終章-20:死闘の時、義勇魔法士 対 絶望の魔獣

 死した魔獣達の残留思念や骸に残る魔力の残滓ざんしを吸い取り、急速に力を増したファントムロードが周囲の掃除をするように、範囲系魔法弾を次々に放ち、周りの魔獣達や義勇魔法士達を無差別に攻撃する。

 義勇魔法士達は結界魔法を盾にどうにか攻撃に耐えていたが、その場に残っていた1000体近い魔獣達は全滅し、【霊王】を成長させる養分と消えた。

 命彦とメイアがファントムロードに危険を感じて口を開く。

「最後の最後でこれは……」

「あれはもう普通のファントムロードじゃねえ。……どうする、どうすればいい?」

 頭上にいる眷霊種魔獣サラピネスと、眼下にいる霊体種魔獣【霊王】を交互に見て、苦悩する命彦達。

 その命彦達を、サラピネスはケタケタと嘲笑った。

『どうもせんでよかろう? 貴様らは我の獲物だ。我の相手だけをすれば良い。そして、街が終わるその時を見て絶望し、我に食われるのだ。それが貴様らの運命よ。そうだ、こうしよう! 貴様ら2人のうち、どちらか一方でもアレへの攻撃に動けば、我は即座にあの街へ攻撃する。さすれば、貴様らも我の相手をせざるを得まい?』

「……あんたぁ、面白がってるわねっ!」

『いかにも、面白がっている。いや、面白くしたいと思っている。貴様ら人間どもが右往左往すればするほどに、苦悩すればするほどに、次元の高みにおわす我が母神は楽しまれる。勿論我も楽しい。見世物としては非常に愉快だ。加えて、我に生の実感を与えるほどの戦い甲斐のある相手がおれば、娯楽としては最高であろう?』

「この騒ぎ全てを娯楽とほざくか……母さんを傷付けたことも、貴様にとってはただの娯楽か? ええ加減にせえや、このボケがっ!」

 祖母譲りの関西弁が思わず出る命彦。それほどに、命彦にとっては許せぬ発言、許せぬ思念であった。

 声に宿る命彦の怒り、限界を突破して憤怒の激情を宿す声が、重々しい殺意を伝える。

 その殺意を心地良さそうに感じ、サラピネスが恍惚の表情で思念を発した。

『良い目だ。我への凄まじい怒気と殺意を感じるぞ? その目が絶望に染まるところが、我は見たいのだ。さあ、死せるその時まで、闘争の対話を続けよう!』

「……狂ってるわ」

「イカレタ女神に作られた魔法生物だ、生まれた時から狂ってるだろうさ! 行くぞ、メイア!」

「ええ!」

 全身を覆う魔力物質の外骨格に、今一度魔力を走らせ、命彦はメイアと共にサラピネスへ突撃した。

 自分達が加勢するまで、勇子達が【霊王】を抑えてくれることを、命彦達は祈っていた。


 命彦とメイアが眷霊種魔獣サラピネスへ突撃した頃。

 地上では、梢達が必死に義勇魔法士達を統率し、ファントムロードと戦っていた。

「怯まず攻撃するのよ! いくら高位魔獣と言っても、たかが1体。数で押し切れるわ!」

「せや、勝てる戦闘やで!」

「的がデカイ分、撃てば当たる。後衛の魔法士は、恐れずに魔法攻撃を続けよう!」

 梢が総指揮を、そして勇子と空太が前衛と後衛の分割指揮を行い、霊体種魔獣【霊王】に義勇魔法士達が一丸で挑む。

 しかし、勇ましいその言葉とは裏腹に、ファントムロードへの義勇魔法士による魔法攻撃は効果が薄かった。

 戦場にいた数千体の魔獣の力を喰らい、その力を劇的に増したファントムロードは、圧倒的魔力量と使役した凄まじい量の精霊を使って、眷霊種魔獣の神霊魔法に匹敵するほどの精霊魔法を、矢継ぎ早に具現化したのである。

 死と絶望が溢れた戦場ゆえに、あっちこっちに陰闇の精霊が満ちているのだろう。

 陰闇の精霊を介した漆黒の魔法弾が、次々と義勇魔法士の結界魔法や付与魔法を撃ち抜き、破壊する。

 義勇魔法士達も、これまでの魔獣との戦闘で疲弊していたが、仮に万全であっても防ぐことが難しいほどの魔法攻撃が、雨あられと降り注いだ。

『くぅ! もう死んどるくせに鬱陶しいわ! 梢さん、前衛の消耗がひどい。後退させてや!』

『後衛だって一杯一杯だよ! 治癒に防御に攻撃と、3役押し付けられてるんだ! 今前衛の魔法士達が下がれば、その分アレが前進して街に肉迫する。ここはどうにか耐え忍んでくれ!』

『アホ空太! そう言うたかて、前衛の魔法士らももう限界やぞ!』

 〔採集士〕学科の魔法士達による思念伝達網を使って、勇子と空太が考えをぶつけ合う。

 どうしたものかと、梢が今後の対応策を必死に考えている時。

 【霊王】の周囲へ、常軌を逸した総量の陰闇の精霊が集まっていることに、勇子と空太が気付いた。

『そ、空太!』

『ま、マズイ! 梢さん、あいつ霊体種の魔獣固有魔法、《乱死の叫び》を使う気だ!』

 舞子と一緒に戦った、霊体種魔獣【死霊】のことを思い出す、勇子と空太。

 空太の警告の思念を聞き、梢が義勇魔法士全員へ思念による指示を、即座に出した。

『総員、魔法防御を徹底! 後衛の義勇魔法士達は周囲系魔法防壁を多重展開して退避場所を作って! 前衛の義勇魔法士は状態異常耐性を底上げしつつ、退避場所に逃げ込むのよ、早くっ!』

 勇子と共に、ファントムロードへ精霊付与魔法を使って果敢にも接近戦を挑んでいた前衛の魔法士達が、次々に近くへ具現化された結界魔法に逃げ込むが、全ての前衛の魔法士が周囲系魔法防壁へ逃げ込む前に、ファントムロードが咆哮した。

