第39話 子供の誕生と魔の森の帝王改め世界樹
俺が19歳になった年に、ユリアナとセーラの二人が俺の子供を産んだ。
食肉植物のアオイとの間にすでに子供が6人??いるが、人の子供はこの世界にきて初めてだ。
前世では子供は2男1女をもうけていたが、19歳では結婚もしていなかった。
ユリアナは男の子、セーラは女の子と二人の子供がほぼ同時に産まれた。
湖畔の館から子供が産まれたと二本の紅白の花火が打ち上げられたのを見て転移で戻ったのだ。
俺が転移で湖畔の館に飛んだのは、あまりにも大男の俺が出産前の二人の部屋の前を熊のようにうろうろするので、産婆さん代りの皇后様と宰相の奥さんに魚釣りでもしていろと、モンと一緒に湖竜の背に乗せられて湖に出されていたのだ。
前世での子供の誕生は設備のそろった、わりと大きな産婦人科医院での出産であり安心していたが、この世界での出産は母親も子供も命がけなのだ。
それでユリアナとセーラの二人の横で、御包みに包まれて一緒に眠る子供の顔を見て無事に生まれてホッとして涙がでた。
無事に生まれた二人の子供を見ながら名前を付けた。
男の子は後世、統治大帝、英雄ユリシス1世として名を残した。
女の子の名前は聖羅、セイラで聖魔法を得意として聖女として有名になったのだった。
しばらくは二人の子供を見守る日々が過ぎた。
問題が生じた。
日が経つにつれて子供が大きくなり、子供の状態がわかってくる男の子の目が見えない事に気が付いた。
地下室に設置した医療ポットにユリシスを入れて祈るような気持ちで結果を見たが、結果はやはり目が見えないと判定された。
聖魔法が使える、俺や俺の妻達で目の治療して見るが、視神経が何かモヤモヤとしたもので遮断されているのだ。
モンとクロが同時に
「呪いだ!
魔王とワニが呪った結果だ!
今まで倒したワニについては鎮魂祭をとり行うこと。
問題は魔王だ、魔王は討伐しなければ呪いは解けない。」
と告げる。
俺はすぐさま、ワニにより少年五人が亡くなった場所に大きな鎮魂の石碑を作った。
超巨大なワニの剥製がこれ以上傷付けられないようにするため、その周りを建物で覆い。
献花台を作ってワニの鎮魂に努めた。
そこまですると視神経の遮断しているモヤモヤしたものの一部が解け、ユリシスの視力がごくわずかであるが戻った。
そんなことをしているうちにクリスから連絡が入った。
転移装置が出来たというのだ。
この出来た転移装置の設置場所をどこにするかだ。
この世界は王制で、中央集権国家だから当然真正カンザク王国の王宮に設置することにする。
特に緊急時には部隊を展開するのに使うことを考えれば王宮等でなければならない。
今のところ転移装置の設置場所の候補地は魔の森の湖畔の館、真正カンザク王国の王城の建設予定地、南カンザク地方のオアシス城壁都市、城塞都市と地方王城の五か所だ。
転移装置の技術の流出を防ぐには、まずは妥当なところだ。
将来的には一般庶民にも使用することが出来るようにしなければならないが本当に先の話だ。
転移装置には大量の魔石が必要だ。
俺がこれまで倒した魔獣の魔石で巨大ワニの真黒な魔石を除く全てを供出したところ、2年から3年の間は五か所に設置した転移装置のすべてがまかなえた。
今後の事を考えるともう少し魔石が必要だ。
転移装置の設置のため開発者のクリスと転移で行こうとしたところ、赤い顔で子供ができたみたいなので転移ではいけないと言われた。
宇宙エルフは子供ができにくい体質であり、人工授精でもほとんど成功しないというのに、子供が出来た事はとても嬉しいことだ。
開発者のクリスが動けない今どうしょうと思っていたらモンも妊娠したという。
モンも木のゴーレムと青龍の融合体であり、子供ができること自体がほとんど不可能な状態であり奇跡としか言い表せられないことだった。
そこでなにはともあれ、宇宙エルフ族のクリスや世界樹の門番だったモンが妊娠したことを魔の森の帝王、宇宙エルフ族や世界樹の所へ報告に行くことにする。
そのついでと言ってはなんだが転移装置を魔の森の帝王の所にも設置する事にした。
クリスやモンは、初めての妊娠という事であり安静のため、湖畔の館に残る事になった。
俄然、皇后様や宰相の奥さんがやる気を出した。
それにベックさんの奥さんのベルゼさんも第三子の男の子をもうけたようだ。
