第8話 一番好きな花。

 桜が散ってしまいましたなぁ。

 バイクを運転しながら眺める桜、楽しみだったのに、今年はコロナの影響か心から桜を楽しめなかった。


 桜も好きなのだが、一番好きな花は桜ではない。

 菜の花が一番好きなんだ。


 菜の花を好きになったのは、18歳の時にとある菜の花畑を見たのがきっかけだ。


 俺は17歳から18歳までの一年間、カナダのアルバータ州で生活していた。

 父の仕事で、海外に行くことになりついていくことにしたのだ。

 高三で受験を控えていたが、海外で生活するなんてそうそう出来ることではない。

 受験は毎年出来るしね。

 俺は高校を留年する覚悟でカナダにいくことを決めた。


 現地の高校に入学し、下手くそな英語を駆使し、必死で勉強した。

 苦しかったけど楽しい思い出だ。


 7月が終わり新年度を迎える前に、家族で観光地であるバンフに行くことになった。

 父の車で、エドモントンからバンフまではかなりの距離がある。


 八時間は車に乗ってたかな。


 日本から持ってきたCDも全部聞いて、俺はボケーっと外を眺める。


 そこにあったのだ。

 地平線まで続くかと思えるほどの菜の花畑が。


 黄色の絨毯。

 例えるならこんな感じだ。


 風が吹けば、菜の花は一斉に揺れ、幻想的な雰囲気を醸し出す。


 あまりの美しさに俺は言葉を失った。


 山村暮鳥の詩、風景 純銀もざいくに菜の花を歌ったものがある。


 いちめんのなのはな


 まさにその通りだった。


 一本の花では地味な花だろう。

 だがあれだけスケールの大きい美しさを見たのは初めてだった。


 バンフ、ジャスパーの壮大な自然も美しいが、カナダで見た一番の思い出は菜の花だった。


 それ以来、俺は菜の花が一番好きになった。

 

 皆さんはどんな花が好きですか?

 

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