男女装

自立したアホ毛

第一章

1話 プロローグ………って必要?

 偶に「男に生まれたかった」とか「女に生まれたかった」とか言う人がいる。自分の生まれ持った性別に難癖をつけ、無いものねだりをする人がいる。青く見える隣の芝生を羨ましく思う人がいる。


 女だったらアレがしたい、コレがしたい。男だったらアレをしなくていいのに、コレをしなくてもいいのに。


 でもそんな羨望せんぼうは、その人生を歩んだ経験の上になるものだから、他の人生を経験していない浅はかな羨望だ。


 何も分かってない。恐らくその人は、表面の甘い汁を啜りたいだけだ。毒を食らわば皿まで、理解が無いから覚悟も無い。


 そんな言葉を耳にすると、僕はつくづく「なれば良いじゃないか」と思ったりする。彼らがそうだった様に。


 この物語は、性別の垣根を超えた恋のお話。愛情より友情を優先して、友情を犠牲にして愛情を燃やす物語。傷を舐め合い、傷口に塩を塗り合う物語。


 そんな下らない物語も、暇つぶしになれば幸い、クスッとでも笑えたら丸儲け。貴方の人生という名の道の、道端に落ちてる小石にでも成れたらと嬉しい。と、あの人は言っていたね。


 さて。


 渡された台本はここまで。要らないことは喋らないよ。君達、ネタバレ嫌いでしょ?


 ここからは、彼ら彼女らの物語を、彼ら自身で語ってもらおうと思う。彼の場合は♤《スペード》、彼女の場合は♡《ハート》を目印にしてるみたいだよ。立ち位置によって見方も変わるから気をつけて。


 最後に一言?えー、そう言うの苦手なんだけど。


 じゃあ、まぁ、ここはアドリブで。


 ……もし、あなたが理解ある人なら、どうか見届けてはくれないか。


 彼らなりの青春を。

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