第95話 デビル・フォーレスト大河
アンリケ公国に向かう為デビル・フォーレスト大河を下っている時に人工物のピラミッド型ダンジョンを発見した。
通常人工物はダンジョンになりえないのだ、それを解明するためにそのダンジョンに向かった。
ついでと言っては何だが、アリサ公爵令嬢を始めとする子供達がステータスを上げられるか確認するためにも向かう事にしたのだ。
俺が出発準備を整えてテンダーボートに最後に乗り込むと、その船の中にはいつの間にかユリシスの乗った金ぴか鎧が乗り込んでいた。
少し金ぴか鎧が大きくなっているなと思ったら、何とその中には、この一年で少し大きくなった俺の四人の子供達が乗っている。
俺が駄目だと言おうと思ったら金ぴか鎧が背の破壊神を
『ジリッ』
とわざと音を立てて抜いて見せるのだ。・・・アア怖!親の顔が見たいものだ!
金ぴか鎧が手を鏡にして俺にかざしてくる。・・・そうだよ俺だよ!
破壊神と子供のツッコミで気持ちが折れた俺は金ぴか鎧もつれて行く事にしたのだ。・・・俺はその後の出発のゴタゴタで妻達に連絡するのを忘れていた。
今回は俺だけが子供達の引率者としてピラミッド型のダンジョンにいくことになっている。・・・前世における警察署の道場で小学生に剣道を教える気分だ。
武装豪華貨客船の救命艇、テンダーボートが水面に降ろされて、俺や子供達はピラミッドのある岸辺に到着した。
船を降りる時にアリサ公爵令嬢や豪商の双子の兄妹を金ぴか鎧が肩に被き上げて降りる。
流石に船長見習いの子供達は風魔法を使って身軽に川岸に降り立った。
俺達の行く手を阻むような魔獣や魔獣植物はいない。
それどころか魔獣植物等は慌てて両脇にどいて恭しく首まで垂れているのだ。
遮るものが無いのでピラミッド型のダンジョンまではすぐ着く事ができた。
ピラミッドと言えばスフィンクスだ!
ピラミッドの入り口を守るように二頭の石の像のスフィンクスが、俺達を待ち受ける。
その二頭のスフィンクスが立ち上がる。
俺が対応しようとする前に金ぴか鎧が手に持った破壊神で二頭とも、あっという間に破壊する。
破壊神で破壊すると原子の塵になるのだが、不思議なことに破壊されたスフィンクスは、動かなくなった石の像として元の位置に戻っているのだ。
その時に俺のステータス画面が輝いた。
子供達のレベルアップを知らせてきたのだ。
アリサ公爵令嬢や豪商の双子の兄妹も船長見習いの子供達までもがレベルアップしたようなのだ。・・・ここは外だぞ!この付近が一種の結界か?
二頭の動かなくなった石の像のスフィンクス・・・(俺が睨むとダラダラと汗を流しているではないか!)の間を通って入り口の門前に立つ。・・・スフィンクスから
『短時間で二度も破壊されると再生できなくなる助けてくれ。』
と思念が届いた。
武士の情けだ見逃してやろう!
ピラミッドの入り口の門が独りでに開く、ピラミッドの中には
『銀色の鎧と破壊女神』・・・メッセージが頭の中に流れたのだ!
銀色の鎧が椅子に座りその手には薙刀が握られている。
破壊女神は雷女神と同じように薙刀の形をしているのだ。・・・神話に出てくる天帝が鍛えた刀剣類と防具に違いない。
銀色の鎧が座っている椅子の左右には、ピラミッドの入り口を守っていた石の像のスフィンクスよりも一回り程大きな石の像のスフィンクス二頭が待ち構えていたのだ。
金ぴかの鎧が今度も破壊神を手に持って前に出る。
今度の二頭のスフィンクスは動きが速い。
金ぴか鎧の振り回す破壊神を上手くよけながら、反撃してくるのだ。
子供にばかり働かせるわけにはいかないので、俺も守り刀の雷神を抜き放ちスフィンクスに切りかかる。
雷を纏った刀身がスフィンクスの脚を切り飛ばす。
脚を切られたスフィンクスがバランスを崩したところを、金ぴか鎧の破壊神がとどめを刺す。
残る一体も同様にして仕留める。
二頭のスフィンクスが、門前のスフィンクスと同様に動かなくなった石の像となり元の位置に出現したのだ。
今度もスフィンクスを睨むと汗を出して、許しを請う。・・・一度ならず二度までも武士の情けで許してやった。
残った破壊女神を持った銀色の鎧が椅子から立ち上がる。
俺と子供達に緊張が走る。
ところが、銀色鎧が俺と金ぴか鎧の前に進むと片膝をつき、破壊女神を後ろに置いて臣下の礼をとる。
銀色鎧と破壊女神から
『まだ見ぬ主が産まれるまで、貴方方について行きます。』
というメッセージを思念で受け取る。
その時に俺のステータス画面が輝いた。
二度目の子供達のレベルアップを知らせてきたのだ。
今度もアリサ公爵令嬢や豪商の双子の兄妹も船長見習いの子供達もレベルアップしたようなのだ。
テンダーボートで船に戻る。
後ろからついて来た銀色鎧と破壊女神には驚かれたが。・・・妻達には
「アリサ公爵令嬢や豪商の双子の兄妹それに船長見習い子供達を連れて行くと聞いていたが、金ぴか鎧に乗った子供達まで連れて行くとは聞いていなかった。」
と言われて怒られた。・・・連絡しなかったのは俺のミスだが、連れて行ったのは金ぴか鎧に脅されてとは言えないよね!
