第142話 挟撃
俺の子供達が生まれたので、俺は腰を据えてヤマト帝国までもが参入したインドラ連合国の内政に力を入れることにした。
文明文化どころか異種族が連合国として動き始めたのだ。
ところがまず、内政を進めるうちにヤマト帝国があまりにも広大で統治しにくいことが判明してきた。
そのうえヤマト帝国の帝都付近のみが文化水準が高く武力が充実し、商業が発展しあらゆる富、地方からの多額の税が集められていた。
一方地方へ行けば行くほど文化水準は低くなり、地方の貴族はいままでヤマト帝国から課せられ搾り取られる重税に耐えていた。
その重税を恨みに思っている地方領主は多かった。
ここに新たな国家が誕生したと言われても、それは地方の貴族にとって
「力があれば国家を誕生させられる。
ヤマト帝国から分離独立するチャンスである。」
と知らしめて、戦国時代のような中央政権から独立した国家を造ると言う新たな火種の元になっていったのだ。
今まで巨大な竜だと思われていたヤマト帝国が属国のような小国のカンザク王国が独立してその子虫がヤマト帝国に食いついたと思ったら食い潰してしまったのだ。
抑圧されていた地方の貴族どもがそれを見て我も出来ると蠢動し始めたのだ。
ヤマト帝国の中央付近にヤマト帝国の帝都があると言っても、それらのクーデター事案に対応するため地方に軍を派遣するのには時間と物資がかかりすぎる。
このままではヤマト帝国自体が独立運動の波で疲弊してしまう。
これを機にヤマト帝国自体を合衆国制度にして東、西、南、北、中央の五つのヤマト州に分割統治することにしたのだ。
合衆国制度にしたと言っても、名称はヤマト帝国で従来通り、全体を女帝カサンドラが統治するのだ。
一番大きくヤマト帝国帝都を有する中央ヤマト州は、ヤマト帝国の女帝カサンドラを州長として統治することにし、州都は当然ヤマト帝国帝都である。
次いで軍事的に重要な地点である西ヤマト州である。
ここはインドラ合衆国に参入した姫将軍こと義姉カレンが治めるフイルコン王国と合併して、西ヤマト州として、フイルコン王国王都を州都とした。
義姉カレンが州長として統治した。
この地はヤマト帝国と長きにわたって敵対する隣国サンガス王国と接している。
サンガス王国はヤマト帝国や魔の森を保有する真正カンザク王国に次いで広大な領地を要し、軍事国家としても有名な国である。・・・ちょくちょく軍事訓練のようにサンガス王国の一部隊が国境を侵して侵攻してくる事がある。それらはすべて撃退しているが、ここが将来的に紛争の火種になりそうだ。
気候が温暖で風光明媚な場所を有する南ヤマト州には俺の父親の廃棄帝に州長になってもらった。
ここは今は亡き一番上の義姉カシスが嫁いだトラファルガー王国が含まれているのだ。
トラファルガー王国は現在ヤマト帝国の直轄地となっている。
州都はトラファルガー王国王都である。
俺の父親の廃棄帝からは、
「次の州長には私が保護している一番上の亡き義姉カシスの息子カシムに継がせる。」
ということを約束させられた。
さらに父親の廃棄帝から
「南ヤマト州の州長になる代わりに、亡くなった皇太子の母親の父親である元第一宰相を真正カンザク王国と中央ヤマト州の間にある北ヤマト州の州長にする。」
という事を求められたのだ。
彼は元々優秀な人材であり、俺の父親の廃棄帝の友人でもある。
真正カンザク王国と国境を接しており不測の事態に対応出来るうえ、父親の求めでもあり、無下に出来ない事から了承して、この宰相を北ヤマト州の州長に任命した。
宰相には豚皇太子を産んだ皇后とは別に義妹がいて、その義妹が廃棄帝の身の回りの世話をかいがいしくしており、父親の廃棄帝が赤い顔をして
「この第一宰相の娘を最後の伴侶として迎えたい。」
と言うので、父親の幸せのため当然了承した。・・・どちらかと言うとそちらが目的かな・・・フッフッフ(悪い笑いが思わず出た。)妻達からドン引きされた!
