最高に可愛い人外嫁の創り方
阿賀沢 隼尾
最高に可愛い人外嫁の創り方
「良い時代になったものだ」
アキノブは目の前の培養液を眺めながら呟く。
彼の瞳には無数の人の肉体が——体が映っていた。
彼女らの肉体はどれも、異型のものばかりであった。
背中に純白の羽が生えた色白の鳥人少女。
猫耳とおしりに細長くてふわふわなしっぽを生やした華奢な体の獣人少女
細く尖った耳に絹のような美麗な金髪の髪をしたエルフ少女。
脚が魚の尻尾に変化している超絶美形の人魚少女。
数え挙げれば切りがないが、そのような普通の人間の体とは異なる……ファンタジーな体を持つ少女達。
彼女達はアキノブが遺伝子操作で作り上げた傑作集だ。
「やはり、人外の美少女は良いものだな」
自然と口角が上がる。
科学技術が上がり、誘拐した少女達の記憶を
その後は、
そうすれば、勝手に
今の時代、セックスなど時代錯誤にも程があるのだ。
セックスは動物がやるものだ。猿がやるものだ。知能の高い人間がそこらの類人猿と肩を並べてセックスするなど、人としての威厳がガタ落ちではないか。
もちろん、同性結婚だからという理由もあるだろうが、本能に従って行動するなど、理知的な人間のすることでは無いのだ。
そんな下等な行為は頭の足りない、性欲に自惚れた若者だけに任しておけばいい。
我々は本能に溺れる必要は無い。
高尚な生物なのだから。
寿命延長、身体美、認知機能、身体能力、目の色や髪の色等の外見情報——。
全ては人間の思い通りのままなのだ。
『完全なる人間』に人類は着実に近づきつつある。
この世界は『超人』で溢れ返っている。
先天的な頭の良さや身体能力の高さなど、今の時代誰も悩む事は無い。
あとは、環境だけ。
その環境にしたって、『タブラ・ラサシステム』によって完全制御されたものばかりだ。
——多様性の受容。
人類はそれを目指していたはずなのに、いつの間にかそのスローガンは化石と化してしまったらしい。
結局の所、人間にとっての幸福は全人類の社会的、生物的な生存と能力の向上にあるのだ。
それが前提として初めて個人の意思が尊重される。
そんな社会にアキノブは失望していた。
だから、今こうして自分の作品を眺めているのだ。
正直、非人道的なことをしているという自覚はあるが、そんなものより大事な事は幾らでもある。
自分だけの最高の二次元嫁みたいな三次元嫁を創る。
それがアキノブの唯一の夢だ。
こうして呆然と眺めているだけでも幸せなのだが、どうせなら鑑賞するだけでは無く、身の回りのお世話をしてくれる美少女を創りたい。
しかし、どうしたものか。
彼は無類の人外マニアではある故に、嫁をどれにしようか決めかねていた。
どうせなら全員創ろうか。
しかし、その場合相当なコストがかかってしまう。
待てよ————。
彼は更に思考を巡らせる。
それも良いかもしれない。
しかし、それはオタク精神に反する行為なのではないか?
理想嫁と共に暮らす。
確かに、一見これはオタクにとって最高のように思えるが、自分は彼女達を眺めること自体が幸せなのであって、二人で暮らしたら息苦しくなるのではないだろうか。
ホログラム越しでプレイするギャルゲーは、『観測者』としてキャラ、ストーリー、世界観に参加するから良いのではないか。
主人公の視点で観るから感情移入が可能、それを自分にしてしまったら、それは『俺の物語』になってしまう。全く別の作品になってしまうでは無かろうか。
そうだ。
このまま自分だけのフィギュアとして彼女たちを愛撫することこそが幸せなのだ。
それぞ至福の一時。
生身の女の子にしかない輝きが目の前にあるではないか。
艶やかな肌。
培養液内で浮遊する滑らかな髪。
細身で完璧な裸体。
彼女たちを鑑賞し続けることこそが自分自身の幸せなのだ。
なぜ、今まで気づかなかったのだろうか。
彼女達の体を永遠に観察し続けることこそ、自分にとって最高の幸せなのだと。
培養液の中に閉じ込めることで、自分だけの嫁を独り占めにできるというこの独占欲。
その快感に溺れる自分に自分は酔っているのだと。
「さてと……」
アキノブは次の最高の三次元嫁を創造する為に、部屋を出ていった。
最高に可愛い人外嫁の創り方 阿賀沢 隼尾 @okhamu
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