第81話 新たなギルドの成立
世界樹教本社前に出来上がった門前町のみやげ屋ばかりではなく、オーマン国の世界樹教の分社前に出来上がった門前町のみやげ屋に対しても商業ギルドから金銭を要求された。
俺はそれを拒否し全ての門前町のみやげ屋をインドラ連合国直営店にしていった。
また工業ギルドも甘い汁を吸おうと、俺が真正カンザク王国で運河用の貨客船を造船した時も、何処で聞きつけたのか横槍を入れてきたことがあった。
工業ギルドの要請の受け入れは、この世界に今までなかった造船の技術が他国に漏れるかもしれないので、国の事業だということで要請を拒否している。
今は大量の鉄製の農機具や武器類の製造で、村の鍛冶屋が発展して大きな鉄工所となり、それらを各国の首都の郊外に集めて工業地帯をつくりあげ、造船と同じように工業ギルドが手出しできないようにインドラ連合国が製品を受注する形を作り上げていった。
工業地帯の鉄工所は本当に内航海運業用の貨客船の造船も含めて仕事は山ほどあるのだ。
オーマン国から俺について来たドワーフ親方は、全国に散らばる他のドワーフ族の中心的な人物であり、以前から工業ギルドとも対立していた。
ドワーフ親方も何かと小銭を掻っ攫って行くだけで、仕事を回してもくれない工業ギルドが嫌いなのだ。
既存の商業ギルドや工業ギルドは国とは独立した機関であり、このインドラ大陸全土にネットワークを持ち商業ギルドは商人の認証や買取、売買の仲介等を行い工業ギルドはドワーフ族等の鍛冶師の認定や買取や仕事の斡旋を行うとしている。
ところが機能していないのだ、全土にネットワークを持つと言いながら、流通システムが出来ていないので、商業ギルド自体が品揃えの悪い地方の商店のようなありさまであり、工業ギルドも仕事の斡旋をするといっても現状の社会体制や住民の奇病ともいえる知能の衰えのために技術力も低下して、工業ギルドが村の鍛冶屋から手数料をもらって生活している寄生虫のような存在に成り下がっているのが現状だ。
インドラ連合国の商業ギルドや工業ギルドは、国に税金も払わないで、国から直接回ってきた仕事の上前を撥ねるだけの存在だ。
運河や真っ直ぐな広い石畳で舗装された道路の利用により、大量に商品等が送れるようになった。
物流の発展は、商業の発展にも寄与していった。
商業が発達して儲けが出るようになると、またしても商業ギルドがしゃしゃり出て、何かと金をむしり取ろうとする。
金を俺からむしり取れないと思ったとたん、商業ギルドは馬鹿をした。
俺の庇護下にいるオーマン国豪商アブツーラの双子の兄妹に対する誘拐未遂事件が発生したのだ。
オーマン国豪商アブツーラは下手な国家よりも金持ちで・・・(俺がオーマン国王城の地下ダンジョンで大量のギリ金貨を手に入れるまでは彼がインドラ大陸一の金持ちだった。)、彼はオーマン国の財務大臣という立場にもあるのだ。
彼はインドラ大陸全土に旅商人を派遣して商売をしていることから、俺と敵対関係になってきた商業ギルドとは微妙な関係になってきていた。
彼は、俺との関係もあって商業ギルドとは煮え切らない態度で接するしかなかったのだ。
商業ギルドは、俺の庇護下にいる豪商の双子の兄妹を拉致して、身代金替わりに、豪商と無理やり今後もオーマン国では商業ギルドを認定させ協定という名の恒久的な契約を結ぼうというたくらみのもと行われた。
この豪商の双子の兄妹の拉致事件については、真正カンザク王国の魔の森にある俺達の住む湖畔の館から久しぶりに実家のあるオーマン国に船旅に帰ろうとしたところを襲われたのだ。
今回は湖竜や大亀を使わないで、三本マストの大型帆船で航行できるかの実証実験の航行の際におきたのだ。
双子の兄妹は船縁で流れる景色を見ていたところを商業ギルドに雇われた十名程の半グレ集団が襲いかかってきた。
妹のイルゼは兄のイゼの前に立って俺が鍛えた懐剣を持って身構えた。
襲撃者達のにやけた顔は直ぐに終わった。
実証実験の航海と双子の兄妹の安全の為に配属されていた巡検士部隊が駆けつけて襲撃者達を逆に包囲したのだ。
巡検士部隊は船のボーイや水兵に身をやつしているので、あっという間に襲撃者を包囲することができた。
襲撃された場所は最初の頃に造られた特に細くなった運河の部分で、船から直接陸に逃げ出すことができるような場所を選択していた。
襲撃者たちは舷側から縄梯子を降ろす。
降ろされた場所付近には何台かの馬車が待ち受けていて、その降ろされた縄梯子を鉤爪で引掛けて馬車に固定した。
襲撃の騒ぎを聞きつけ休憩していた、双子の兄弟のボディーガード役の元傭兵部隊の隊長さんも直ぐに駆けつけて、周りを固めた巡検士部隊の隊員に
「手を出すなこれは俺の得物だ!」
と言って瞬く間に十名程の襲撃者を見事に峰打ちで倒して捕縛していった。
俺と彼との最初の出会いでは、オーマン国の豪商宅前における熊族の守備隊が襲って来る際に見せた、攻防戦での用兵の上手さに感心させられたものだった。
双子の兄妹のボディーガード役で俺達と接することによって、武術の必要性と彼自身の力の無さに気が付いたようだ。
最近では俺との剣道の稽古によって力をつけていたのだ。・・・今回の襲撃事件で、元傭兵部隊の隊長さんが持っていたのは俺が与えた日本刀だ。
この日本刀だけはドワーフ親方をして悔しがらせた業物である。
貪欲に日本刀の鍛造にドワーフ親方を始めとする技術者集団が取り組んでいるが納得の一振りが未だに出来ないで苦しんでいるのだ。
無駄話だが、日本刀の形状からして解る通り、切るには特化しているが、峰打ちで倒すのは大変なのだ。
そのうえ目釘という刀身と柄を繋いでいる物は鉄製の釘ではなく竹製なのだ。
目釘を
『飛ばす』
とか
『折れる』
等という言葉が解ると思う。・・・閑話休題。
双子の兄妹の義理の兄貴のセバスも奮戦して、元傭兵部隊の隊長さんが取り逃がした襲撃者のリーダーで一番の凄腕を一刀のもとに切り捨てたのだ。
セバスも商館で働く忙しい中でも勉学や武道に力を入れているのだ。
毎日深夜に黙々と俺が教えた居合の
『前』
という技を一人黙々と抜いている。
幕末から明治時代の幕臣で剣・禅・書の達人と言われる山岡鉄舟が
『一刀は万刀に化し万刀は一刀に帰す』
と言う言葉を残している。・・・自得は難しいが天賦の才能と日々の鍛錬だな!
