第133話 クーデター勃発

 俺の妻の一人となったヤマト帝国の女帝カサンドラの戴冠式と結婚の披露を兼ねてのパレードに使用する馬車が出来上がってきた。

 その馬車はサスペンションの板バネや真円のゴムタイヤ等で乗り心地の良いばかりではない。

 ヤマト帝国の紋章は流石にインドラ大陸随一を誇る大国である。

 その紋章の護符の力は強大なのだ。

 そのヤマト帝国の紋章にインドラ連合国の紋章が重ね書きされて、更に強力な紋章の護符の力が発揮されるのだ。

 そのうえ、蜘蛛型生物の銃器にも耐えられる防弾、防爆仕様の馬車が造られたのだ。

 かなりの重量になるために馬10頭がこれを引っ張る。・・・この世界でも10頭立ての馬車等見た事がない代物なのだ。


 俺と女帝のカサンドラが戴冠式後に戴冠式と結婚のパレードをすると聞き付けて、俺達の父親である退位した元皇帝の廃棄帝も戴冠式ばかりか、戴冠式と結婚の披露を兼ねたパレードにも参加するという。

 廃棄帝の馬車も防弾、防爆仕様に急いで改造する。

 廃棄帝の馬車にはヤマト帝国の紋章を取り付ける。


 紋章の力を高めるために俺ばかりでなく、俺とついて歩いている豪商の双子の兄妹にも重ねて描いてもらった。

 俺とは聖魔法の質・・・(何というか具体的には輝きが)違うのだ。

 俺とカサンドラが乗る馬車にはヤマト帝国とインドラ合衆国の重なった紋章が付けられている・・・(おとりなのだから紋章の護符の力を発動させないようにするか、しないかでもめたのだが、カサンドラの身辺の安全を守るためには紋章の力が発動するようしたのだ。)


 廃棄帝は退位してからは気ままにヤマト帝国内を遊びまわり、前世のテレビ番組水戸黄門のように地方の盗賊や山賊、悪徳役人や悪徳商人をやっつけて回っているようだ。・・・陰ではカサンドラの良き後継人としても頑張っているのだ。

 今までは豚皇太子の母親の皇后に、何かと言って頭を押さえられて年寄り老けて見えていたのが、自由気ままに遊び回り時には悪人退治までやっている為か、見た目が若返り、好々爺で最近ヤマト帝国内外を問わず人気があるようだ。

 廃棄帝がヤマト帝国内を遊び回る際に、廃棄帝の周りを固める10名の陰のような警護員は傑物ぞろいで、巡検士の部隊長に招きたいほどの実力を持つ者達だ。


 女帝カサンドラの正式な戴冠式はパレードの前日にヤマト帝国帝王城の大広間でとり行われた。

 俺がプロバイダル王国の女王セレスの戴冠式を行ってから、もう何度目になるだろうか、各国の訪問使節団も手慣れたもので少ない随行員で駅馬車や運河を利用した豪華貨客船でヤマト帝国の帝王城に集まってくる。

 豪華客船や豪華貨客船はそのまま浮かぶホテルとして、訪問使節団の宿舎になっている。


 各国の訪問使節団やヤマト帝国の百官が居並ぶヤマト帝国の帝王城内にある何万人もの賓客が入れる大広間で女帝カサンドラの戴冠式が行われる。

 武骨に広いだけだった大広間が今では一つの美術館のようになっている。

 大広間の中にはガーディアンゴーレムが鎧の飾りのように置かれ、俺の妻達を模した彫刻の数々や先帝の廃棄帝の肖像画や女帝カサンドラの肖像画等の絵画が飾られている。・・・今まで見たことの無い絵画の数々等に出席者は全員驚いていた。


 戴冠式が始まる。

 大広間の扉が開けられて俺とカサンドラが入室する。

 天井に下げられたシャンデリアに火が灯る。・・・まだまだヤマト帝国内では電気の事業が行われないので明かりの付与魔法が付けられたシャンデリアに明り魔法をかけるのだ。

 その魔力量によって点灯している時間が決まるのでこれはこれで大変なのだ。


 各国の訪問使節団やヤマト帝国の百官や属国の重臣達、そして美しい女官達が文字通り百花繚乱を呈するように居並んでいる。

 真正カンザク王国とプロバイダル王国の最近の衣料、特に染色技術の発展が凄まじく色とりどりの生地や衣装がヤマト帝国に輸出されて美しい女官達を飾っているのだ。・・・大広間の扉の前で、ぼんやりと見ていたらカサンドラに腕を抓られて

