第3話
私は意気揚々と王都に向かいました。
あの方に迷惑をかけないように、領地に引きこもっていましたが、もうそんな日々とはお別れです。
晴れてあの方と一緒になれると思うと、旅の途中で襲ってきた愚かな山賊もの優しくなれました。
普通なら四肢を引き千切って殺すところを、骨を砕くこともなく生け捕りにしてあげたのですから、どれほど優しい気分だったか分かっていただけると思います。
お陰で山賊の賞金だけではなく、山賊を犯罪者奴隷として売ったお金まで手に入りましたが、少しでも早く王都に行ってあの人に会いたかったので、手続きがすむまで待てなくて、後日に冒険者カードに入金してもらう事にしました。
「アンゲリキお嬢様、よくお戻りくださいました。
家臣一同お待ちしておりました」
「ありがとう。
よく残っていてくれたわね。
ヨアンニスが勝手に召し放ちしているのではないかと心配していたのよ」
「一時はそういう話もあったのですが、ニコラオス様の命令でなくなりました。
ヨアンニスは長男ですが、当主になられていたわけではありませんから。
ヨアンニス様の別邸とはいえ、持ち主はご当主のニコラオス様ですから、家臣も進退もニコラオス様がお決めになる事でございます」
やはりあのバカはろくでもない事をする。
自分の失敗のせいなのに、私が女当主になるのが面白くないのでしょう。
家臣を全員召し放ちにして、私に嫌がらせするつもりだったようです。
これから私の当主就任に伴う披露宴や舞踏会が開かれます。
落ち着いたら結婚式と結婚披露宴も行わなければいけません。
ですが、それも信頼できる家臣がいて初めてできることです。
家臣が残っていなければ何もできないのです。
家臣など新規で召し抱えればいいという者もいるでしょう。
普段ならそれも不可能ではないでしょう。
ですが今は無理なのです。
今のステファノプロス侯爵家は、謀叛を画策して処分された直後です。
王家がさらなる処分を考えている可能性すらあるのです。
家臣も争いのゴタゴタニ巻き込まれて、殺される可能性すらあるのです。
能力のある者なら、そんな家に仕える必要などないのです。
単価の高い臨時雇いの仕事がいくらでもあるのです。
「そうね、その通りで。
でも多少は混乱があったのでしょ。
しかも王家に謀叛を起こして処分されているのは皆が知っている。
やめた者は何人いるの?
残っている者だけで屋敷は維持できるの?
いえ、これから忙しくなるわ。
舞踏会や披露宴に対応できるの?」
「はい、日々の事は大丈夫でございます。
ですが一時雇の者たちは全員辞めてしまいました。
残っているのは譜代の者たちばかりでございます。
三分の一しか残っていないことになりますが、みな有能な者たちでございます。
アンゲリキお嬢様次第で、いかようにもなると思います」
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