終章-16:切り札の完成と、動くメイア

 【迷宮外壁】前で、勇子が【ヴァルキリー】小隊の双子と奮戦していた頃。

 【精霊本舗】6階別荘で、魔力回復の仮眠を取っていた命彦は、寒気を感じて目を覚ました。

 眷霊種魔獣に一度殺されかけたせいか、その魔力を近くに感じて、身体が勝手に反応したのである。

「む、この魔力は……」

 命彦が起きると同時に、命絃とミサヤが寝室へ駆け込む。

「命彦、現れたわよ!」

『コズエ達がすでに眷霊種魔獣と交戦しています!』

「分かった。切り札の作成は?」

「私達の〈秘密の工房〉の方はでき上がったわ」

 命絃が首飾り状の特殊型魔法具〈秘密の工房〉を見せて言うと、ミサヤも思念で言う。

『[陰龍の爪]の方もソルティアからの思念で、すでに庭へ運び出したと聞いています』

「ドム爺の魔法具の方は?」

『出来が良かった3組目の削り作業がようやく終了し、これから従業員一丸で魔法の封入に入るところです。封入に10分、魔法の定着に1時間は必要でしょう。昨日ドルグラムが言ったとおり、昼には完成しますが……』

「完成より早く眷霊種魔獣が現れたか……1時間ももたんだろう? 仕方ねえ、魔法を封入し次第、すぐに装備して出撃する」

「魔法の定着を待たずに魔法具を使うつもり? 効力が失われる可能性が高いわよ?」

 心配そうに命絃が問いかけると、命彦は決然と返した。

「承知の上だ。ドム爺にも分かってもらう。すぐ用意して庭へ行こう」

 寝台の上で下着姿の命彦は防具型魔法具を着込み、命絃から〈秘密の工房〉を受け取ると、急いで庭を目指した。

 命彦達が店舗棟6階から1階の庭へ降りると、ドワーフ翁を始め、300人を超える従業員とその家族が、不安の表情で、庭に浮かぶ平面映像に見入っていた。

 ミツバが、全ての都市の住人へ余さず現状を伝えるため、戦闘の様子をそのまま放送しているのである。

 とりわけ、眷霊種魔獣が前方に出現した【迷宮外壁】の第2昇降機前はよく映され、勇子や空太、梢やメイアの姿が、他の魔法士達と共に、幾度も平面映像で見られた。

「あ、命彦さん!」

 庭へ到着した命彦にいち早く舞子が気付き、エルフ女性や鬼人女性、ドワーフ翁と一緒に駆け寄って来る。

「若様、これを」

 鬼人女性が魔力物質に包まれた〈出納の親子結晶〉を差し出すと、命彦は受け取って言う。

「すまん、助かったよ。トト婆、ソル姉」

「いえ。私達はできることをしたまでです。しかし……」

 エルフ女性が、横のドワーフ翁を一瞥する。ドワーフ翁が悔しそうに頭を下げた。

「申し訳ありませんですじゃ、若様。まだ追加装甲の防具型魔法具が、でき上がっとりません。3組目だけに絞って削り作業と研磨を急いだんじゃが、思いのほか時間を要しました。これから魔法を封入するところですじゃ」

「いいんだ、ドム爺。こっちの想定より魔獣が速く動いた、それだけのこと。読み切れるわけねえさ、誤算もあって当然だ。でも、今できる最善を俺達は尽くす必要がある。魔法の封入を急いでくれ。封入作業が完了し次第、すぐに魔法具を装備して俺は出る」

 命彦の言葉を聞き、ドワーフ翁が心配の表情を浮かべて言う。

「い、いやしかし、それでは!」

「ああ。魔法の道具への定着を待たずに使用するわけだから、封入した魔法の効力はすぐに失われるだろう」

「全て承知の上で、装備されるつもりですかの? 異相空間処理で道具内の異相空間を統合し、そこに魔法を封入しても、魔法が道具と一体化してその効力が道具に同化するには、最低でも1時間ほどかかる。封入後すぐに魔法具の力を使えば、半端に同化しただけの魔法の効力がどんどん拡散して、最後には魔法の効力が消え失せ、魔法具はただの道具へと戻る。若様は……魔法具をこの戦闘限りの、使い捨てにするつもりですかのう?」

