第104話 アンリケ公国参加の影響

 俺が率いる武装豪華貨客船や護衛戦艦がアンリケ公国に入港して、アンリケ公国との間でインドラ連合への参加を認める条約が提携される。

 その後アンリケ公国のインドラ連合の参加を祝って、外の中庭で立食パーティーが進む。

 三日月島で捕まえた大きなイノシシを何頭も船から海兵隊員が担いでくる。

 このでかいのを丸焼きで食べようというのだ。

 この大きなイノシシはキングワイルドボアと言う魔獣で、狩ることがほとんど出来ない希少種だそうだ。・・・三日月島には天敵もいないのでウジャウジャいるのだ。このキングワイルドボアの肉は獣臭がなく美味しいのだ。


 また三日月島に生っていた巨大な果物を海兵隊員が三人掛で、いくつも持ってくる。

 アンリケ公国の重臣や女官達も馬鹿げた大きさのキングワイルドボアや果物に目を回して驚いている。

 そのうえ焼き上げられたキングワイルドボアの肉や果物を重臣どころか守備兵や女官、あろうことか匂いに釣られて集まって来た浮浪者を含む公都民にまで振る舞うのだ。

 貴族制度の崩壊に通ずるとアンリケ公国の重鎮達は苦々しく思って見てるのだ。

 娯楽の少ないこの世界では美味い物を食べる、それは貴族制度の特権でもあるからな・・・!


 そんな中庭の片隅で、アンリケ14世とアリサ公爵令嬢がヤシキさんの事で親子喧嘩をしているようだ。

 どうやらアリサさん15歳にしてヤシキさんと結婚したいと言い始めたらしい。

 ヤシキさん21歳でアリサが15歳か。・・・アリサの年齢が前世の日本では犯罪だな。

 しかし、この世界ではよくあることだそうだ。


無駄話だが、現在、(この文を執筆中は)日本の法律では成人以外で、男性は18歳、女性16歳以上からは親の許可がないと結婚できません。2022年から成人の規定が男女とも18歳になるので、18歳以上は親の許可が無くても結婚できるようになるそうです。・・・閑話休題。


 ヤシキさんはインドラ連合国の中将を表す将官服を着ているのだが、インドラ連合国の軍の階級等知らないアンリケ14世から見ると、俺に頼んだ単なるアリサさんのボディーガード程度にしか見ていないようだ。

 俺とヤシキさんは冒険者予備校時代からの仲で、義理の兄なんだけどね!

 インドラ連合国のスカートとズボンの違いがあるが、同じく中将を表す女性将官服を着た俺の妻のアカネさんがニヤニヤして様子を見ている。

 アカネさんとヤシキさんがとてもよく似ていて美人、美男子なんだけど他の人は義理だけど兄妹と思っていない人も多いようだ。

 そんな様子を見ていると、公王の館の外が騒がしくなり、館の警護の人から連絡が入った。


 何でも、近隣のヤマト帝国の領主やアンリケ公国と同じような海沿いの小国、公国がインドラ連合国に参入または協定を結びたいと言って使者が40名程、公王の館の門前に集まっているというのだ。

 特にヤマト帝国の領主の一人が門前に集まった公都民を蹴り飛ばして騒ぎを大きくしているようだ。

 アンリケ14世が門前に集まっている使者達を公王の館の裏庭の別棟に招き入れる、そこで話を聞くことにしたのだ。

 しばらくして、俺とユリアナとセーラ、ヤシキさんも別棟に呼ばれる。


 俺のステータス画面が赤く輝き連絡が入る。・・・他の人には俺のステータス画面自体が見えないのだ。それで、宙を睨む俺を皆が怖がることがある。

 ステータス画面を手に入れた妻達には、俺の持つステータス画面が見えるようなのだ。・・・ただし俺が見せようと思った時だけだ。

 妻達のステータス画面は魔力量の関係からか?俺のステータス画面程の拡張の機能は無いのだ。


 北カンザク地方山岳警戒所から

『帝国の領地軍が集結を始めた。場所はアンリケ公国に隣接する、帝国の領主が保有する領地の中でも、最大領地であるテン・ムスタッチ。』

というもので、他の領主の領地からも続々と領地軍がテン・ムスタッチに向かいつつあるというものだった。・・・電波による無線通信が魔素の影響でできない事が分かった事から急遽、その魔素を使ってステータス画面による無線通信をした結果このように短い文書を送れるようになった。


 アンリケ公国という小国ながらインドラ連合国の傘下に入ることは、ヤマト帝国は真正カンザク王国とプロバイダル王国やヒアリ国、オーマン国の四か国とアンリケ公国によって挟撃される恐れが出来てしまったのだ。

 これに恐れを抱いたヤマト帝国はアンリケ公国に接する最大領主に圧力をかけるためにアンリケ公国に赴かせ、武力示威のために兵を集めて見せたのだ。・・・後日判明したことだが、豚皇太子と皇后を擁する皇后派がこの武力示威を指示したらしいのだ。


 北カンザク地方山岳警戒所からヤマト帝国の帝王城が芥子粒のような大きさながら肉眼で捕らえることができる。・・・かなり距離があるが、これが芥子粒のように見えるだけでもヤマト帝国帝王城がいかに巨大であるかがわかる。