俺は妻達に怒られているのに、金ぴか鎧と銀色鎧が仲良く船縁で夕陽を見ていた。・・・何となく理不尽で腹が立つ!
当初の子供達のレベルという目的の達成の他に銀色鎧と破壊女神を手に入れたのだからまあいいか⁉
その後もデビル・フォーレスト大河を航行中に何度かダンジョン攻略に向かう。
アリサ公爵令嬢の護衛役のヤシキさんや豪商の双子の兄妹の義理の兄が心配してダンジョン攻略についてくると皆のレベルアップが出来ないようだ。・・・大人は駄目ね!等と子供達に言われそうだ。
俺の他に妻達や金色鎧・・・(金ぴか鎧と呼ぶと怒るのだ。)銀色鎧でダンジョン攻略に向かうので安全なので、ヤシキさんや豪商の双子の兄妹の義理の兄には遠慮を願ったのだ。
皆かなりのレベルアップがはかれたようだ。
ダンジョン内のアイテムも魔法回復薬や体力回復薬のポーション系が多数手に入ったが俺には不要だ。
それでも今後、巡検士部隊を始めとする俺の部下達に必要になるので、種類別に魔法の袋に入れておく。
アイテムの武器や防具もろくなものが無い。
青銅器の刀剣や鎧はまだましな方で、石の剣や木の盾など歴史の資料にしかならないような奴がゴロゴロと出てくるのだ。・・・これでもこの世界では地方に行くと使われているというのだ。錆びた鉄の刀剣類や鎧も出てきたが、アリサ公爵令嬢の住む地域では地方豪族に贈り物として渡せる品物だと言う。
同行していたドワーフ親方も技術が毒苔の影響で抑制されて石の剣や青銅の武器が使われているのに嘆いている。
それに錆びた鉄の刀剣類を磨く技術も廃れたようだ。
船の艤装作業中にダンジョンで見つけた錆びた刀剣類を磨いたがその時はドワーフ親方達は艤装作業等で忙しかったのか見ていなかった。
それに武器類、大砲類の手入れについて説明している方が長かった。
今回は、それでドワーフ親方達の前で試しに砥石を使って錆びた刀剣類を磨いて見せたら驚いていた。・・・ドワーフ親方達の目が怖い。確かに鋳つぶして新たに刀剣類を鍛造し直した方が良いものができるが、手入れという事も考えると刀剣類を磨く技術も必要だ。早速ドワーフ親方達が磨き始めた。完全な赤鰯は磨いても無駄だとわかったようだ。ため息をついている。・・・幸せが逃げるよ!
錆びた鉄の刀剣類でも贈り物になるのは磨く技術が無いので当然なのだろう。
今回発見されたダンジョンから持ち帰った錆びた刀剣類は元の品質も良く、そのうちの何本か磨き上げたら今度もまたアリサ公爵令嬢に、地方豪族どころか国王や地方領主への土産物になると言われた。・・・国王には俺が鍛えた日本刀を送るつもりだったのだが!
俺とすれば、今回の船旅の間にダンジョン攻略で得たギリ金貨の方がよっぽど有用だと思う。
それらの金は国庫に入っていくのだ。・・・国庫といっても俺の魔法の袋の中だが魔法の袋の便利機能の一つに個数が分かることだ。魔法の中のギリ金貨の数が天文学的な数字になっている。
これだけのギリ金貨があっても、今回の武装豪華貨客船や護衛戦艦の造船にかかった費用がとんでもない額なのだ。
武装豪華貨客船や護衛戦艦のみにかかった造船の費用は艤装作業中に俺達がダンジョン攻略で得て金をあてがった。
武装豪華貨客船や護衛戦艦に使われた鉄は俺達の魔法で製鉄製錬して作業をしたのでそれほどではなかったが、武装豪華貨客船や護衛戦艦の二艘の船を造船するための港湾施設の新築や作業員の日当の支払い等があるのだ。
それにデビル・フォーレスト大河を航行中における河底に船がつかえた場合の浚渫工事の支払い等もあるのだ。
今のところ浚渫工事は行われてはいない。
浚渫工事用の船はカンザク大河でも使ったことがあるので、この船が護衛戦艦に引かれて後ろを航行している。
これを見ると船長の育成は急務だと思う。
浚渫工事用の船には当番制で船長見習いの子供達が乗り込んで操船技術に悪戦苦闘しながらも取り組んでいる。
今後の武器開発などにも金がかかる。
インドラ連合国国内の道路網や運河網の構築整備や維持費、連合国内の学校建設等と教養費どれだけあっても足りないのだ。
インドラ連合国の支出額は豪華貨客船や護衛戦艦の建造費も含むと今年はヤマト帝国の支出額の三倍以上はあるのだ。
ダンジョン攻略をしながらでも、デビル・フォーレスト大河の流れもあり順調な航行であった。
予定どおり魔の森のドックを出港してから五日程でデビル・フォーレスト大河の河口付近に着いた。
俺は最後のデビル・フォーレスト大河領域の調査を空から行う。
大河からは直接見えないが、空の上からでは鬱蒼と茂る木々の間から遺跡が見えたのだ。
建物はかなり傾き壊れて蔦が絡まっている。
古代の英知が眠っているように思えた。
調査をする事にした。
ダンジョン探索ではない遺跡調査なので、大人である海兵隊を中心に探索部隊を編成する。
武装豪華貨客船と護衛戦艦に乗る海兵隊員42名づつ双方で二グループ84名の海兵隊員が降ろされたテンダーボートに乗り込んだ。
遺跡調査の開始だ。
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