アオイが魔の森に行く前に、その手助けとしてガーディアンゴーレムをもう8体作ってくれないかとお願いされた。
アオイの体内には種子が8個できたそうだ。
それを聞いて、ユリアナとセーラだけでなく、王女改めセレスと騎馬軍団長改めクロやクリスとモンからも作ってあげてと懇願された。
まあ~、奥さん達からお願いされると嫌とは言えないが。
クリス達が滝の裏の家で8体のガーディアンゴーレムを造り、それを魔の森の帝王のところまで持って行って設置する事になった。
転移装置とガーディアンゴーレムの設置作業についてはアンドロイドのクリフさんとクリスティーナが設置することになった。
魔の森の帝王の元の名称は世界樹であり、以前はその木の下にエルフ族が住んでいたのだ。
エルフ族とすれば聖地ともいう場所であり、出来ればその場所に再度エルフ族を集めて住んでもらいたいのだ。
エルフ族は世界樹を大事にして元始宗教ともいうべき形態を行っていた。
これを機に魔の森の帝王を世界樹教の聖地としていくことにした。
ただ中心地である世界樹と融合している宇宙エルフの宇宙船の元まではいかせないようにする必要がある。
いまだ元の世界では中世以下でしかない文明文化のレベルが宇宙船が飛ぶ超未来文明文化のレベルになってしまうのだ。
識字率が低く、それに合わせて精神文化が低いため急激な高度な文明文化への改革は危険なのだ。
ことわざにある『豚に真珠』と言うよりも『気違いに刃物』と言った方が分かりやすいかもしれない。
内航海運業の発展のためカンザク大河の支流を浚渫して、真正カンザク王国の王宮予定地からカナサキ村を通って魔の森の湖畔の館まで運河が出来上がった。
湖畔の館から魔の森の帝王の元まで約2400キロの距離を大河が流れているので、王城建設予定地から魔の森の帝王の元まで結ぶことが出来た。
この運河と大河を利用して、湖竜に船を曳航してもらい魔の森の帝王の元に向かうことにした。
前回造船した百メートル級の貨客船は海運業の発展のため、真正カンザク王国の王宮予定地と南カンザク地方のオアシス城壁都市の間を定期船として運航している。
それで今回カンザク王国の王城付近の造船上で150メートル級の貨客船を造船した。
造船した貨客船は500人以上の乗客がゆったりと乗れる豪華貨客船仕様にしたのである。
その豪華貨客船での初航海が魔の森の帝王改めて世界樹のもとに行くということを聞きつけてクリスもモンもこれならお腹の子供にも大丈夫だと、皇后様や宰相夫婦、近衛の師団の団長とも語らってついて行くと言い出したのだ。
いつも、居残りのベックさん家族も船旅がして見たいとの事でついて行きたいとお願いされた。
俺の残った奥さん達も船旅を楽しみたいとついて来た。
貨客船は下部に貨物室を作り、上部は客室などの三層の構造で、広い食堂兼リビングと客室はバルコニー付き客室250室とスイートルーム4室でプール付きになっている。
馬で1ヶ月だがこの貨客船では10日程の行程だ。
貨客船から魚を釣たり、プールで泳いだり、午後の紅茶を楽しみながら音楽を聴いたりと優雅なひと時を過ごさせてもらった。
目的地の世界樹のすぐそばに大きな湖がある。
そこまで湖竜が豪華貨客船を引っ張ってくれた。
湖竜はその場所が気に入ったのか、夏のバカンスの避暑地として過ごすと言っていた。
豪華貨客船の船着き場を作り、旧カンザク王城の城下街にあった空き家を船着き場の横に船宿もかねて移築する。
基礎を土魔法で行い、あっという間に魔法の袋から大きな空き家が出てきて移築する様は見慣れた人でも不思議な感動を覚える。
豪華貨客船の貨物室から何台もの組み立て式の馬車が降ろされ、組み立てられていく。
俺は軍狼を呼んで、野生の馬の集団を集めてきてもらった。
俺が馬に乗って先頭を進む、アオイが命じると魔の森の魔獣植物が道を開ける。
馬車二台が並んで走れる広々とした道が出来上がる。
道路の両脇には移動した魔獣植物が並び木陰を作っていく。
土魔法が使える俺や妻達が石畳の立派な道路が船着き場から世界樹の元まで一直線に延びていく。
俺達の乗る馬や馬車が進むにつれて、湖からでは大きな単独峰としか見えなかった世界樹が、一本の大きな大きな木となってくる。
更に進むと世界樹の大きさがわからなくなり、その木の枝の影の中にはいる。