 ここに宇宙エルフ族の高度な科学技術の結晶である高性能の双眼鏡が設置されてからはヤマト帝国の隅々までが見られるようになっているのだ。

 距離的にはかなり遠いが帝王城の付近を歩く人々の顔まで視認できる優れものだ。


 俺はそれだけの情報を得て、インドラ連合国に参加したいと集まっている使者が待つ公王の別宅に向かったのだ。

 公王の別宅には、近隣のヤマト帝国の領主やアンリケ公国と同じような海沿いの小国、公国の使者が40名程の者が待つていた。

 その中でもヤマト帝国でも最大の領地テン・ムスタッチを有するヤマト帝国の領主が自らが使者になり、何やらブツブツと呟き、痩せた体で泥鰌髭どじょうひげを触りながら机に足を乗せて、ふんぞり返って椅子に座っているのだ。・・・どうやらこいつが公王の館の門前に集まった公都民を蹴り飛ばした男のようだ。テン・ムスタッチはアンリケ公国に攻め込む中心の領主だ。


 泥鰌髭のブツブツと言っていた呟きは身体能力を向上の魔法で

「門前に集まった公都民に無駄な施しをしている、こんな国は攻め滅ぼせばよいのだ。

 無駄な施しが出来るほどには金はあるようだし、この国や隣の小生意気な副地方盟主等と言っているカボサン王国と共に攻め滅ぼせば盟主の地位が安定する。

 俺の支配地の拡張だ。」

等と言うものをしっかりと聞いていた。


 もう一人のヤマト帝国の領主自らがやってきた使者は、その様子を苦虫を嚙み潰したような顔をして彼の後ろの椅子に座って見ている。・・・彼もまたヤマト帝国の一領主だ。本心は隠して周りに合わせているのだろう。

 海沿いの小国や公国の使者も国王や公爵自らが使者となり、ヤマト帝国の最大領主の行いを、一人を除いてはほぼ同様に苦虫を嚙み潰したような顔をして見ているのだ。

 その一人である小国の国王は出されたお茶を美味しそうに飲んで、この状況を楽しんでいるようだ。

 アンリケ公国の隣国であるカボサン王国の国王でアンリケ公国14世の従弟にあたるカボサン12世と言う名の人だそうだ。


 そんな人達を眺めていると俺のステータス画面へ北カンザク地方山岳警戒所から、

『ヤマト帝国の最大領主テン・ムスタッチに軍が集結され、行軍の為の食糧までもが集められている。』

との第二報が送られてきた。

 行軍の為の兵糧までもがテン・ムスタッチに集まり始めた。

 これは武力示威というよりはもはや戦争の準備だ!


 どうする⁉戦う以上は完勝を目指さなければならない。

 毒苔に冒されても対応をしないで文明文化を退化させ続けている国々に、科学力の差、力の差を見せつけるか。

 泥鰌髭自身の呟きもある、既に戦いの準備をし決意もしている元凶、泥鰌髭をしごいているヤマト帝国の最大領主の机の上に置いてある足を払う。・・・宣戦布告をされる前に宣戦布告してやる!


 身長2メートルを超える大男の俺が、身長150センチにも満たない小男、この世界では平均身長なのだが、痩せた小男は足を払われて、見事に椅子から落ちて無様にひっくり返る。

 自慢の泥鰌髭を扱いていたために、落ちたはずみで抜け落ちて、半分だけになってしまった。

 泥鰌髭は抜けた髭を見てみじめな顔で最初は驚きでぽかんとしていたが、次には怒りで顔を赤を通り越してどす黒くなって俺を見つめる。


 俺はひっくり返った痩せた小男に

「インドラ連合国に参入する意思のない人は出て行ってもらおうか、それに兵を集め、糧食を集めて戦闘準備に入っているようだが、お手並み拝見させてもらおうではないか。」

と告げると痩せた小男のヤマト帝国の領主は顔を赤くしたり、青くしたりして逃げるように立ち去っていったのだ。・・・覚悟はできていたが、やっちまった事実上の宣戦布告だな‼


 俺は残った国々や地方領主に

「要らない飛び火を避けるため、今回の話は一応保留とする。

 貴公らは速やかに帰国して国を守られよ。」

と告げると、カボサン国王以外は急いで帰ろうとする。

 お茶を飲んでゆっくりとくつろぐカボサン国王が口を開く

「今戻ったところで、ここに来ている国や領土は全てヤマト帝国の敵として認識されている。

 インドラ連合国に参入手続きを済ませて一丸になってヤマト帝国に対抗する道もある。

 如何しますか皆さま。」

と言うものだ。


 しばらくは重いどんよりとした空気が部屋に充満する。

 二割程の国や領主が悩んだ結果、インドラ連合国に参入することになった。

 残りの八割の国家と領主は殆どが使者であり、いそいで自国や自領に戻り国王や領主とも相談の上、中立を宣言して自国や自領の守りを固めるというのだ。

 中立と言っているが、軍備を揃えてヤマト帝国の領主軍に参加するだろう。

 裏切り者はまた裏切る。

 ヤマト帝国の領主軍に入っても先鋒部隊で磨り潰されるのがおちだ。

 小国ぐらいは今までは大軍で踏みにじられた。・・・戦術に突撃ぐらいしかない脳筋集団だな!

 俺達は残った国や領主8名を従えて公王の館の謁見の間に戻る。・・・彼等もびくびくしている。当然だ彼等には科学力の差や突撃以外の戦略、戦術を知らないからだ。

 宴会はお開きだ。

 キングワイルドボア等の食材を運んできた海兵隊員が俺達の子供や豪商の双子の兄妹を守りながら港に駆け戻る。

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