この杖から魔法が出ないというだけで何時間かかると思ったんだ

ちびまるフォイ

お前、ちゃんと話聞いてるのか!?

「こちらファンタジーお客様相談室。

 装備品取り扱いセンター窓口です」


『なんか魔法が出ないんだよ』


「魔法というと?」


『魔法が出ないっつってんだろ!! 何回も言わせるな!!

 こっちは魔法が出ないから連絡してんだろ!!』


「お客様、杖はいくつお使いですか?」


『あ゛あ゛!? 2本も3本も杖持っているわけ無いだろう!!』


「魔法を使う際に使う詠唱にお間違いはございませんか」


『間違うか!! こちとら何十年も賢者やってるんだ!!

 なんで今さら詠唱を間違えるんだ!! 馬鹿にするのも大概にしろ!!!』


「お客様、詠唱時に十分な魔力供給を杖に行ったでしょうか」


『だ・か・ら!!! 何度も言っているだろう!!

 私は何十年も賢者をやっていて、かつては勇者の一行として世界を救ったんだ!!

 お前は私が杖の使い方もわからないようなトンチキだと決めつけたいのか!?』


「お客様の職業は、現在も賢者でお間違いないですか」


『なんでこうバカな質問しかできないんだ!! 当たり前だろ!!

 さっきから何度同じことを言わせてるんだ! 今度は私が人間かどうかを確かめるか?

 もうお前じゃ話にならん!! 上を出せ!!』


「失礼ですが、私の上司は戦士でして魔法分野はからきしです。

 この手のご相談でしたら私がもっとも熟知しております」


『それじゃなんで魔法が使えないんだ!!』


「それを確かめている状況でございます。魔法が使えなかったのは何度もですか?」


『いいかげんにしろ! このマニュアルバカが!!

 100回魔法が出なくなってから連絡するマヌケだと言いたいのか!!

 1回でも魔法が出なかったら、私くらいの賢者なら異常だとすぐにわかるんだよ!!

 1回出なかったら2回目成功するわけ無いだろ! このアホーー!』


「なるほど……重ねますが、」


『あのな! お前のような物を知らないポンコツに教えておいてやる!

 何十年も賢者として魔法を日常使いしているとこれはわかるんだよ。

 お前ごときの木っ端魔法師にはわからない異常というのがな!!

 今すぐ、魔法が出なくなった原因を確かめて、見直して、改善しないとおおごとになるぞ!!』


「あの、確認したいことがありまして」


『何度も何度もしょうもない質問で時間を使わせるな!!

 いいか、こっちは忙しいんだ! お前とは違う!!

 私のこれまでの答えの中で汲み取れるものを何度も確かめるな!!

 お前が理解力も低くて、話も理解できないバカなのは十分に伝わった!!

 だから、私の言葉を魔法記録するなりして最小限の質問と時間で終わらせろ!!!

 こうしている間にも私は魔力を消費しているんだ!! わかったか!!』


「はぁ……」


『だいたい、昔はこんなことはなかったんだ!!

 最近の杖はどれもすぐ壊れやすくて魔法不良を起こしやすい!!

 まったく魔法をなんだと思っているんだ!! 私の若い頃はそんなことはなかった!

 きっと、魔法の必要性が薄らいだことでしょうもない杖でも許される世界になったんだ!

 昔だったら魔法がちゃんと使えない杖なんて持っていればたちまち魔物の餌だ。

 なのに今ときたらまったく……あげくに相談窓口じゃ話も聞かずにぐちぐちぐち。

 お前は質問という体で私をバカにしたいんだろう!?』


「いいえ、そんなことはありません。ただひとつ確認したいだけなのです」


『さっきから同じようなことを何度も聞きやがって!!

 私は普段はこんなにキツく言わないがお前の対応はひどすぎる!!

 お前しかいないからこうして我慢してやってるが、絶対に許さんからな!』


「では最後にひとつだけ、もう一度確認してもよろしいですか」


『もう一度? また同じことを聞くのか! この恥知らず!!』


「お客様の杖は1本ですか?」


『このっ……!! もう頭が悪すぎて怒る気にもならんわ!!!!

 まったく同じことを何度も何度も確認しないと理解できんのか!!!

 1本に決まっているだろう!! 優れた賢者には使い慣れた杖1本あれば十分だ! バカ!!!』


「……そうですか」


窓口担当は毅然として答えた。




「……ちなみに、この魔法通信にはどの杖を利用していますか?」


魔法通信はそこで終わった。

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