一人の真白なドレスを着て薄いショールを羽衣のような肩に掛けた長い金髪で美しく綺麗な女性が目の前に現れる。門番さんだ。
門番さんとしばらく思念で話す。
門番さんのみが魔の森の帝王、世界樹の中に入り、しばらくすると宇宙エルフの船長を連れてくる。
すこしお腹の目立ち始めてきたクリスとモンを宇宙エルフの船長と門番さんが見つめている。
話し合いの結果。
魔の森の帝王を世界樹と呼び改め、この場所に世界樹教の本宮を設置することを許可された。
本宮の付近にエルフ族を集めて集落をつくることについても許可が与えられた。
貨客船を使った内航海運業では世界樹教信徒の往復だけでは利益が上げられないことから、魔の森は樹木の大量産地であり、樹木の伐採は植林を計画的にすることも認められた。
また、優良な鉱山も多数存在する事から、計画的に鉱山の開発して、環境整備をすることで認められた。
今後、材木や鉱山物質の集積場や倉庫群、工場が世界樹の側の湖の周りに建てられ船着き場が拡充されていくのだった。
今度は門番さんから、不法な侵入者を防ぐため世界樹の周りには結界が張られているが、目に見える形の結界、土塀等を作って欲しいと言うものであった。
一辺の長さが100キロの土塀を土魔法が使える俺や俺の妻達等で作り上げていく。
その間に宇宙エルフの船長さんに連れられて、クリスとモンが世界樹の中に入っていった。
アオイに頼まれていた8個の種子に種付けをする。
1週間もすると手?葉や足?根が出来て、黒い目が見える。
その頃には本宮予定地の側に、旧カンザク王城の城下街にあった空き家を社務所の代りに設置する。
その屋根の上に太陽光発電のパネルが設置されてガーディアンゴーレムが8体の受電版の上に乗る。
ガーディアンゴーレムを始動させると8個の小さな食肉植物がそれに乗り込む。
ガーディアンゴーレムの体表に蔦の紋様が絡みつくように浮かび上がる。
彼らには、この場所を門番さんと共に守ってもらうことになる。
俺はアオイに千体ほどの食肉植物を呼んでもらい、世界樹の周りの土塀の結界の中に入ってくる侵入者を排除してもらうことにした。
土塀の内側や外側の周りには魔獣植物等が集まり生垣のようになっていった。
世界樹の周りに造った一辺百キロにも及ぶ土塀の中は魔獣や魔獣植物の保護地区になった。
彼ら魔獣植物においても世界樹は魔の森の帝王であり、聖地である。
どことなく選ばれた食肉植物も誇らしげであり、衛士のように凛々しく見える。
一応、仮の本宮も建てておく。
本宮の建築はこの世界では本格的な宗教施設なので巨大で豪壮なものになる予定だ。
アオイがその本宮に負けないほどの庭園を造ると張り切って食肉植物や魔獣植物を集めている。
船着き場から世界樹までの間の樹木の街道を更に整備し、世界樹の木陰の中をガーデニングしていく。
アオイはこの地を本拠にして住んでいきたいと言ってきたのでそれを許可した。
一ヶ月の程の間世界樹の社務所で過ごした。
社務所の中には転移装置を設置してガーディアンゴーレムの設置場所も転移装置を守るように配置した。
これからしばらくの間は宇宙エルフ族の医師や技師の女性四名程が巫女を務める事になった。
今後は集まって来たエルフ族の女の子が巫女見習になるそうだ。
そろそろ山々が色づき初めて少し寒くなってきた。
湖竜が寒くなって来たので、ここにはもう居られない南のオアシス城壁都市に戻りたいというので、ガーデニングで忙しいアオイ達を残し真正カンザク王国に戻ることになった。
今度も10日で真正カンザク王国の王宮の建設予定地に戻った。
ここで湖竜と別れて、俺はクリスとモンから宇宙エルフ族から得た知識でエルフ族が隠れ住むと言われる北カンザク地方に向かうことにする。
真正カンザク王国の王宮予定地に戻って来て、すぐにセレスとクロも妊娠しているようだと言われたのだ。
それに、産まれたばかりの赤子の面倒を見るのに忙しいユリアナとセーラの二人も湖畔の館に残りたいと言う。
寒さには湖龍よりも幾分強い大亀が豪華貨客船を引っ張ってユリアナ達6人の妻を乗せて湖畔の館に向かう事になった。
それで、今回の北カンザク地方のエルフ族の隠れ住む山岳地帯の随行のメンバーは汚水三人組改め湖畔の館の三羽烏とシズル、アカネと白愛虎と白神虎とヨウコになった。
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