に生まれた二人の王子の誕生日と、祭りを開催する時期が近かったこともあって、竜王祭は第一王子、魔竜祭は第二王子の生誕祭も兼ねるようになり、それまで二日間行われていた祭りが三日間行われるようになっていた。
現在では六月頃に行われる竜王祭と十月頃に行われる魔竜祭が王都の一つの名物となり、その二つの時期にだけ王都を訪れる観光客もいるくらいになっていた。
そして、今年も竜王祭の開催が三日後に迫っている。
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