夏休み、高校3年受験生の僕、小学生の頃やっていたゲームをして、息抜きをする
みずみゆう
第1話
時々無性に昔のゲームをしたくなる事がある。
時々といっても、ある程度時期は決まっており、大抵は夏休みや冬休み、春休みなどのたっぷりと時間がとれる長期休みの時だろうか。
昔と言っても、僕は高校3年生なので、それ程昔という訳でも無いのだが、小学校の頃にやっていたゲームを我が家の二階にある物置から引っ張り出してくる。ゲーム機本体やゲームカセットは、うっすらホコリが積もっており、それをハンカチで軽く払うと、一階の僕の部屋へと持っていく。
僕は電車で30分ほどかけて、通学しているので、電車に乗っている時間は、スマホゲームをしたりして時間を潰している。眠気を感じながらするゲームも楽しい。僕の高校では、スマホを使用する事が禁止されているので、学校がある日にゲームをする時間は、電車に乗っている時ぐらいだ。家に帰っても部活の後で、疲れてやる気が出ないし。なので、普段ゲームをしようと思った時に、わざわざゲーム機を持ってきて、電源やコンセントをつけるのすら、めんどくさくなってしまった。それなら、四六時中使っているスマホの方が手間が無くていいし。
話を戻す。今は夏休み。僕は高校3年生、つまり受験生だ。教師や親、塾の先生から勉強しろ勉強しろと言われて、勿論毎日毎日勉強はしているのだが、今週は、学校の補習、塾に加えて、模試も続いたので、正直精神的にも、肉体的にもかなり疲れてしまった。親に言われて、今まで電車で頑張って来たスマホゲームもやめた。顔に疲れが現れていたのか、塾の教師に「一日ぐらい休んだからどうだ」と言われた。僕の場合、「一日でも休んだらその分他と差がつく、後から絶対後悔する」と思ったのだが、確かに息抜きは必要かな、と思い、午前中は勉強、午後からは少し休もうと思った。
だが、ここで問題なのは、一体何をして休むのか?だった。
スマホゲームの場合、毎日ログインするぞと意気込んでいたゲームをやめてしまったので、今更やるのもなぁと萎えてしまった。だからヤダ。
休む、つまり息抜きか、ならスポーツとか?運動大嫌いな僕は、部活強制入部の我が高校で、楽そうな文芸部に入部したのだが、嫌な先輩がいて嫌になったので退部、その後何となくで、卓球部に入部。何だかんだ、まあまあ楽しい三年間を過ごせた。……つまり、近所の体育館でも卓球でもするか?いや、でもわざわざあそこまで足を運ぶのも、やる相手を探すのも誘うのも面倒臭い。そして、これは結構大きい事なんだけど、家から出たくない!これ大事。となると、ベッドに寝転んで、スマホでネットをひたすら見まくるか?何か違う気がする。そうだ!ビデオゲームやろう!ただ、最新のゲーム機を僕は持っていない。僕は一人っ子で両親もあまりゲームをやる方でも無いし、今はスマホで事足りるし……
そうだ!なら、小学生の頃やってたゲームで遊ぼう!去年は確かやらなかったよな……確か、二階の物置にあったよな……
また長くなってしまったけど、以上が、僕が昔のゲームをやろうと思ったきっかけだ。
僕の自室には、リビング程の大きさでは無いが、テレビがある。高2まではよく利用していたが、最近はあまり使っていない。ゲーム機をテレビの横に置いて、コンセントを繋ぐ。
僕には『ゲームケース』がある。普通の収納ケースなのだが、中にはゲームが沢山入っている。どれも昔(僕が小学生の時に遊んでいたゲーム。父親が買ってきたゲームが多め。大人向けゲームもあった)のゲームばかりだが、このゲームケースの中からゲームを取り出して、開き、中の説明書やカセットを見るのが楽しかった。説明書を見てるとワクワクしてくる。
僕は、うわぁ懐かしいなぁ。小学生の頃よく遊んだなぁこのゲーム、と中学生の時と変わらない感想を抱く。
今日はやけに暑いなぁと思い、もう何年も使っている団扇を机の中(小学生から使っている机なので、昔遊んだカードゲームやらシールやらでぐちゃぐちゃで汚い)から取り出す。暑い暑いと左手で扇ぎながら、暑さを凌ぎつつ、右手でゲーム選択を再開する。ゲームのパッケージを見るたびに、懐かしい思い出しか出てこない。あの頃は良かった、何も知らなかった、純粋で楽しかったというお決まりの感情が出てくるが、それは仕方がない事だ。みんなそうなんじゃないかな。違うのかな?
僕は特にやっていた二つのゲームを取り出す。どちらもお気に入りのゲームだ。夜遅くまでテレビと向かってゲームをしていたのを思い出す。2年前の高校一年の夏休みに、この二つのゲームをやったが、小学生の頃泣くほど難しかったステージが、簡単にクリア出来てしまった事を思い出した。そこで感じたのは、あれほど難くて悩んだステージが簡単にクリア出来てしまう、成長感と哀感だった。自身が高校生になってしまったんだと改めて認識した瞬間だった。良くも悪くも成長したんだなぁと。
僕は二つの中から一つのゲームを選んだ。小学校低学年の時に全くクリア出来なかったステージがあり、泣きながら何度も挑戦したのを覚えている。父親に頼ろうとも思ったが、当時の僕は、それをしたら負けと思い、助けは求めなかった。結局、クリア出来たのは小学校高学年の時だった気がする。中学生、高校生になってからも、何度もゲームをクリアしたのだが、その度に別の発見があったり、改めてやる事で、別の感情が生まれたりした。
今回は一年ぶりで、尚且つ受験生という複雑な立場だが、どうだろうか?
