第1話 「試験」

「落ち着け。いつも通り自分の実力を出せれば絶対に大丈夫なはずだ」





 大きく深呼吸して自分の番を待つ。





「18番ソラト」





 仕切りから資料を持った試験官らしき男が顔をのぞかせてソラトを呼ぶ。





「はい」





 と返事してその仕切りのあるほうへ歩いていく。そこは大きな広場で黒い布で何個かに仕切られている。その布には特殊な加工がされていて布の向こうは絶対に見えないようになっている。





 おそらく何人かで一斉に受ける実技試験になっているのだろう。





 試験官が資料を読み進めていく中で「無能力か……」と小さくつぶやく。





 資料を仕切りの端っこのほうにある机の上に置きその隣にきれいに並べてある全て木でできた様々な武器を眺めながら、





「この仕切りは近接武器主体で置かれているのか」





 仕切りによっては何もない場所や魔法でできた道具が置いてあるさまざまな戦闘方法が試される。試験官もそこに置いてあるものしか使ってはいけないルールになっている。もちろん試験官もソラトも武器を絶対に使わないといけないということは無い。むしろ能力をもっている人たちは能力で戦うことが多いため武器を使はない受験者も多い。





 試験官はいたって普通の木刀を手に取り、、





「じゃ、かかってこい。いつでもいい。俺はお前が来るまで何もしないから、もし一発でも攻撃を当てることができたら俺の権力で合格にしてやる」





 ソラトも試験官が手に取った木刀と同じものを手に取り片手で剣を持ち構える。





「それでいいのか?もっといいものもあるだろう」


「あぁ」





 こいつ余裕こきやがって。





 目をつむりながら一度大きく深呼吸して、





「っは」





 目を開けた瞬間にソラトは試験官の間合いに入り、試験官の剣を吹き飛ばす。





 そのまま後ろに回り込んで試験官に向かって剣を振り下ろすが、、





「っと」





 試験官はそれを片手で受け止めてそのまま木刀をへし折る。





「んなばかな」





 っくそそんな簡単に折れるものなのか。しかも俺でもわかるこの木刀にはかなり高度な魔法で硬度が上がっているのに。





「やべっ力入れすぎたか」





 にしてももとからそんなに固くないものに硬度を上げる魔法を使ってもあんまり硬度が上がらないということか。これは覚えておいて損はないことだな。ま俺にとってはそうだが早々折れるものじゃぁないんだよな多分。





 折られた瞬間にカウンターを警戒してソラトは試験官から距離を取っていた。





 くっそ。





 ソラトは最初に吹き飛ばした試験官の木刀に一瞬視線をやり、それと同時に試験官に折られた木刀を試験官に向かって投げつける。





 それに気を取られている間にその木刀を拾いすぐに構えるが、、





 武器が並べられているところは俺の後ろか。相手は木刀を持っていないしやってみるか。





 ソラトは木刀を思いっきり地面に突き刺してソラト木刀を折られた時と似たような状況を作り出して自分も木刀を折ろうと試みてみる。





 すると、バキという鈍い音がし木刀が折れる。





「っぁ以外に柔いんだな木刀って……なぁ試験官さん」


「ぶっははははは。お前面白いな。それに俺の名前はアギトだ。おそらくそんなに柔くはないと思うぜその木刀かなり高度な魔法で硬度が上げられているからな。よし決めたぞ」





「何をだよ」


「それはこっちの話だ。さてどうする?武器を選びなおしてもう一回やるか?それとも素手でやるか?」


「素手でだ」





 後ろにある武器は基本的に折られることなんて考えられていない。同じ武器は試験官用と受験者用の2つしかない。斧など用意してあるがソラトは剣以外の武器をそううまく使えるわけではない。とはいってもそこらの一般人よりかはかなりまともに使いこなすが剣に特化していて自分の中では使えたものだと思っていない。





「わかった」





 アギトはその場でソラトに向かって拳をふるってみる。ソラトとアギトは約7,8メートルほど離れているが、そのアギトが振るった拳の衝撃はしっかりとソラトに届いていた。





「当たったらやばいな。これは」





 ソラトは武術もなかなかに体得している。剣に比べれば劣っている部分も確かにあるが武術あってこその剣技だ。武術の身体的動きを応用して剣を振っていることも多いからだ。





 その後殴り合いになろうとしたが、、、





「これは違うな」





 といきなりアギトが言い出す。





「どういうことだよ」


「まぁぶっちゃけお前みたいに武術の動きを応用して剣の技を出している奴は少ない。そういう技術も大事っちゃぁ大事だが、が素手で魔獣に勝てるかよ。これはそういう試験だ」


「なるほど」





 たしかに素手でも勝てるやつは勝てる。あるいは能力でだな。それとこれは魔獣との戦闘で俺たちが使えるかを見るための試験だったんだな。





「ってことで少し待ってろ今度は折れないのを持ってきてやるぜ」


「あぁ」





 木刀にもっと高度な硬度魔法をかけたものか?まぁ別になんでもいいが、あれ以上強い魔法で硬度を上げたら木刀でも石が切れそうだな。そこまで行くともう真剣と同じだな。





 10分ほど待ったところで、、





「おぅ、またせたな」





 アギトの手には2つの真剣が抱えられている。





「真剣か」


「あぁしかもさっき以上の魔法がかけられているから絶対に折れることはない。しかもそこそこ言い剣だ」


「これで存分にやれるな」


「そうだな」





 真剣を渡されかまえるソラト。





「やっぱこっちがしっくりくるな」


「それはよかった。じゃぁやるか」





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