 ドワーフ翁の発言に、命彦は首を縦に振った。

「ああ。〔魔具士〕として、職人として悔しいだろうが、堪えてくれ、ドム爺。魔法の定着を待つ時間が惜しい。1時間も待ってらんねえんだ」

「……分かりましたわい。魔法具の定着を待っとって、メイア嬢達が死ぬのはワシも嫌じゃ。今できることを精一杯させてもらいますわい」

 ドワーフ翁は一瞬だけ寂しそうに笑い、急いで作業場へと戻った。


 命彦達は、魔法具祖型の削り作業が行われていた机の傍へ行き、魔法封入作業の用意が行われるのを見つつ、魔力物質で覆われた〈出納の親子結晶〉を机の上に置いた。

 命彦が目で合図すると、エルフ女性と鬼人女性が机の上の〈出納の親子結晶〉から魔力物質を消失させて行く。

 すると黒色の〈出納の親子結晶〉が現れ、途端に呪詛の気配を放った。

 すぐにミサヤが、呪詛を抑え込むように分厚い魔力物質で〈出納の親子結晶〉を完全に密封し、命彦が一段と厚みを増した魔力物質の塊を手に取る。

「よし。これでミサヤが思うだけで魔力物質を圧縮して、すぐに〈出納の親子結晶〉を遠隔操作で破壊することができる。切り札の2つ目も手に入った。ソル姉、トト婆も、ありがとう。ドム爺の手伝いに戻ってくれるか?」

「はい」

「分かったよ。ウチの人と目一杯魔力を絞り出して、効力ができるだけ続くように、皆で魔法を構築するさね」

「頼む。ただタロ爺には無理しねえように言ってくれよ? 日頃魔法を使ってねえ常人にとっては、魔力の消費は相当きつい筈だからさ」

 命彦が苦笑して言うと、エルフ女性と鬼人女性もくすくす笑い、作業場に戻った。

 横にいた舞子も、命彦に問う。

「命彦さん、私もお手伝いしに行っていいですか?」 

「ああ。舞子も研修生とはいえ、従業員の1人だ。好きにしろ」

「はい!」

 嬉しそうに笑って舞子も作業場へ戻る。

 庭の作業場では、各部位に分かれた魔法具の祖型を、40人から50人ずつの従業員とその家族達が取り囲み、数人の〔魔具士〕学科の職人達と一緒に、1つの魔法を具現化しようとしていた。

 封入作業風景を見て、命彦が独り言を言うように口を開く。

「〔魔具士〕の職人が、《旋風の声》や《地礫の声》といった伝達系の精霊探査魔法を使い、手伝ってくれる者の心を一つにする思念伝達網を作り上げ、同じ魔法の想像図を思い浮かべさせて、魔力を吸い出し、制御する」

「その上で、〔魔具士〕職人達の誘導によって、道具へ封入する魔法が具現化され、同時に異相空間処理用の精霊儀式魔法を使って、道具の異相空間を統合しつつ、魔法を道具へと封入するのよね」

 命絃が命彦の発言に続いて言うと、命彦の腕に抱かれていたミサヤが問う。

『口で言うのは簡単ですが、あの人数でそれを実行するのは、〔魔具士〕の職人達に相当の力が必要でしょう。意識が散逸しやすい子ども達は、さすがに除いた方が良かったのではありませんか?』

 ミサヤが、作業場で手を天に突き上げ、目を閉じて必死に魔法を構築する男女に混じって、同様の行動を取っている子ども達を注視しつつ思念で語ると、命彦が穏やかに答えた。

「あの子達も店の一員だ。手を貸してくれるんだったら、ありがたく使うさ。どうしてもダメだったら、ドム爺達が止めるだろ? 魔法封入作業に参加してるってことは、子どもらが参加してもできるってことだ。外す必要はねえよ」