うわあ、タイトル画面懐かしいなぁ!この、セーブ、ロード、設定の文字!あと放置すると流れるオープニングムービー!曲!全てが懐かしい!ああ、涙が出てきそう。色々な感情が込み上げてくるが、僕は耐える。取り出す最初の画面だ。ああっ!この選択する時の効果音も懐かし過ぎる!ロード、ロードっと……ああっ!この決定する時の効果音も!懐かしいなぁ!
クリアデータがある。最終セーブは勿論、二年前の夏休み最終日だった。一年生の時は宿題が多くて、この日、夜中まで寝ずに宿題をやり続けたのを覚えている。始業式の校長先生の話の時に爆睡していたっけ。後からクラスメイトに笑われていたのを覚えている。
さて、最初からストーリーをやる余裕は僕には無いので、とりあえず、クリアデータをロードする事にした。
うん、最初の長いロード時間、この画面も懐かしいなぁ。ロード画面には、ゲームに関するヒントが表示されている。おお、そういえばこんな機能あったなぁ。ヒントの漢字が難しくて読めなくて、これなんて読むの?と両親を呼びに行っている間に、ロード画面が終了したりしてたなぁ。
おお、これ最終ステージだ。ラスボスに向けて仲間が集まっているシーン。ここでセーブポイントがあるんだよな。このBGMも懐かしいなぁ。小さい頃は、ラストステージの音楽が怖かったのを覚えているが、今聴くと本当にラストステージらしいかっこいいBGMだ。スマホで誰が作曲したのかも、簡単に調べれるし。話は変わるが、小学生の頃の我が家にはネット環境が無かったので、攻略サイト等で調べる事が出来なかった。今の僕なら、スマホゲームでわからない事があったりしたら、ネットですぐに調べてしまうだろう。無駄な時間を省くため、半ば作業のようになっていたかもしれない。ログインボーナスとか正にそうだ。昔はもっと純粋にゲームを楽しめていた気がする。
主人公もゲームクリアした事もあり、かなり強くなっている。ラスボスを倒せば、一応クリアだが、セーブしてロードすると、ラスボス前に戻るようになっている。主人公の声、メニュー画面も懐かしい!さっきから懐かしいしか言ってないけど、本当に懐かしいのだから仕方ない。
クリアしたステージをうろちょろするだけで、あれも懐かしい!これも懐かしい!となる。ここも小学生の時苦労したなぁとか、このキャラ好きだったなぁとか。
さっきまでムシムシと暑くるしかった部屋も、暑さなど忘れたかのように、清々しい気分だった。エアコンが無いから興奮すると、汗はめっちゃ出てくるけど。
たが、暑さを忘れるほど熱中できるゲームなのだ。今だけ、今この瞬間だけ、受験?志望校?模試?国語数学生物日本史…….?なんだそりゃってぐらい(一時的たが)忘れる事が出来る。
懐かしさに浸る事が出来る。とっても清々しい気分だ。何度も何度もやったゲームなのに、やる度に新しい発見があるのは、僕が成長した証なのだ。
思い出が沢山つまったゲームを真夏にやる。最高!
ただ、これが受験生じゃ無ければなぁとは思うけど。ほんっと、涙が出ちゃいそうだ。
お昼過ぎから始めたゲームだが、気づけば夕方になっていた。
我が家は夕飯を食べる時間が早いので、そろそろ晩ご飯の時間かなぁと思い、ゲームをやめようとしたら、母親の「ご飯できたよ」という声がしたので、「はーい!」と大きな声で答える。取り出す、セーブをする。当たり前だけど、前回から二年経った今日の日付で記録されている。何やら感慨深い気持ちを感じつつ、電源を切ると、僕は一階へ降りて、家族みんなでいつもご飯を食べているリビングへと向かう。家族みんなといっても、父親の帰りが遅いので、僕と母親だけだけど、それでも僕は幸せだった。リビングはエアコンがガンガンにかかっており、涼しくて快適だった。夕飯はカレーライス。福神漬けと一緒にパクリ。美味しい。このカレーライスも味が変わらないねと母親に言ったら、そりゃ同じカレールーを買っているからねと返された。そりゃそうか。
後は早めのお風呂に入って、疲れと汗を洗い流すと、再び僕の部屋に戻り、勉強再開。確かにゲームは楽しかったけど、やっぱり受験の事が頭にちらついてしまう。今度は、志望校に受かって大学生として、またこのゲームをやりたいなと思った。きっとその時も今と同じ懐かしいばかりの感情を抱くんだろうなと思った。
夏休み、高校3年受験生の僕、小学生の頃やっていたゲームをして、息抜きをする みずみゆう @mizumi_yu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
物書きの壁打ち最新/亜咲加奈
★96 エッセイ・ノンフィクション 連載中 36話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます