第10話 嘘吐きは女神審問の始まり
「……んっ、ここは……」
リッキーが目を覚ますとそこは彼女の見知らぬ家の中であり、彼女はベッドに寝かされていた。
外は日が落ち、空には月が浮かんでいる。
「おっ、やっと起きたか」
ベッドから身体を起こしたリッキーに話しかけたのは銀太郎だった。
銀太郎はソファに腰掛けており、彼の膝の上ではミィルとリィルがすやすやと寝息を立てていた。
「ここは、あなたの家……なのでありますか?」
「そうだ。気を失ったお前を引きずって連れてきた。三人も抱えて街まで戻るのは骨が折れたぞ」
「ご、ご迷惑をおかけしましたであります。ところで、この服、とても小さい気がするのですが……」
リッキーが着ているのは子供用サイズのパジャマで、身体が成熟している彼女にはやや窮屈なものだった。
「それはミィルがこの家に置いているパジャマだ。サイズが合わないのは我慢してくれ」
「ミィルとリィルが君を着替えさせてくれている間、銀太郎は家から追い出していたから安心しなさい」
突如として銀太郎とリッキーの会話にソラリスが割り込んで来た。
「鏡に人が!?」
「驚かせてごめんなさいね。私はソラリス。こっちにいる勇者、近衛銀太郎を召喚した女神……というか保護者みたいな者よ」
「は、はあ……女神様……勇者……えっ? ええええええっ!?」
リッキーは銀太郎を見て目を丸くする。
「すまん。まだ名乗っていなかったな」
「あなたがあの有名な近衛銀太郎殿だったとは……自らの世間知らずを恥ずかしく思うであります」
「あまり恐縮されるのは好きじゃないんだけどな」
「しかし、近衛銀太郎殿と言えば先日、ドラゴンスレイヤーとして国王から勲章をいただくような人物ではありませんか!」
「……その話題は止めてくれ、マジで」
「あわわわわ。そのような実力のある冒険者の方を助けようなどと差し出がましいことを……」
「(リッキーからもそうやって思われてしまうのか。……悲しいな)」
「はいはいそこまで。伝説の勇者様からのサインは後にしておきなさい。それより、私は君に尋ねたいことがあるの。いいかしら、リークレイスさん?」
「な、なんでありましょう女神様!」
「――君のこのステータス。一体何がどうして『こんなこと』になっちゃっているのかしら?」
ソラリスの右手に置かれた水晶玉が輝きを放つ。
それは例のステータスを計測する神秘の水晶玉だった。
ソラリスは水晶玉の表面に浮かび上がったステータスを鏡に近づける。
「君のステータスはバグを疑うほどに値がおかしい。普通は君ほどの年齢の少女ならば平均値は10前後よ。だけど、これを見てみなさい」
「はあ? 女神様、いきなりステータスとか言い出してどうした――ほあああっ!?」
銀太郎が水晶玉に表示されたリッキーのステータスを見て驚愕の声を上げる。
「筋力3125!? 平均の三百倍以上もあるじゃないか!」
「異常その一、高すぎる筋力ステータス。目安を挙げるなら、魔王軍と最前線で戦っている冒険者の筋力がせいぜい50~70。壮大なパワーインフレが起きているわ」
「それはもうリッキーが魔王を倒せばいいのでは……ん?」
「気づいたわね銀太郎、筋力以上におかしいこの子のステータスに。普通はあり得ないのよ筋力以外のステータスがたった1しかないなんて。この世界のステータスというものは成長と共に自然と上がっていくのに、彼女は第二次成長期を終えても体力ステータスだけが全く伸びていない。筋力は頭のおかしいくらいに高いくせに、その他は意図されたように低い状態で保たれている。ステータスは高すぎるよりも低すぎる方が異常なのよ。……ずばり聞くけど、ロークレイスさん、君はなんらかの方法でステータスを操作しているわね。もしかして、君は悪魔と取引をしているのではないかしら?」
「そ、それは……」
ソラリスの問いにリッキーは顔を伏せて言葉を詰まらせる。
「……はい。私は魔王軍に所属する間者の一人であります」
だが、少女騎士は意を決した表情で自らの正体を告白した。
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