 命彦はそう言って平面映像を見た。焦る気持ちを押さえ、戦友達の無事を祈り、思念を送る。

『梢さん、メイア、勇子、空太。あと10分持たせろ。すぐに行く』

 無詠唱で命彦の具現化した、伝達系の精霊探査魔法《旋風の声》は、【精霊本舗】を幾重にも包む結界魔法をするりと通過し、戦場へとひた走った。


 ミツバが焦りの表情で言う。

「姉さん、ダメです。軍や警察に応援を要請していますが、あちらも混乱の極みにある様子。先の天を衝く爆発で相当の戦力を削られ、空乃さんや拳人さんも眷霊種魔獣と交戦しつつ、戦線を維持するのが精一杯とのこと。こちらにすぐ戦力を送ることは難しいです」

「くっ! 何のために〈転移結晶〉を寄付させたのよ! 軍や警察には引き続き応援要請! あと、他の昇降機を守る戦力にも応援要請して! 少しでも戦力をこっちに回させるのよ!」

「現状ではそれも難しいかと……どの部隊も戦力不足で動かせません」

「ぐぬぬ! 八方塞がりか! 貫け、《火炎の槍》!」

 【迷宮外壁】の斜面に取り付いて、登ろうとする二足歩行のデカい犬、【犬妖魔コボルト】を迎撃して、その頭部を火の集束系魔法弾で吹き飛ばした梢。

 【迷宮外壁】の上で魔法士達の指揮を行いつつ、魔獣への攻撃に忙しかった梢の脳裏に、思念が響く。

『梢さん、メイア、勇子、空太。あと10分持たせろ。すぐに行く』

 梢が目を丸くして、横のメイアに問うた。

「メイア、今の聞こえた?」

「ええ、聞こえました! 10分だったら持たせる自信があります、行かせてください梢さん!」

 梢の横で、戦場の様子をじっと見ていたメイアが戦意を目に宿し、答える。

 メイアは、戦局がじわじわと追い込まれていることに気付いていた。

 実際、つい5分前まで拮抗していた戦場が、今は義勇魔法士部隊の劣勢である。

 【迷宮外壁】の第2昇降機付近にある、半円状に抉れた侵入口を塞ぐように、前衛や後衛の魔法士達が結界魔法を展開して魔法防壁を具現化し、防壁内で遠距離の魔法攻撃を魔獣へと行いつつ、防壁へ近付く魔獣達を、前衛の魔法士が防壁の外に出て討ち取る。

 負傷した前衛の魔法士は、軽傷者はその場で治癒魔法を受け、重傷者は後退させて魔法防壁に逃げ込ませ、治療する。

 こうして前衛の魔法攻撃と後衛の魔法攻撃とで、波状攻撃を行いつつ、戦力の回復も行ってどうにか戦線を維持していたのだが、眷霊種魔獣が倒した端から魔獣を追加で空間転移させるため、討滅速度を超える勢いで魔獣が増えてしまい、前衛の負傷率がどんどん上昇していたのである。

「本来であれば、命彦さんが来るまでメイアさんは温存しておくべきですが、戦力の消耗が早過ぎます。あと5分ほどで、前衛は瓦解するでしょう。もうメイアさんを温存し続けることは難しいです」

 メイアと共に梢の横に控え、魔法機械を指揮していたミツバも渋い表情で言う。

 梢は決断した。

「分かったわ。メイア、神霊儀式魔法《神降ろし》を展開して!」

「はい!」

 神霊種魔獣【雷命の女神:ミカヅチヒメ】との意識の接続を、メイアは試みた。

 梢が、眼下の地面に見える空太へ、〔採集士〕学科の魔法士達が構築した思念伝達網を利用して言う。

『空太、メイアを出すわ! 眷霊種魔獣へ攻撃する時よ。多分90秒後くらいにメイアの《神降ろし》が発動する。他の魔法士と《四象精霊砲》の詠唱に入って待機。メイアが《神降ろし》展開後に先制攻撃して、眷霊種魔獣の神霊結界魔法を引き剥がして!』