「ギィイヤアアァァアアァァーッ!」

 【霊王】から結界魔法に対して、三葉市に対して、黒く透明がかった死の魔法力場が放たれ、力場に包まれた義勇魔法士達が、次々に倒れて身悶えし、絶命して行く。

 そして、周囲系の多重結界魔法とぶつかった魔法力場は、魔法防壁を圧迫した。

「くううぅぅ!」

「ま、魔法防壁の上からでも……」

「これだけの圧力があるとは!」

「き、機械の私にさえ、影響が出ています。これは空間自体を震動させている?」

 空太の展開した多重魔法防壁へ退避した、勇子と梢、ミツバが、突然体重が倍加したように、結界魔法の内側で瞬時に膝を屈した。

 結界魔法を展開している空太もその場で座り込み、懸命に死の呪詛を振り撒く魔法力場に耐えている。

 必死に耐える義勇魔法士達の脳裏に、聞こえるのは、死の叫びに乗った魔獣の思念であった。

『生ある者よ、滅びよ。命ある者よ、滅びよ。憎い、憎い、憎い……』

「魔法防壁で防御しとんのに、思念が届くって、どんだけの効力やねん!」

 驚く勇子の視界に、1つ、また1つと、結界魔法が消える様子が映った。

 このままでは義勇魔法士部隊が壊滅する、誰もがそう思っていた。


「命彦! 勇子達が! それに地下の避難施設も」

 神霊探査魔法で、下の戦闘の様子を感知したメイアが、思わずサラピネスから目を逸らした。

 義勇魔法士部隊の死傷者がグンと増え、地下の避難施設でも、《乱死の叫び》の余波で倒れて苦しむ者が続々と現れている。

 効力範囲外でもこれだけの余波がある魔法を、まともに避難施設が受ければ、内部にいる普通の人々は、一切の抵抗ができずに即死するだろう。

「これ以上、アイツを都市に近寄らせちゃダメだわ!」

「分かってる、でもこっちも手が出せねえ! くおぉぉっ! くっ、そっち行ったぞメイア!」

「え? きゃあっ!」

『下を気にしてる場合か! 助勢には行かせぬ、ハハハハハッ!』

 命彦の攻撃を捌き、神霊結界魔法と神霊付与魔法の2重の魔法防御の上から、メイアを殴り飛ばしたサラピネス。地上へ墜落するメイアを、空間転移で即座に拾い上げ、命彦が言う。

「メイア、気ぃ抜くんじゃねえ!」

「くぅう……ごめん」

 神霊治癒魔法で瞬時に傷を癒し、サラピネスを見るメイア。焦りの感情が、その目に宿っていた。

 メイアがサラピネスにがむしゃらに攻撃を仕かける。

「メイア、待て! 焦ったら負けだ!」

 命彦がメイアに加勢しようとした時、下腹部にある〈秘密の工房〉から、命絃やミサヤの思念が響いた。

『待って命彦! このままじゃ、あの化け物の思い通りに事態が進むわ。打開策を練る必要がある』

『最後の最後に出しただけあって、あのファントムロードは現時点の義勇魔法士部隊だけでは、対処が難しい相手。第1や第3昇降機前の義勇魔法士戦力を、全て結集すれば対抗できると思いますが……』

『あっちもあっちで、多数の魔獣が攻め込んでるわ。持ち場を離れて援護に来れるんだったら、とっくにミツバが手配してる筈よ』

『確かに……悔しいが、俺達にも助勢に行けるほど戦力的余裕がねえ。眷霊種の力の上限が見えれば、思い切った手も使えるんだが』

『まだ、余力があるようにも見えますね』

『ああ。しかし、のんびり戦ってもいられん。俺の魔法具の限界に、メイアの時間制限とファントムロードの死の叫びだ。全部が厄介極まる問題だぞ? どれか1つでも減らさねえと、ホントにこっちが終わる』

『今すぐどうにかできるのは、ファントムロードの《乱死の叫び》ですね』

『あれ、どうにかできるのかミサヤ?』

『ええ。込めた魔力と精霊の量が桁違いですが、根本はリッチが使う固有魔法と同じです。以前マイコがしたように、魔法力場をぶつければ、相殺は難しくとも効力の弱体化くらいはできるでしょう』

『ミサヤ、まさか舞子を使うつもり? あの子1人じゃ絶対無理でしょ?』

『1人じゃ無理だったら、人数を増やせばいい。〔魔法楽士〕は舞子だけじゃねえ!』

 思念の高速伝達で、一瞬のうちに対話を終わらせた命彦は、そのままメイアに思念で言った。

『メイア! 30秒、持たせろ! 打開策を用意させる!』

「……っ! 分かったわ!」

 メイアが、訝しげに首を傾げるサラピネスへ攻撃を仕かけている間、命彦はミサヤの《旋風の声》を使い、三葉市の遥か上空にある【精霊本舗】へ、思念を飛ばした。


 【精霊本舗】の庭で芝生の上に座り、従業員やその家族と一緒に、戦闘の様子を食い入るように見守っていた舞子が、脳裏に響く命彦の思念を受けてスッと立ち上がった。

「あ、命彦さん! ……はい、はい、ええっ? ……わ、分かりました! できるかどうか分かりませんが、やれるだけやってみます! 親方達も聞きましたか?」

 舞子が横にいたドワーフ翁達、古参の従業員4人に問うと、全員が命彦の思念を受けていたのか、すぐに立ち上がって言う。

「ああ、聞いとったぞい。若様も思い切った手を考えよるわい」

「ですが、有効だと思います。ミツバには私から連絡しておきますね? ドルグラムは動ける者を使って、持ち出す通信機材の用意を頼みます。トトアは魔力が残ってる者を集めて、《空間転移の儀》の構築に入ってください。法太郎は、公演ライブに使える場所を押さえてもらいます。避難して建物自体は無人とはいえ、勝手に借りれば、後々所有者がうるさいでしょうから」