最後の東ヤマト州はアンリケ公国等と接しており港町を有する事から、アンリケ公国等の小国と合併して州長をアンリケ公爵とした。
ただ小国等が多い事から領主会議を残し州長を頂点とする立憲君主制の初期的形を取った。
副州長はアンリケ公爵の従弟のカボサンとヤシキさんを任命した。
ヤシキさんはアンリケ公爵の一人娘のアリサ公爵令嬢のゴリ押しでアンリケ公爵を丸め込んで婚約している事から副州長に任命したのだ。
今でもヤシキさんに一人娘を取られたアンリケ公爵の睨む目が鬱陶しい。
ヤシキさんは当然巡検士の身分はそのままなので、中央ヤマト州に設立したヤマト帝国総合巡検士隊長として、身分を大将にまで昇進させた。
体制が整っていく、インドラ連合国の各王城等の守備隊長の総合部隊長であり、巡検士の総合隊長をベックさんに任命して身分を元帥にまで昇進して元帥府を真正カンザク王国のインドラ連合国の首都、南カンザク地方城に開いた。
また、近衛の団長さんも元帥に昇進させてオーマン国に元帥府を開いた。
オーマン国の白神虎が双子の姉の白愛虎の妊娠出産に立ち会う為、魔の森の湖畔の館に赴くなど不在な事が多い事から、隣国である砂漠の狼国家サンドウルフ王国が時々攻め込んでくるのに対抗するためである。
インドラ合衆国の全体がインドラ大陸統一の為に動き始めたのだった。
俺はインドラ連合国の全体的な政策を行っているが、三日月島にある巨大コンピュータ等の引っ越し作業で魔の森の帝王、世界樹のもとにばかりいた。
姿があまり見えない俺の健康不安説や、俺との出会いが無くなった各国の女帝や女王との夫婦不仲説等の悪意に満ちた情報、噂話が尾ひれを付けてインドラ連合国全体や他国にも流れていたようだ。
この悪意に見た噂話を流していたのが吟遊詩人達である。
新聞はあるが、他のラジオやテレビ等のマスメディアはまだない。・・・う~ん新聞はあっても読める人が少ない。
マスメディアの代わりになっていたのが主に吟遊詩人達だ。
吟遊詩人達は正確な情報も流すが、その情報の一部に悪意に満ちた噂話を入れて流せば、それを聞いた住民達は信じて噂話を拡大させているようだ。
凶報がはいる。
ヤマト帝国を分割統治する際に、心配していた西ヤマト州の隣国サンガス王国が宣戦布告も無いままに国境を越えて攻め込んできたのだ。
開戦当初はいつものようにサンガス王国が訓練のようにヤマト帝国に挑んできたものだと思っていた。
西ヤマト州州長の義姉カレンは、これを迎え撃つべく、兵5万を揃えて出陣した。
訓練の為の出陣と思われたサンガス王国は何とその総兵力を超える30万人もの兵数を揃え、雲霞のごとく攻め込んできたのだ。
そのうえ迎え撃つべき出陣していた西ヤマト州の地方領主の一人がこれを好機と思ったのか
「敵はサンガス軍にあらず、西ヤマト州長のカレンだ!
あの者の首をとれ!
