第37話 転移装置と巨大ワニの出現

 俺達は真正カンザク王国の誕生のため、元南カンザク王国を訪れて、法整備どころか悪徳領主を廃位して国王の直轄領としたり、農民に対する4公6民だけでなく商業や工業からも税を取る等税制度の改善を行った。

 そのおかげで戦乱で逃散した領民が戻って来て緑の大地が広がるように真正カンザク王国が安定してくる。

 真正カンザク王国の安定と発展のためにカンザク王国の王城と元南カンザク王国の王城とをしっかりと押さえる事が必要である。


 問題は拠点になる王城から王城までの距離だ、陸路ではなく運河を使って移動することも考えたが、もっと短時間に移動できないかという事だ。

 俺達は転移できるが、問題の対応対処のために部隊を緊急展開できる転移装置を造れないかということだ。

 セレスティアとクロアティアスの二人には蜘蛛型生物の付帯脳やステータス画面を持っていて、特に問題なく作動していた。

 蜘蛛型生物の知識を二人は持っているのだ。

 この二人の知識が転移装置に役立ちそうなのだ。

 クリフさんとクリスティーナのいる滝の裏で協議をしたいのだが、この付帯脳やステータス画面が二人の知らないうちに蜘蛛型生物と連絡を取りあっていないかということが心配だった。


 元南カンザク王国の往復の間に確認していたがどうやら安全なようなので、俺は二人とクリスと共に滝の裏の家のクリフさんのもとに会いに行くことにした。

 クリフさんはセレスティアとクロアティアスの二人を見て驚いていた。

 二人がユリアナとセーラの二人よく似た美人であった事もそうだが、二人が蜘蛛型生物の付帯脳やステータス画面を持っている事についてだ。

 クリフさんが二人の付帯脳やステータス画面について再度検査を実施する。

 宇宙エルフの付帯脳やステータス画面のコピーをしただけで問題は無いようだと判定された。


 その後、蔦の絡まる館の地下室にあったクリスティーナのコンピュータを繋げる許可をもらう。

 一々湖畔の館や滝の裏の家に行ったり来たりするのが面倒なのでクリスティーナの地下室のコンピュータルームを滝の裏の家へ移設して、直接クリフさんのコンピュータと繋げてしまった。

 クリスティーナの地下室には、蔦の絡まる館にあるメイド型ゴーレムをクリスティーナに似せたアンドロイドに改造してありクリスの手伝いをしていた。

 それを見ていたクリフさんも、いつものホログラフに似せた姿のアンドロイドを造って手伝いを始めた。


 次にオアシス城壁都市の助役の館の地下室で見つけた蜘蛛型生物の一人乗り用の宇宙船と多数のモニター画面とコンピューターとをクリフさんとクリスティーナのコンピュータとの接続だ。

 クリスが出来ればセレスティアとクロアティアスの蜘蛛型生物の付帯脳やステータス画面とも接続してみたいと言い出した。

 二人は特に問題が無かれば接続してみる事に同意した。

 これが上手くいけば宇宙エルフの文明と蜘蛛型生物の異文明の合体による高度な文明が誕生する可能性がある。

 それによって転移装置が作れるかどうかを試さなければならない。


 クリスを中心にクリフさんとクリスティーナのアンドロイドが手伝い転移装置の研究が始まった。

 セレスティアとクロアティアスの付帯脳やステータス画面にもアクセスする作業もあることから、二人も滝の裏の家に籠って研究する事になった。

 クリスもクリスティーナのアンドロイドを見て自分専用のアンドロイドを造り上げた。


 転移装置が出来るまでの間に、俺は次にカンザク王国の今回の件で破壊された王城に向かうことにしている。

 湖畔の館には怪我が治った近衛の団長が近衛の師団と共に逗留していたが、俺達が出発すると同時にカナサキ村がある程度復興したことから、カナサキ村に近衛の師団駐屯地を作ることにした。

 近衛の師団はカンザク王国の王城の状態によっては王城まで向かう事になっていた。

 今回の俺の同行者は、カンザク王国の王城の城代になってもらう予定の宰相と宰相の護衛のウコンさん、俺の部下のサコンさんとヤシキさん、ジロウさん、モン、アカネさんとヨウコ、白愛虎と白神虎の姉弟それに汚水三人組とシズルだ。