「分かった、任しとき」

「ワシの方も心得た。ミツバに公演場の選定をしてもらったら、すぐに連絡をくれ。建物の持ち主と交渉する」

 舞子がドワーフ翁達を見て、ぺこりと頭を下げた。

「皆さん、よろしくお願いします」

「マイコ嬢もしっかり務めを果たすんじゃぞ? 若様は、マイコ嬢だったらできると思い、指示した筈だ。自分の力を、信じるんじゃ」

「はい!」

 舞子がドワーフ翁の言葉に元気に応じる姿を見届け、エルフ女性が自分のポマコンで早速ミツバに連絡した。


 【精霊本舗】で動きがあったその頃。

 ミツバは、空太の結界魔法の内側で、《乱死の叫び》の影響を受けて片膝をつき、小声で自問自答していた。

「《乱死の叫び》による空間震動と、それを遮る空太さんの……多重魔法防壁により、本体人工知能と通信できません。本体との情報更新ができず、こちらから魔法機械への指示も不可能……マズいですね」

 魔法と魔法のぶつかり合いによる余波で、激しい通信妨害を受けていたミツバは、自分の本体である都市統括人工知能との接続を断たれ、戦場における情報更新も遅れて、すぐ近くにいる魔法機械達の指揮さえできずにいた。

 魔法機械達は今、本体の高度人工知能の指揮と自立思考によってどうにか動いているが、移動端末であり、情報収集装置でもあったバイオロイドのミツバとの交信途絶によって、本体人工知能も効果的に魔法機械の指揮と運用ができず、少し混乱している様子であった。

 ところが、《乱死の叫び》の効力範囲外にいた多くの魔法機械のウチ、1体の空戦型の魔法機械〈オニヤンマ〉が、突然ミツバの方へと突っ込んで来る。

 それに気付いたミツバは、魔法の効力に抵抗して荒い呼吸の梢達に、すぐ警告した。

「本体人工知能の指揮を受けた魔法機械が1機、こちらに突撃して来ます。注意してください!」

 声を出す余裕も失っているのか、苦しそうに首を振る梢達を見て、ミツバは手足に力を入れ、無理やり立ち上がった。

 結界に魔法機械が突っ込んで来る場合、我が身を盾にしてでも、梢達を守ろうと思ったからである。

 しかし、幸いにもミツバの決死の思いは、空振りに終わった。

 《乱死の叫び》の効力範囲に入った瞬間、魔法力場の影響を受けて〈オニヤンマ〉が突然飛行能力を失い、急角度で降下したからである。

 僅かに空太の結界魔法から逸れて、ミツバの眼前の地面に墜落した〈オニヤンマ〉。

 その〈オニヤンマ〉が、本体である都市統括人工知能の情報伝達手段であると気付いたミツバは、周囲系魔法防壁の端までよろよろと歩き、結界魔法から腕だけを伸ばして〈オニヤンマ〉に触れた。

 《乱死の叫び》の魔法力場に晒され、腕の生体組織が崩壊し始めたことを感じつつ、どうにか〈オニヤンマ〉に触れて有線接触通信を行ったミツバは、本体の人工知能からの情報と指令を受信する。