 30mほど下にいる空太がすぐに反応して、【迷宮外壁】頂上の梢を見返した。

『僕らがアイツの結界をぶち抜いた後に、メイアの本命を叩き込むんだね、分かった! 勇子にも伝えてくれ! 少しの間、こっちの魔法攻撃が減少するから!』

 空太の思念がすぐに帰って来て、梢が不敵に笑った。

『分かってるわ。一泡吹かせるわよ』

 梢からの指示を受けた空太は、すぐに〔精霊使い〕学科の魔法士達へ、思念伝達網を使って言う。

『梢さんからの指示だよ、眷霊種魔獣に攻撃を仕かける。1分以内に《四象精霊砲》の構築ができる人、僕の周りに集まってくれ!』

「ワシはできるぞ」

「あたしも」

「僕もどうにかできます」

 即座に十数人の魔法士が、空太の周りに集まった。

 【ヴァルキリー】小隊の小隊長である眼鏡少女もいる。

「眷霊種魔獣を攻撃した後、どうするのですか?」

「すぐに分かるよ。詠唱を開始してくれ!」

 集まった魔法士達が、疑念を抱きつつも部隊指揮官からの命令と思い、全魔法学科で最も魔法攻撃力が高い学科固有魔法、精霊融合攻撃魔法《四象精霊砲》の詠唱に入った。

 空太達が《四象精霊砲》の構築に入ると同時に、後衛からの魔法攻撃の質と量が一気に下がり、前衛にいた勇子が後衛を気にした瞬間である。梢の思念が届いた。

『命彦の思念、聞いたでしょ? メイアを出して眷霊種魔獣にぶつけるわ。空太達にデカいの1発かまさせるから、一時的に後衛からの魔法攻撃が弱まるわよ。どうにか現状を維持させて!』

『そういうことかい、了解や!』

 勇子が笑顔を浮かべて、全ての前衛の魔法士達へ届くよう、思念伝達網で叫ぶ。

『後衛の攻撃が一時的に弱まるけど気にせんで戦え! 逆転するための作戦や!』

「逆転のための作戦?」

「この劣勢を覆せるのですか?」

 勇子の左右にいた【ヴァルキリー】小隊の双子が問う。

「多分覆せる。覆せんでも、多少好転させることはできるやろ。あとは命彦次第や、うらぁっ!」

「くっ、てやぁ! 命彦次第って、気でも狂いましたの?」

「今更そこいらの魔法士が1人増えたところでどうにも……このおっ! そもそもの話、本当に来るのですか、あの地味小隊長は?」

 魔獣と戦いつつ言う双子へ、勇子が笑って語る。

「あんたら、あのアホのことよう知らんで煽って、えらい目に遭ったこと忘れたんか? マザコンとシスコンをこじらせたウチのイカレポンチ小隊長が、自分のオカンを殺されかけて黙っとるわけあらへんやろ! そうら、《フレア・ラッシュ》!」

 勇子の学科固有魔法、火の魔法攻撃が炸裂し、オークが十数体まとめて焼き飛ばされた。

 楽しそうに笑う勇子を、【ヴァルキリー】小隊の双子が呆れたように見たその時である。

 【迷宮外壁】の頂上で凄まじい魔力の波動が生じ、眷霊種魔獣の背後へ浮かぶ破壊の女神と対峙するように、神々しき女神の姿が屹立する。

「そら見い! あれがまず、逆転のための一手や!」

 勇子の言葉が聞こえていたかどうか。【ヴァルキリー】小隊の双子はあんぐりと口を開けていた。

 周りにいた敵性型魔獣も、そのあまりの魔力の波動に驚き、警戒して後退する。

 それとほぼ同時に、後衛から恐ろしい破壊力を秘めた一筋の奔流が、空を走った。

 後衛の〔精霊使い〕学科の魔法士達による、眷霊種魔獣を狙った一撃だと気付き、勇子が叫ぶ。

「行ったれ、空太!」

 神霊結界魔法で身を包み、【迷宮外壁】から600m先の上空へと浮かんで、魔法による魔獣の空間転移を利用して、真綿で首を締めるようにじわじわと義勇魔法士達を劣勢に追いやっていた眷霊種魔獣サラピネス。

