第130話 インドラ連合国の発展と伝染病

 インドラ連合国が農業生産性を上げ、畜産や植林業に力を傾注した結果、農業生産品を売る商業活動が発達して住民に余力が生まれてきた。

 いつもこの世界に来た時から思っているのだが、一般民衆は麻袋を被ったような貫頭衣を着て腰には荒縄を捲いている。

 貴族だからと言っても、高価な絹製品を貫頭衣の派生の衣服で、腰に巻いているのが魔獣や獣のベルトで、単色の染め物が多かった。

 地方に行けば、貴族も麻布のような貫頭衣を着て、ベルトもバックル等と言う洒落たものはない、そのまま縛っているのが普通なのだ。


 繊維産業を推し進めるに際して、綿畑や蚕を飼って、綿や生糸の生産に力を入れた、こんな現状なので繊維の販売にも力を入れ始めることになった。

 また未だに単色それも黒か白か灰色、良くて赤色の世界なのだ。

 草木染などをやって見せることによって、染物の世界が広がっていった。

 可愛い色合いに染まっていく。

 カラフルな世界になってきた。

 一部の兵士には敵から明るい色は見えやすいというので不評だが、世の女性には大人気で受け入れられてきた。


 今までは革鎧等の紋章等を刻印する時は、革に焼印や圧力をかけて作られていった。

 その技術を布で使うと、焼印では燃え上がる危険性があり、圧力をかけても戻ってしまう、それを克服したのが染色の技術の発達だ。

 芸術の素養のないこの世界では、染色の技術者は皆無だったが、王立幼年学校で美術の教育を行い、絵画コンクール等を開いて人材を探していった。

 何校もある王立幼年学校の卒業生でも最初の年は、ほんの数名しかいなかった。

 それでも年を経るごとに人数は増えていった。


 最初の年は芸術の素養を身につけようとする者は皆無だった、その原因は、絵画の授業等お遊びと思われたいた。

 それが金になると解った途端、本当にな者である。

 親族が子供達の才能強化のために、貴族は家庭教師を雇入れるのに、一般民衆は絵画教室を探し回るのに懸命になったのだ。

 この世界では、全く新しい文化の創生なので、教師になれる人材も絵画教室を開けるような人材も未だいなかった。・・・そのような教師などがいれば染色の技術者として国が雇入れていたのだ。

 そのために現時点で教師を名乗る者は、デッサン力の無い、まともに絵画を描けることのできない人達なのだ。

 そいつらは授業料という名の高額な金だけ取って逃げ出した。

 冷静に考えればすぐわかることなのに!


 機織りの技術も高度になり、染色技術と同様に布に模様が描けるようにまでなっていった。

 染物や織物によって豪華さが加わったおかげで服飾関係が発達していった。

 王立幼年学校の女性の卒業生には服飾関係は人気の職業になった。

 他国の民族衣装や奇抜な服飾デザイナーが現れ、今までの一般民衆が着ていた貫頭衣に毛が生えたようなものから脱却していった。


 服飾関係が発達すると貴金属関係も発達してくる。

 確かにこの世界でも、貴族や金持ちが貴金属を身に纏っている。

 何方かというと、盗難予防と国が滅びたりした場合の為に財産を黄金のメダルにして身に纏っているのだ。

 ただ、細かなデザイン等の模様の無い黄金や時にはオリハルコンのようなを高価な貴金属を使ったメダルの首飾りを首から下げている。・・・さっきも言ったがバックルの技術も無いのだ。ドワーフ親方の技術者集団もメダル打ちと言って馬鹿にしているので、貴金属のメダルに模様をつけよう等と言う発想もないのだ。

 質より量で、ユリアナやセーラも持っていると言うので、魔法の袋から出して首から掛けてみたら黄金の塊の重さで首がもげそうだった。・・・アア苦しかった!

 実際に一般の人が首にかけたらもげてしまうかもしれない危険な首飾りだ‼


 量から質への転換だ。

 以前アンリケ公国等の真珠を使った首飾りを作ったが、今度は試みにユリアナの黄金の塊のメダルを借りて指輪を作ってみた。

 土魔法で指輪の形に整えて、細かな装飾を施し、以前何度も倒したサーベルタイガーの真赤な魔石を風魔法でカットして宝石として作っていった。

 ユリアナはとても喜んでいたが、他の妻達の視線が痛い。


 妻達が我も我もと金塊の塊と魔石を差し出してくるので、俺も面白がって作っているうちに上達したのか久しぶりに見る指輪制作スキル等がついた。

 そのせいか、一番最初に試しで作ったユリアナの指輪が一番見劣りがするので、

「もう一度作り直して。」

と言って涙目で突き返された。


 別の黄金で結婚指輪だと言って渡したら、また他の妻達の視線が痛い!

 俺が妻達との婚約指輪や結婚指輪を作ってあげたら、その指輪を付けて色々な場所で見せびらかした。

 すると俺に結婚指輪の制作の要望が多数舞い込んできた。

 俺一人では無理だと思っていたところで、俺の指輪を見てドワーフ親方や技術者集団に技術者魂の火がついた。


 メダル打ち等と馬鹿にしていたのが嘘のように色々なデザインの指輪やネックレスを創り始めた。

 イヤリングについては、ベルトのバックルと同じで、イヤリングの金具が思い浮かばないのか創れないのだ。

 運河の巻き上げ機のネジを思い出させながら何とかイヤリング金具を製作して見せた。

 俺は真正カンザク王国の象徴である「双頭の金の鷲」の置物を造って見せたら、他国の国王から次々と注文が入った。・・・金持ちは皆、大量の貴金属の塊やメダルの保管に苦慮していた

