第18話

「いやあ、こんなことになってすまなかったな~」


「いえ、百人を超える騎士に奇襲されたのです。

 対応しきれなくてもしかたがありません」


「そう言ってくれたら少しは気分が楽になるよ。

 だが面目を潰されたのは間違いない。

 ここまで恥をかかされた以上、タダではすまさん。

 王都に入る時には修行中の旅の騎士だと偽ったり、出稼ぎの騎士家部屋住みだと偽ったりしたようだが、もう王都から逃がさん。

 草の根を分けてでも探し出して叩き斬ってやる」


 王都警備隊のリーアス騎士隊長が本気で怒っています。

 結構広いとはいっても、城壁に囲まれた王都です。

 これだけの事件を起こしては、逃げ隠れするのは不可能です。

 一人二人ならともかく、百人を超える人数です。

 必ず見つけ出されることでしょう。

 問題は発見される前に私を殺そうとすることですが。


「そこで頼みがあるのだが、私たちをこの屋敷に駐屯させて欲しいのだ」


 やはりそう来ましたね。

 リーアス騎士隊長も私が狙われていると気がついているのです。

 ですがこの屋敷は女所帯です。

 男性を泊めることなどできません。

 本当は魔法巻物と魔法書の秘密を守るためですが、そんな事を口にする事はできません。


「残念ですが、ここは女所帯です。

 いくら騎士様とはいえ、男性を泊めるわけにはいきません。

 どうかご理解ください」


「そうか、それはそうだな。

 ルシア嬢には事情がありそうだが、公爵令嬢だとすれば、男を同じ屋敷に泊めるわけにはいかんよな」


「分かっていただけてよかったです」


 これでウィリアム様たちが戻られて、ここに泊まられると、リーアス騎士隊長が怒られるかもしれませんが、その時はその時ですね。

 今をしのぐだけで精一杯です。


「では我々は向かいと両隣の屋敷に分散駐屯することにする。

 何かあったら大声で呼んでくれ。

 必ず誰かが見張りに立っているから」


「ありがとうございます。

 これで安心して暮らせます」


 私たちは屋敷を後にするリーアス騎士隊長たちを玄関まで見送りました。

 元は公爵令嬢とはいえ、この国には単なる冒険者として届けているのです。

 騎士隊長を見送らないという選択はありえません。

 それが失敗だったとは言いたくありませんが、油断であったのは確かです。

 敵はこの国の王都警備隊が、面目をかけて私の警備をする事を読んでいたのです。

 同時に、リーアス騎士隊長たちは、敵が暗殺を仕掛けると思い込んでいました。

 正面から攻撃を仕掛けてくるとは考えていなかったのです。

 

「ギャァァァァアァアァアア!」


 私たちの前を歩いていたリーアス騎士隊長の配下が、全身に矢を突き立てられてしまい、絶叫をあげています。

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