004(ハイブリッド)
「ハハハ、安心しろ。俺も軍属だ」
「お前もか!? どこのチームだ? 階級は?」
「日本とアメリカのボーダーチームだ。階級は中尉。俺のデジタル統制力は弱いから、チェーンは使えないがな」
「エリートじゃないか」
ボーダーチームというのは宇宙人の移動を制御し、監視する役割を担う。戦う軍人というよりは、インテリジェンスだ。
「真田バサラ少尉は〝純血〟か?」
「いや、トラピストの使徒の血が入ってる」
「やはりな。純血なら、チェーン自体まともに扱えない奴も多い。オリジナルは〝徳川バサラ〟か?」
「ああ、そうだ。サッカー日本代表をワールドカップ優勝に導いた、センターフォワード」
「確か、数年前に亡くなったよな。もう彼の人造人間は造れないな」
「人造人間って呼び方はやめてくれ。あんまり、良い気はしない。伝説の男の血を引いていても」
「そういうものか。ところで、バサラのチームはどこなんだ?」
「…………アンタレスだよ」
ガタンと、バギーが揺れる。獣道だ。
「アンタレスは叩き上げが多いって聞いたことあるけど、バサラはハイブリッドだから、違うようだな」
「ハイブリッドって呼び方もやめてくれ、良い気はしない。宇宙人を敵視してる奴らが集まるチームだ。純血じゃない俺は肩身が狭いんだ」
「それでも、力を認められてるからアンタレスに居られるんだろ?」
「まあな」
獣道を通り抜け、アスファルトの道路に出る。旧道だ。
「この辺りでバギーを捨てよう。街まで行くと怪しまれる」
街まで徒歩10分くらいの所だ。ヨッシーはバギーを路肩に停める。
「バサラ、クリーナーの知り合いは居るか?」
「いや。金洗浄の知り合いなんて。インゴットなら、いざって時に取っておくよ」
「そうか」
「俺は飯田市だから、すぐそこだ」
「バサラも飯田市か」
「何!? お前もか?」
「ハハハ、自宅じゃないがな」
バサラとヨッシーはバギーを降りてジュラルミンケースを開ける。インゴットの破片が12個だ。
「6個ずつだ」
「いいのか? 発案者はヨッシーだろ?」
「いいんだ。チェーンなしには無理なミッションだったからな。それに金の量が多いとクリーナーの手に負えん」
「じゃあ、遠慮なく貰っておくよ」
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