 そのサラピネスを、十数人分の《四象精霊砲》は呑み込んだ。


 思い付きの余興とはいえ、魔獣の召喚が続く関西迷宮から、数多の敵性型魔獣を【迷宮外壁】の前へと転移させ、自分に与えられた眷霊種魔獣としての役目を果たしつつも、ついでに邪魔者達を排除して、メイアと全力で戦い、誰にも邪魔されずに捕食できる舞台を作ろうと考えていたサラピネスは、神霊魔法の気配に気付き、閉じていた目を開けた。

 目の前に極めて高い効力を持つ魔法攻撃が迫っていたが、神霊魔法防壁で防ぎ切れると思い、魔法防壁の厚みを増しつつ、まともに受け止めるサラピネス。

 確かにサラピネスは無傷だったが、思いのほか魔法攻撃力は高かったらしく、神霊結界魔法は相殺されていた。

 そのサラピネスの誤算、油断を待っていたように、太い紫電が戦場を走る。

 サラピネスが、消えた神霊魔法防壁を瞬時に再展開するより僅かに早く、メイアの放った神霊攻撃魔法が一瞬で届いた。

『ぐっ!』

 痛覚らしい痛覚を持たぬ眷霊種魔獣といえども、衝撃は受ける。

 危険を感じ、一瞬の判断で身を翻したサラピネスであったが、気付くと下半身が消し飛んでいた。

『ククク、カカカカッ! よいよい、これでこそ宴も盛り上がる!』

 心底面白そうに笑い、瞬時に炭化した身体を神霊治癒魔法で再生したサラピネスが、【迷宮外壁】の方を見る。

 【迷宮外壁】の頂上では、神霊の姿を背後に投影したメイアが、フワフワと浮いていた。

 挑むように自分を見るメイアの表情に気付き、不快そうにサラピネスは顔をしかめる。

『その表情、気に食わぬ。悲壮感が足りぬぞ? 我が高まる飢餓きがを抑えてまで、我が母神のために最高の宴を催そうとしている時に、宴の舞台に上がる筈の供物が、供物らしからぬ顔をしている。その顔は、本来絶望と苦悩に染まっている筈だ』

 そして、サラピネスは周囲を見て気付いた。

『思ったより、人間どもが生き残っているから、そういう顔をしているのか? 確かに存外残っている。これは我としても想定外であった。数で押せば一気に瓦解するだろうと思っていたが、思った以上に粘るものだ。その誤算を、まずは取り除くとしよう』

 ニヤついたサラピネスが魔法士達へ多数の魔法攻撃を放つ。

 精霊魔法の追尾系魔法弾より明らかに破壊力が高い、火の追尾系神霊魔法弾が無数に放たれる。

「はあああっ!」

 しかし、メイアが動いた。

 サラピネスの放った追尾系神霊魔法弾を、メイアの雷撃が全て撃ち落とす。

 追尾系の神霊魔法弾を、同じ追尾系の神霊魔法弾で相殺するという神業を見せたメイアは、お返しとばかりに、雷電の範囲系神霊魔法弾をサラピネスへ放った。

 サラピネスにはあっさり躱されるものの、荒れ狂う雷撃が紫電の雷球から全周囲に吐き出され、効力範囲にいた魔獣達が数百体ほど蒸発した。

 その様子を見てサラピネスが不愉快だとばかりに、メイアを睥睨する。

『せっかくここまで増やした魔獣共を……いいだろう、もう母神への言い訳もできる。我は我の楽しみを優先するとしようか』

 サラピネスの背後に投影されていた破壊の女神の姿が縮み、神霊付与魔法をサラピネスが纏うと、メイアの背後に投影されていた神霊の姿も縮んで、メイアと同化する。

 神霊付与魔法を纏って対峙する、サラピネスとメイア。

 空恐ろしい笑みを浮かべたサラピネスの前に、メイアが瞬間移動して神霊魔法力場を纏う拳で突き上げるように攻撃した。それを一瞬で読み、避けたサラピネスが迎撃する。

 サラピネスの一撃を避けつつ、メイアが急上昇した。

 戦場からサラピネスを引き離そうとするメイアを意図を見抜きつつ、サラピネスは企み事でもあるのか酷薄に笑ってメイアを追撃した。

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