ジョン・オープンショウ?
「五個のオレンジの種」の事件を忘れたのか? あの騒ぎの依頼人だよ。待てよ、ホームズ、またとぼけているんじゃないのか。あの青年のことを君が忘れるとは思えないんだがね。
【ネタばらしコラム】
注 以下、「五個のオレンジの種」と「ボヘミアの醜聞」についてのネタばらしがあります。
珍しくホームズが依頼人の命を救えなかった事件の一つ。その点を抜きにしてもシリーズ屈指の異色作ではないでしょうか。K・K・Kという組織をドイルなりに料理してみました、という仕上がり。ホームズの明晰な推理と活躍が前に出てこない印象の作品。
作中でジョン・オープンショウとホームズの間にこんなやり取りがあります。『シャーロック・ホームズの冒険』(コナン・ドイル著/阿部知二訳/創元推理文庫)から引用してみましょう。
「失敗されたことがないとききました」
「いや、四回失敗していますよ――相手が男のときに三回、女のときに一回」(p155)
女のときに一回とは、「ボヘミアの醜聞」で間違いないでしょう。そして、「五個のオレンジの種」でも失敗して、依頼人は死にます。そのせいか今回のホームズは脅迫のメッセージである五個のオレンジの種を送ることで復讐しようとします。
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