「そういうことですか、さすが命彦さん達です」

 〈オニヤンマ〉の持っていた情報から命彦達のたくらみを知り、希望を見出したミツバは、黒ずんでしわだらけの腕を隠して、梢達に言った。

「もう少し耐えてください。命彦さんの指示を受けた【精霊本舗】が、事態の打開に動いています」

「ほ、ほんまか!」

「魔法の思念伝達さえ、この死の魔法力場のせいで届きにくいのに……よく、知らせてくれたわ、ミツバ」

 先ほどと同様に苦しそうだが元気は出たのか、思わず声を出して笑みを浮かべる勇子と梢。

 空太も歯を食いしばって言った。

「救援があるって、分かったんだ。もう少し……耐えてみようか!」

「アアアアアァァァ―ッ!」

 叫び続けるファントムロードを、空太が挑むように見て、結界魔法に魔力を注いだ。


 鬼人女性と有志従業員達の使う《空間転移の儀》によって、【精霊本舗】から瞬間移動した舞子は、エルフ女性とドワーフ翁、さらに宴会で使っていた幾つかの通信機材と共に、【迷宮外壁】の第2昇降機を見下ろせる高層建築物の屋上に立っていた。

「くっ! 300m近く離れているのに、ここまであの魔獣の使う固有魔法の効力が……」

『舞子さん、怯んでる場合ではありませんよ、融和型魔獣達も集まっています。すぐに始めましょう』

「はい!」

 ドワーフ翁が用意した通信機材の空間投影装置が起動し、ミツバの姿を映す平面映像を投影して、舞子を叱咤する。両頬を叩いて気合を入れた舞子は、周囲を見回した。

 ただっ広いビルの屋上には、本体人工知能のミツバが助力を頼んだのか、都市に住まう融和型魔獣達が控えており、舞子の行動を見詰めている。

「すぅー……はぁー……皆さん、どうか力を貸してください」

 深呼吸を繰り返し、魔獣達に宣言した舞子が、平面映像に話しかけた。

「ミツバさん、心の用意ができました。いつでも行けます!」

『了解です。こちらも各避難所及び個人避難施設への通信設備へ接続を完了しました。いつでも舞子さんの声と姿を届けることができます。始めますよ?』

 舞子は、周囲の空間に投影された都市の平面映像に、自分の姿が映っていることを確認し、ゆっくりと口を開いた。

「この映像を見ている皆さん! 突然ですが、私に力を貸してください! 特に、〔魔法楽士〕学科の魔法士の皆さん、お願いします。私と一緒に歌ってください!」

 舞子はとにかく思い付いた言葉をそのまま話した。考え込めば口が止まる。

 間近に感じる戦場の空気に、霊体種魔獣【霊王】が放つ死の気配に、身体が震えてしまう。

 それゆえに、自分の心のうちを、偽らざる想いだけを、舞子は口にした。

「私はただの〔魔法楽士〕です。どこにでもいる……ごく普通の、非戦闘型の魔法士です。今戦場にいる魔法士の方々のように、多くの魔獣と戦う力はありません。都市に迫る危機を知っても、今の私には、歌うこと、祈ることしかできません」

 舞子が一度言葉を切り、悔しそうに顔を歪めた。

「ですから……さっきまで怯えて、ただ震えて、戦場の映像を見ていました。皆さんと同じように……。でも、今その戦場にいる魔法士達はとても苦戦しています。戦力の不足もある上、戦う相手は常軌を逸した高位魔獣です。当然のことだと思います」

 舞子が、拳を握り締めて、眼前に見えるファントムロードを見据えた。

「私は……彼らを応援したい。彼らに力を貸したいんです! 私達〔魔法楽士〕であれば、それができる。魔法力場を介した私達の歌は、きっとあの魔獣の死の歌に対抗できる筈です! 〔魔法楽士〕は、基本的に戦う力はほとんど持ちません。ですが、自分の声を、人々の想いを、伝える力はあります! 〔魔法楽士〕の皆さん、お願いです。震える前に、怯える前に、立ち上がってください。私達の力で、街の人々の声を、想いを、戦場にいる魔法士達へ伝えましょう! それはきっと、彼らを奮い立たせ、魔獣に打ち勝つ力を与える筈です!」

 舞子が祈る様に両手を組み、言葉を紡いだ。

「私は歌います、彼らのために……皆さんは、どうしますか?」

 舞子は淡い笑みを浮かべ、訴えかけた。

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