 白愛虎と白神虎の二人の従者だった男の子についてはゾンビの黒い霧で亡くなてしまったそうだ。


 ユリアナとセーラの二人は子供が産まれるまでの間は湖畔の館に留まる。

 その間は、皇后様と宰相の奥さんと女官頭のハラさんが面倒を見る事になった。

 前回の6人の忍者集団が陰から守っている。

 ベックさん夫婦とルウ、サコンさんの許婚のサエコさん、ジロウさんの許婚のカナコさんも湖畔の館に残ることになっている。

 それと近衛見習いの男の子は13人いたのが7人に、女官見習いの女の子は17人いたのが10人になってしまった。

 俺と同行する白愛虎と白神虎それに汚水三人組とシズルの六人を除く子達は湖畔の館に残した。

 アオイと6体のガーディアンゴーレムを操る俺の子供達はユリアナとセーラの直属の護衛として湖畔の館に残った。

 6体のガーディアンゴーレムと俺が連れてきた6人の忍者集団の訓練は速くて面白いものだった。


 俺達がカンザク王国の王城に着くと、王城は今回の内戦で見るも無残に燃え落ちており、俺がやっと復興したのに最初からやり直しである。

 ヤシキさんが今回の内戦で後方不明になった、許嫁いいなずけとヤシキさんの母親を探しに王都の中を探しに行きたいというので許可を与えた。

 宰相の館に宰相と共に入る。

 蔦の絡まる館は湖畔の館に置いたままで、オアシス城壁都市の助役の館を魔法の袋に入れて持ち歩いている。

 王城の再建を行う。庭園の事を考えると食肉植物のアオイの意見が聞きたい。


 まずは、二度も短期間に破壊された王城はとても不吉である。

 使用可能な部屋や一応使える部屋を手入れして使えるようにしたところで、カナサキ村から近衛の師団長を呼んだ。

 旧王城は近衛の団長の館として、近衛の訓練地にする事にしたのだ。

 俺は出来るだけ風光明媚であり、交通の便が良い要衝の場所で地盤の強固な場所に新たな王城を建設する事にした。

 適当な王城予定地がないかを調査をする。


 カンザク王国の王城付近で南カンザク王国のオアシス城壁都市まで通じるカンザク大河が流れている。

 カンザク大河は大型船が運航できるほどの十分な水深と水量を誇る。

 カンザク大河に流れ込む支流が何本かあるが、大河と支流の間に大河を見下ろすようにして少し小高い丘があった。

 その場所は魔の森の山側に位置する王城から約30キロほどカンザク大河側に位置する。


 俺は王城建設予定地の視察としてその小高い丘に登る。

 内航海運業が発展すれば交通の要衝となる地でなかなか風光明媚で地盤も強固な場所である。

 丘の上から井戸を掘って地盤の調査と水が出るかどうかを調べる。

 地盤は強固で十分重量のある建物を建てることが出来る。

 地下水も流れている。

 さらにここから、カンザク王国の王城予定地からカナサキ村を通って魔の森の湖畔の館までに到る運河を作る事もできる。


 これまで内航海運業が発展していないことについて疑問に思い、同行者等を集めて聞いて見た。

 ここでモンが大河があるが内航海運業が発達しない理由について話し始めた。

「この付近は大きな体長50メートルを超えるカメが生息していた。

 特に人には危害を加えないが、このカメは好奇心が旺盛で船やいかだを見つけるとひっくり返してしまう。

 それでこの大河における内航海運業が発達できなかった。

 そのうえ最近では体長100メートルを超える大きなワニが出現している。

 この大きなワニは通常は海に住んでいるのだが、この大河を海から上ってきて住みついてしまった。

 大きなワニは強暴で攻撃性が強く、そのうえ悪食で人でも大きなカメでも食べてしまう。

 この大きなワニは強敵には集団で襲う知能も持っており、湖竜でも集団で襲ってくる大きなワニには勝てないで湖龍にも被害が出ているようだ。

 実は湖竜からも、この大きなワニを退治してくれないかと相談を受けている。

 大きなワニを退治することができたら、大きなカメも内航海運業を許可してくれると思う。」

と言うものだった。


 どうしようと思っていると、大きなカメが空を飛んでいる。

 昔の特撮映画でカメが飛んでいる映画があったな⁉

 その大きなカメは体長100メートル級の大きなワニの尻尾で叩かれて空に打ち上げられたのだ。

 小型とはいえ体長10メートルはあろうかと思われるカメが空を飛んで、岩壁に叩きつけられようとしている・・・!

 俺は身体強化を使ってカメを空中で受け止めて、もう一度空に投げ上げて勢いを殺して地面に置く。


 大きな化け物のようなワニが大口を開けて、地面に置いたカメを噛もうと凄い勢いで河から河川敷を駆け上がってくる。

 カメは甲羅に手足を入れて身を守ろうとする、手足や頭が甲羅に隠れた直後に

『ガキッツ』

という音と共にワニの大きな歯が甲羅に食い込む。

 カメはあまりの事に驚いて手や足を出し、頭まで出してしまった。

 カメの可愛い丸い目がウルウルとして俺に助けを求めるように見ている。


 俺は日本刀を抜き出し火魔法を刀身に纏わらせて、ワニの歯を切り飛ばしていき、ワニの顔を蹴り飛ばす。

 歯の痛みでワニは大河に逃げ込む、しばらくするとそのワニの血の臭いを嗅ぎつけたのか何匹ものワニが集まってきた。

 同じような100メートル級のワニが怪我をしているワニに噛みつく、更に血が流れる。

 大きな船が起こす航跡波のようなものが水面におきる。でかい!