褒美は望みのままに与えるぞ‼」
等と言って、反旗を翻して義姉カレンの軍に襲いかかった。
奮戦もむなしく、義姉カレンは、反乱軍とその雲霞の如きサンガス軍の大軍に敗れてしまった。
義姉カレンは親子共々生死が不明の状態になってしまったのだ。
また、これに呼応するように亜人国家オーマン国に国境を接するサンドウルフ王国も宣戦布告が無いままに、雪崩れ込むように攻め込んできたのだった。
亜人国家オーマン国には国王の白神虎夫婦が国を守り、歴戦の猛将の近衛の団長が元帥府を開いたところであり、簡単には敗退することは無いであろう。
それにオーマン国の将兵学校にいたジャックとキャサリンが武道教官としてオーマン国の亜人族の将兵を鍛えあげていたのだ。
オーマン国は一時、ゾンビ禍で国が滅びかけたが、その災禍を生き延びたオーマン国の亜人族が誇る将兵の質も高く意気軒昂である。
西ヤマト州に雪崩れ込んできたサンガス軍の総勢約30万人についての情報が入ってくる。
軍事国家サンガス王国といえども30万人は総動員数を超えた数である。
サンガス王国内の貴族、王城の守備隊どころか老若男女を問わず、全てを招集してサンガス王国が一丸となって西ヤマト州に攻め込んできたのである。
西ヤマト州攻撃のサンガス軍の総司令官は15歳になったばかりの王太子で、副官に王弟の宰相がついているらしい。
また豚皇太子が逃げ込んだ魔王国から魔法使いの部隊千名程が応援で来ているようだ。
俺はサンガス軍が西ヤマト州に侵入したとの凶報を聞くと、産後の妻達を従えて西ヤマト州に応援に向かう、その数は10個師団約12万人を従えて応援に向かったのだ。
俺達が西ヤマト州に向かって進撃すると、斥候よりサンガス軍の報告が入る。
「西ヤマト州への応援部隊が送られたのを受けたサンガス国軍30万人は戦線を縮小してヤマト州の国境付近まで退いた。」
というのだ。
俺が西ヤマト州に入って見たものは、サンガス軍の侵攻により焼け野原となり、そこに住む人々が殺されて打ち捨てられた姿であった。
サンガス軍の進撃の後は無残であった、村々は焼き払われ、人々の死体は路上に投げ捨てられている。
全ての女性、老人や幼い子供どころか赤子まで凌辱された上に殺されているではないか。
自分達の生れたばかりの赤子と映像が重なる、俺の理性が飛びかけた、殺意が大きく膨らむ、俺の思いに呼応して、守り刀が鞘の中でもパチパチと火花を散らす。
それを副官としてついて来た、ユリアナとセーラの二人が俺の体にしがみ付いて心を落ち着かせる。
俺は廃村となった村々に鎮魂碑を建てて霊を祭り、復讐を誓う。
西ヤマト州を進軍しているうちにサンガス軍に打ち負かされた西ヤマト州の逃げ散っていた州兵が集まり、義勇軍も集まり始めた。
その数は3万人程に膨れあがった。・・・まだまだ逃げ散っていた州兵が集まってくる。
逃げ散った州兵を集め、義勇軍を集めているのはヤマト帝国の将兵学校の工兵隊員育成で鍛えられた貴族達だ。
特に反抗的な目をしていた3人は、サンガス軍が農民の女性を襲っている所を助けたり、逃げ散って人数の少ないグループになった州兵が囲まれて殲滅されそうになっている所を命がけで助け出していたのだ。
ボロボロになった彼らが戻ってきた。
彼らが戻ってきたことにより戦意がさらに高まってきた。
貴族意識の塊だった彼等が
『領民があってこその貴族だ。』
との思いに変わっていった姿だ。
俺は変わった彼らに感動を覚え英雄として、功績賞のバッチと俺が鍛造した短刀を与えた。・・・直ぐ調子に乗る彼等だが信賞必罰は上司の基本!鞭ばかり振っているのは貴族意識と何ら変わらない。
俺はさらに、戦時特別任官を適用して、3人には集めた州兵を指揮できるようにするため、連隊長の地位である大佐に任官したのだ。・・・戦時特別任官、現世では野戦任官と呼ばれるようなものであるが、この世界では、俺が力量があり功績があれば人となりを見て与えるようにしているのだ。
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