見事のものである。
舷側の縄梯子を伝って襲撃者の仲間もよじ登ってくる。
こいつらは巡検士部隊が葬り去って行く。
馬車に乗っていた襲撃者は馭者役を含む数名の者で、増援のつもりで船に縄梯子を登ってきた者達で全てだった。
襲撃者のリーダーや船に後から乗り込んできた馭者役等は切り捨ててしまったものの、捕らえられた襲撃者達から豪商の双子の兄妹を襲った黒幕は商業ギルドだと判明した。
襲撃者も一人だけなら口を割らなかったかもしれないが、揺さぶりをかけたら半グレ集団で仲間意識も無かったために、お互いが疑心暗鬼になって事実を話し始めたのだ。
俺が管理する船の中で襲ったのは失敗であり明確な俺への敵対行為であり、この行為により商業ギルドと豪商との関係は絶縁状態になっていった。
俺はオーマン国の豪商の双子の兄妹の拉致未遂事件等その汚い手口に堪忍袋の緒が切れて、既存の商業ギルドや工業ギルドとの対立を激化させ潰すことを決意したのだ。
当然オーマン国の首謀者の商業ギルドのギルド長は捕らえられて、商業ギルドは閉鎖されたのだ。
俺はそれに伴って、インドラ連合国国立の商業ギルドや工業ギルドを立ち上げていくことにしたのだ。
これによって、インドラ連合国内の商人自体の承認と登録は勿論の事、新たに出来た物の商標登録などを行って商品の権利の確保と、鍛冶師のドワーフ族や人族の商人の利益確保をインドラ連合国の商業ギルドや工業ギルドが行っていったのだ。
これにより、脅しをかけてまで手数料を巻き上げようとした今までの商業ギルドや工業ギルドが廃れていき、インドラ連合国国立の商業ギルドや工業ギルドの力が増すことになってきた。
インドラ連合国としても、商人や鍛冶師が既存の商業ギルドや工業ギルドへの無駄な支払いが無くなり、今後は一定の税収が見込めるようになってきた。
今回の件で、インドラ連合国以外では未だに
インドラ連合国間同士の物流が円滑に行われる交通網の発達が重要な課題となってきた。
特に内航海運業が盛んになるのは良いが、運河を航行するために湖竜や大亀を魔法の力で手懐けることができる船長の育成が課題になってきた。・・・帆船に切り替えても、この場合は船長だけでなく乗組員の帆船の操船技術の習得に時間がかかりそうだ。
俺の妻達で国家元首である女王の地位にある者以外で船長をしているが、限界に来ている。
今回のような行事がある時は船長を務めれるほどの人材が無いため運休が続くことがあるのだ。
王立幼年学校魔法分校の生徒で魔力量があり、精神感応能力がある者を士官学校に集めて船長の育成をおこなった。
今後は士官学校の船長課程学科を設けていく。
その後も教育が必要なので士官大学校にも同様に船長課程学科を設けた。
インドラ連合国全体でやっと幼い船長(14歳から15歳ほど)見習いが10人程育成できた。・・・しばらくは俺や俺の妻達の副長として側にいる事になった。
それ以上の年齢になると、魔力量の増加が見込めない。
何せ、俺が真正カンザク王国やプロバイダル王国を統治し始めて2から3年にしかならないため、高学年の子供達の魔力量を増加しようとしても期間的に無理だったのだ。
物流については、内航海運業等の航路に関しても、他国では湖竜や海竜等の海中生物を手懐ける事ができないので真正カンザク王国の独占的な事業だ。・・・大型帆船での航行もあるが、それはオーマン国からプロバイダル王国の間のロックフィルダムや
インドラ連合国内を流れるカンザク大河は水が割と澄んでおり、巨大ワニが駆逐されて、水生生物で怖いのは水スライムぐらいしかいないのだが、ヤマト帝国を流れるインドラ大河は水が濁っていて何が住んでいるか分からないほどの危険な大河だった。・・・当然海はもっと危険だ!
大型帆船の技術もインドラ連合国の登録の技術にしてある。
他国には大型帆船や閘門等の技術を許可なく真似をすると莫大な使用料を取ると通達してある。
それでも他国で帆船を真似て造ったが、航海に出た途端に転覆したり、中途半端な大きさで水生魔獣に襲われて船は破壊され、乗組員全てが帰らぬ人となる等の事件が頻発して、他国での帆船造りは頓挫していったのだ。
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