 水の下に100メートル級のワニどころ、その三倍はある巨大なワニが大口を開けて、闘っている100メートル級のワニ二匹を飲み込んでしまったのだ。

 その300メートル級のワニが俺達の方に向かって泳いでくる。

 封印した戦略級の火魔法をでかい300メートル級のワニを中心して落としてみる。

 俺の火魔法により直径1キロ程の円状に川の水が蒸発し、川底まで干上がり、川の中にいた100メートル級のでかいワニ達があっという間に燃え上がり骨となった。

 その骨も灰となってしまった。

 その地獄の業火に耐えてワニ達の燃え尽きた灰の中に大人の拳ほどの大きさの真黒な魔石が残っている。

 また、そんな地獄の業火の中でも300メートル級のワニはしばらくは耐えて前に進んでいたが、そのうちにグズグズと燃え始め、最後には骨と子供の頭ほどもある真黒な魔石が残っていた。

 何とか残っていた子供の頭ほどの真黒な魔石と大人の拳ほどの大きさの真黒な魔石を回収した。


 そこで、俺の魔力が枯渇した。魔力切れで倒れそうになる。

 分母は無限大になったが、分子がなかなかたまらない。

 それですぐ魔力切れを起こしてしまうのだ。

 俺は、でかいカメの甲羅に体を預けて寝ていた。

 気が付くとカメの丸い可愛い目が俺を見つめている。

 俺が起きると俺の横で寝ていたモンも起きた。

 モンがカメの頭に手を置き、しばらくすると、でかいカメの身体に光が包みその光が縮んでいき、光が収まると大きな丸い目をした女の子が現れた。


 彼女はこの地を守るカメの王、玄武の末裔である。玄子くろこと名乗った。

 そう言えば、前世で青龍、白虎、玄武、朱雀なんてのがあったな⁉

 モンは青龍だし、白愛虎は白虎の末裔だし、今、玄子が玄武の末裔まで会えるとは!

 モンの話でワニ退治をする事になったが、どれだけのワニを倒せばいいのだろうか?


 亀の子の玄子が言うには

「体長500メートルを超える超巨大ワニが1頭、今回倒した300メートル級の巨大ワニが残り3頭、100メートル級のワニが数千頭いるが、ボス的な超巨大ワニと巨大ワニを倒せば、100メートル級のワニのまとまりが無くなり共食いを始めるだろう。

 この地方は冬大雪が降り積りワニにとっては住みやすい地方ではないはずだ。

 確かに寒暖差が激しく、ワニのように変温動物にとっては住みやすい地域ではない。

 ただ地域特性として火山帯があり活火山の影響か温水の出る場所がたくさんある。

 そのような場所をねぐらとしている。

 その最大の場所が、ここから2キロほど下流にある湖だ。

 その湖は温泉が湧き出してできあがったものだ。

 以前はカメ一族がそこで集まって住んでいたのが超巨大ワニが襲ってきて、奪い取られた。

 その場所はカメ一族の聖地ともいえる場所で、聖地を奪還して欲しい。

 実はここではワニが魚介類を食べつくし、河川敷に住んでいる動物を襲いつつある。

 その被害はいずれここに住む住民にも及ぶだろう。

 また季節は秋で、ワニは冬眠するために住民を襲う確率が高まっている。」

と言うものであった。


 国民の生命身体財産を守るのは国王の仕事。前世でも警察官は国民の生命身体財産を守るのが仕事だった!それを誇りとして仕事をしてきた。


無駄話だが、コメ国で白人警官が黒人男性の背に膝を乗せて殺した画像が流れていた。その前段階の映像では、すでに後ろ手錠をされ二人の警察官に連れられて抵抗することなく歩いている、そのままパトカーに入れてしまえば今回のような悲劇は起きなかったのに。閑話休題。

 

 カナサキ村に駐屯していた近衛の師団を呼ぶ、また元南カンザク王国の精鋭部隊

もセレスティア王女とクロアティアス騎馬軍団長を通じて集めてもらうことから急遽、転移装置の開発をしていた二人を真正カンザク王国の王城の建設予定地に、精鋭部隊の再編成等の今後の事を考えて呼び出しする事になった。


 巨大ワニ対策指揮所を真正カンザク王国の王城の建設予定地である、この小高い丘の上に置くことにした。

 旧カンザク王国の王城の跡にある大貴族の空き家を魔法の袋を使って移築して近衛の師団や精鋭部隊の詰所にした。

 セレスティアとクロアティアスは転移装置については開発の目途が付いたといって明るい顔で現れて、部隊編成の仕事等に就いた。


 その後に、二人の明るい笑顔に反してヤシキさんが疲れた暗い顔で戻ってきた。

 病弱な母親が悪性の流行りはやりやまいかかり、亡くなったが、母親を看病していた許嫁も悪性の流行り病がうつって、あっという間に亡くなってしまった。

 二人の埋葬した場所でしばらくいたそうだ。

 ヤシキさんには気の毒な事をした。

 ヤシキさんにしばらく休むように言ったが仕事をして忘れたいそうだ。

 辛かった事を忘れるために巨大ワニの対策に専念するそうだ。

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