 置物の台の裏には紋章を入れて盗難被害に遭わないようにしておいた。


 ギリ金貨はあるのだがそれほど流通しているわけではない、差し出された金塊の何割かを手数料としてもらう形になっている。

 インドラ連合国の職員はギリ金貨やギリ銀貨、ギリ銅貨で支払っているのでそのうち流通するようになるだろう。

 物価と生活環境の関係でギリ金貨2枚程で一家族10人程が、一年間楽に生活出来るのだ。

 半ギリ金貨や半ギリ銀貨等も造らないといけないようだ。


 しかし貴金属類の注文が舞い込みすぎる。

 これは不味いので配下のドワーフ親方が率いる技術者集団に丸投げして、俺はインドラ連合国鍛冶師集団の紋章を入れることに集中した。

 この細かな装飾を施した指輪を作り販売したのだ。

 紋章の力で誘拐されかけたり、殺さりかけたりした婦女子が助かったので、その事実が噂として流れるたびに高価な指輪が飛ぶように売れて行った。

 これによって貴金属の関係が驚異的に発展していった。


 俺の指には婚約指輪も結婚指輪もない、インドラ連合国鍛冶師集団直営の貴金属店の店頭に飾ってある。・・・この指輪は武骨ながら攻撃魔法を付与した指輪にしている。俺の指が巨人族の影響か殊更に太いので、指輪自体が太く大きくなった。これによって紋章や付与魔法の細かな魔法陣の装飾が見ることが出来るのだ。

 それもあってか紋章師や付与魔法の使い手が見学によく来るようになった。


 ヤマト帝国も吸収するような形で発展しようとしているインドラ連合国としては精神的支柱が必要になってきた。

 前世ではタブーだった義理とはいえ妹を勢力拡大のため・・・(決して嫌いではないのだ)結婚してしまった俺が言うのも何だが、道徳的、精神的支柱が必要なことだ。


無駄話だが、ドバイという都市に行ったことがある。そこでは日本人ガイドとアラブ人のガイドがついた。都市観光よりも衝撃を受けた、それはアラブ人ガイドは凄い男前の美男子で、日本人のガイドが説明するにはアラブ人のガイドの顔は、親類兄弟の血縁で結婚して氏族独特の顔を創り上げていたのだ。・・・閑話休題。


 道徳的、精神的支柱としては世界樹教を普及させていこうとしている。

 世界樹教参りが流行り人の流れが起こった。

 ここで一つの問題が起こったのだ。伝染病だ!


無駄話だが、大航海時代に中南米の原住民族が欧米人の持ち込んだ天然痘や肺炎菌によって死滅しかけたのをご存じだろうか、私が訪れた中南米の島のガイドは原住民の多くが肺炎菌でバタバタと死んでいったと説明を受けた。

 現在の中南米では奴隷として連れてこられた黒人が主であり、侵略者のヒスパニック系や原住民族の数は少ないとも説明を受けた。

 今の時代でもコロナやインフルエンザで亡くなる方がいる、その時代の衛生状態を考えると空恐ろしいものがある。・・・閑話休題。


 オーマン国の亜人族特有の病原菌が国の流通とともに人類にも広がりを見せ始めた。

 真正カンザク王国やプロバイダル王国では高度な医療技術を持つ医師や看護師の育成のおかげで何とか危機的状況を回避しているが、隣国となったヤマト帝国は巨大な国家で医療技術も整っておらず、オーマン国のシャーマニズムのような治療を行っているために伝染病の拡大に歯止めが効かない状態になっていった。


 真正カンザク王国やプロバイダル王国の高度な医療技術を持つ医師や看護師の派遣は伝染病が蔓延している現状の状態では出来ない。

 他国は識字率が極端に低いために、医師や看護師の育成も急激にはできないのも現状だ。

 伝染病に即座に対処できる医療ポットの製作が人が多く集まり始めた世界樹教横の病院から、ヒアリ国の王城付近に研究製造技術所を移して急ピッチで行われていく。・・・技術の流出を防ぐためには仕方の無い事だ。


 問題は電源だ。

 俺は三日月島の砂の中に埋もれた宇宙エルフ族の円型宇宙船の上部に展開している太陽光パネルを掘り出すことを決意した。・・・巨大なロボット蟻がいた穴の中の反物質エンジンの発電機は解析も分解も未だ出来ていない。

 三日月島の洞窟内の二ヶ所の港や造船や研究施設を作り上げるために土魔法が使える工兵部隊が働いている。

 彼等工兵部隊を使って三日月島の埋もれた太陽光パネルを取り出すことにした。

・・・流石に宇宙エルフ族の造った太陽光パネルは今研究中の太陽光パネルに比べても同じ面積で百倍も性能が上なのだ。

 計画的に穴を掘って宇宙船が水没しないようにしていく。

 宇宙船も土の中から引きずりだしたいのだが大きすぎて上手くいかない、下手をするとこの島のバランスが崩れて火山が噴火する危険性があるからだ。


 堀だした、この太陽光パネル1枚で千台以上の医療ポットが動かせる。

 医療ポットの方は魔法の箱として知れ渡っているので安心して設置できる。

 太陽光パネルは屋根の一部として傾斜に合わせて設置する。

 これで太陽光パネルは目立たなくなった。

 まずは、インドラ連合国に参加している各国の首都にインドラ連合国国立病院を建設して、太陽光パネルと医療ポットを設置していった。

 インドラ連合国国立病院の敷地内に国立医療大学を建設して医師や看護師の育成に努めた。

 それまでの間は、医療ポットの作業従事者は俺達が派遣したアンドロイドが対応している。

 銀行もそうだが、今回の風土病の大発生による医療を受けるための保険制度も必要になってきた。

 社会制度が大きく変わっていったのだ。

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