「浮気は駄目よ。」

と小声でたしなめられた。


 大広間の居並ぶ客の間をカサンドラの腕を取って進みはじめる。

 歩き始めると直ぐに軍楽隊がヤマト帝国の国歌を奏でる。

 軍楽隊は俺が真正カンザク王国統一時に初めて作り上げたものなのだ。

 今まで楽器の類は、ほら貝のようなラッパとドラム位のものだった。

 それで

『プーオン』

という単音のラッパの合図と、一定のリズムでドラムを

『ドン』『ドーン』

と叩くだけだった。

 それが楽器が改良されて前世の軍楽隊に近い形になってきている。

 軍楽隊は大広間に居並ぶ客たちが初めて聞く勇壮なヤマト帝国の国歌を演奏をしている。


 天才は世の中にいる者で、このヤマト帝国の国歌も、真正カンザク王国統一時に軍楽隊を作り上げた時に、軍楽隊員に宇宙エルフの行進曲を聞かせ、楽譜を見せて行進曲を奏でさせているうちに、自分で行進曲を作ったと楽譜を持ってきた女官がいた。

 その音楽の天才である女官が作った行進曲が正式な真正カンザク王国の国歌になった。

 この音楽の天才である女官を、ヤマト帝国でも軍楽隊を作り上げるために派遣していたのだ。


 今のところヤマト帝国軍楽隊長をその女官が務めている。

 今奏でられているヤマト帝国の国歌は彼女が作詞作曲した。

 ヤマト帝国の国歌が奏でられる中、俺とカサンドラは大広間を進む。


 俺とカサンドラが進んだ先には先帝の廃棄帝が上機嫌で帝王の座に帝王の王冠を被って座っている。

 帝王の王冠は初代から段々と代が変わるごとに一個ずつ宝石が増えて、今では王冠に宝石が鏤められている。

 その中央に輝くばかりの赤い大きな宝石、ルビーが付けられている。

 このルビーは俺が土魔法で土木工事などをしている時に土の中から成分魔法で分類した宝石の原石で、魔法の袋の中に入れていたもの中から特に大きい物を選んだものだ。


 カサンドラは、最初見たかなり大きい原石が研磨されて出来たルビーの宝石を見て

「この程度の大きさにしかならないのか?」

と言って、ガックリしていたが。

 戴冠式前に一度お披露目で帝国の重臣達や女官達に見せたら

「何という大きさだ見たことも無い。」

等と口々に皆に褒められて今ではご満悦なのだ。


 その王冠が先帝の廃棄帝の手でカサンドラの頭に乗せられて、カサンドラが千二百代のヤマト帝国の皇帝で、女帝としては三代目となった。

 俺は戴冠式の間、女帝カサンドラの横に立って大広間を睥睨する。

 俺の、その態度が気にくわないのかクーデター計画を立てた公爵や伯爵などのグループが俺を睨んで見ていた。


 戴冠式後の園遊会が始まる。

 記念品は前回のプロバイダル王国のセレスの戴冠式と同様に俺とカサンドラの姿を描いた絵皿だ。

 その他には爪切りを付けてあげた。

 今までは爪は切るのではなく、猫の爪とぎのように削るのだ。

 前世の爪切りを思い出して試行錯誤しながら作っていたら、妻達が試作品を試して私達も欲しいといっていたので記念品に付けた。

 園遊会に参加していたオーマン国の豪商さんがこの爪切りを売りに出すといって、その爪切りをドワーフ親方や技術者集団に見せていた。


 戴冠式後の園遊会は、以前は暗殺を恐れて訪問使節団に調理師やその料理を運ぶ多数の女官達を連れて来ていたものだが、今回はヤマト帝国の権威や武力を恐れて毒見役の女官のみになったようだ。・・・毒見役の女官達の顔色が悪い。

 その女官達には食物アレルギーが無いかだけ聞いてある。

 食物アレルギーでアナフィラキシーショックを起こされて毒物だ暗殺だと騒がれたら目も当てられない事になる。

 そう思っている間に、カニやエビがだめだと言っていた甲殻類アレルギーの女官がカニ料理を食べようとしている。

 その女官の行動に気が付いた俺の妻の一人、軍服がとても良く似合うクロが女官の食べようとしているカニ料理と同じものを食べて見せて

「これはカニ料理なのね!」

とわざと女官に聞こえるように言って事なきを得た。・・・さすがに軍師的なところはピカ一のクロの行動である。


 訪問使節団員の中には商人も多くなり自国の商品を園遊会の一角に出して、商品の売り買いをしていた。

 やはり、訪問使節団の随行員の中の女官達は商品に群がって、品評会まで始める始末だ。

 プロバイダル王国のセレスの戴冠式では衣類に関心が集まったが、今回はドワーフ親方の率いる技術者集団が作ったペンダント等の装飾品に集まっている。


 女官達が持ち込んだ武骨な金銀のプレートを、ドワーフ親方が率いる技術者集団の手によって一人一点ではあるが、廉価な手間賃で繊細なペンダントや指輪に作り替えている。・・・作り替えられた装飾品だけで今まで身につけていた武骨な金銀のプレート以上の価値があるのだ。

 武骨な金属の塊がみるみるうちに、胸元を華麗に変えるペンダント等に変身していくのだ、おかげで長蛇の列が出来た。


 訪問使節団に随行していた武官達はドワーフ親方達が鍛造した剣を求めて狂奔している。

 今回のドワーフ親方や技術者集団が売り出したのは鉄製の両刃の剣だ。

 この両刃の剣は、剣の重さを利用して押し切るとういうもので、日本刀の研ぎ澄まされた繊細な刃で、その刃に触れただけで切れるという業物ではなかった。

 日本刀だけは俺の技術力にドワーフ親方や技術者集団は追いついていないのだが、鉄製の武器がまだまだ普及していないので高値で取引されている。


 男性と言えば飲み物、酒類だ、未だに各国では珍しい日本酒やウイスキー等がケースで何ケースも販売されている。

 それ等の販売を統括しているオーマン国の豪商も嬉しそうだ。

 右腕としても信頼されてきた長男のセバス・・・(これまで色々と正妻の双子の兄妹を守ったりしたことから正妻から許されて認知されたそうだ。)も忙しそうだ。

 それでも豪商の跡継ぎは、これで三男になった正妻の双子の兄イゼが継ぐそうだ。

 義理の長兄のセバスは努力家なので、それと比較される正妻の三男イゼも大変そうだ!・・・頑張れイゼ‼


 戴冠式後の園遊会で俺を忌々しげに見ていたクーデター計画を立てていた公爵や伯爵は早々に席を立ち、帰っていった。

 式の終わりにカサンドラと軍楽団の奏でるワルツの調べに乗ってダンスを踊って見せた。

 これは女官達の目を釘付けにさせた。・・・悪乗りしすぎたか⁉

 その後にカサンドラ付きの能天気二人娘とも踊って見せた。

 宰相二人の目が怖い!

 それでも今後ダンスが流行していった。

 文明文化の発展の礎となった園遊会であった。


 戴冠式後の園遊会も盛況のうちに終わりをつげた。

 その間に戴冠式後のパレードの準備が進んでいく。

 ヤマト帝国の帝王城の前の広場に二千頭以上の馬が集められている。

 俺とカサンドラが乗るヤマト帝国とインドラ合衆国の重ね書きされた紋章が付いた10頭立ての防弾防爆仕様の馬車が置かれる。

 廃棄帝の乗るヤマト帝国の紋章が付いた同じく10頭立ての防弾防爆仕様の馬車が並んで置かれる。

 翌日戴冠式のパレードの準備が整い始める。

 馬車は紋章の力で守られているので泥棒や火を付けられても大丈夫なのだが、通例だからといって、夜通しで馬車を警備する兵は大変なのだ。

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