『小さなお話し』 その52

やましん(テンパー)

『やましんさんのバッジ』

はとさぶろ

『本日の問題点は、やましんさんのバッジが、行方不明になったことであります。ママは、ほんと、見てないのですか。』


ネコママ


 『さあて、なかったわにゃ。どんなバッジ?』


はとさぶろ


 『やましんさんによれば、人間の大作曲家、ベートーヴェンさんのバッジらしいです。』


ネコママ


 『はああ。べーさんねぇ。べーさんかあ。ここでなくしたの?』


はとさぶろ


 『はっきりしないです。カラオケ大会のとき、ポッケに入れてたかもしれない、そうです。さいきん、ちょっと、やましんさん、ボケぎみですから、本人も、確信はないらしいです。』


ネズミ軍曹


 『勘違いだろ。ちゅ。』  


カージンゴ


 『疑われたら、いい、迷惑だ。おれは、見てない。あらぬ疑いで、相手をいじめるのは、人間の常套手段かー。』


はとさぶろ


 『まあ、疑ってるわけじゃない、捜索だぽ。日ごろ、世話になってるだろ。』


カージンゴ


 『ちっとも。やましんは、裏政府の調査対象だかあ。怪しい人物だかあな。』


はとさぶろ


 『まあ、しらべてあげるべきと思って、専門家を連れてきたぽ。』  


ごき探偵


 『ども。探偵、『あかごきちゅうごろ』です。さっそく、探索開始します。』


ネコママ


 『あかごき……って、あの、名探偵の?』


ごき探偵


 『まあ、そうです。』


 あかごき探偵は、すばやく、どこにでも、侵入できるのだ。


 真っ暗でも、気にしない。


 いや、そのほうが、よい。


 ゆか、かべ、てんじょう、引き出しの中……


入れない場所はないのである。


相棒には、ノミソン博士いつも付いている。


世界最小の医学博士だという。


ごき探偵


『ノミソンくん。たのむ。全員の、毛の中とか見てくれないか。』


ノミソン博士


『あいよ。』


 声はすれども、姿はよくわからない。


ごき探偵


 『血は吸わないでくれ。』


ノミソン博士


 『つまらんな。』


ごき探偵


 『さて、みなさん、ちょっと、おまちください。』


 ポッケから、小さな虫メガネを出し、探偵は、あちこちを動き回った。


ごき探偵


 『ふふん。なるほど。おお、そうか。』


 独り言が多い探偵なのである。


 

・・・・・・・・・・・・・・・🔍

 


ごき探偵


『さて、みなさん、カラオケ大会のとき、やましんさんは、ここに、座って審査していた。彼は、ズボンの右のポッケに、バッジを入れていたと、仮定しよう。』  


カージンゴ


 『なんで、右なんだかあ?』


ごき探偵


 『やましんさんは、硬いものは、右側のポッケに、柔らかいものは、左側のポッケに、入れるくせがある、と、みた。ただし、自動車のカギは例外だ。ならば、バッジが、落ちた可能性が高いのは、まあ、この、地面の溝だ。ここは、非常に、狭い。ところでその、バッジですが、平面的には、かなり、大きいが、こう、たてになれば、ここに、スポッ、と、はまるだろう。』


はとさぶろ


 『まあ、たしかに。しかし、いまは、ない。』


ごき探偵


 『そう、いまは、ない。しかし。みなさん、ここに集まっていたみなさんのなかで、このみぞから、バッジを拾える能力があり、また、その、機会があったのは、だれか? 実際にやってみましょう。ああ、よろしく。』


 ノミソン博士がいったい、どこにいったのか、さっぱりわからないが、あらたな助っ人があらわれた。


 ごき探偵


 『あ、わんこ運送のスタッフ、ころくんです。たのむ。』


 ネコママ(独白)


 『わ、まずい…………』


ころ


 『わん。ここか、わん。バッジの臭いがするわん。』


ごき探偵


 『そう、そう。ゆっくりね。』


 ころくんは、割合深い溝に、くわえてきた、バッジを差し込んだのである。


ごき探偵


 『じゃあ、みなさん、各自、やってもらいましょう。はい、あなたから。』


はとさぶろ


 『ぼくもですが。』  


ごき探偵


 『もちろん。』


はとさぶろ


 『やれ、やれ。では。よいさ。あら………あらあ、ほいさ。あら・・・意外と、難しいな・・・』


ごき探偵


 『はいーー。時間終了。短時間で、さっとでき、誰にも、気付かれないことが必要です。つぎ、あなた。カージンゴさん。』


カージンゴ


 『ふん、くだらん。こんなん。 あらよっと。おわ。ぶつかる。ヒッパろ出せるけど、ここ、邪魔、かあ~~~。いて!』


ごき探偵


 『なるほど、力があるから引っ張り出せるが、体が大きい分、後ろ側の段にひっかかりますな。まあ、灰色。』


カージンゴ


 『くそ。コナもん、だれが要るものかあ~~~~~。』


 という具合で、ごきさんからネズミさんまで、色々やってみたが、引っ張り出せたのは、カージンゴだけ。


ごき探偵


 『さて、というわけで、あと、残るのは、おかみさん、あなただけです。あらゆる、観点から見て、誰にも怪しまれずに、実行できる犯人は、あなたしかいない。と、思います。道具も使える。』


ねこママ


 『ふうん。まあ、しょうがないにゃ。きらきら奇麗だったにゃん。でも、もうないにゅあん。』


ごき探偵


 『どこに隠しましたか?』


ねこママ


 『ゴキ大将に、差し上げましたにゃん。お好きだから。ああいうの。落とし物にゃんこ。』


ごき探偵


 『あ、ノミソンくん。もう、いいだろう。』


ノミソン博士


 『そうか。じゃあ、よっこらしょ。』


ねこママ


 『ぎゃあ〰️〰️〰️、あんた、どこから、出てきたのにゃ〰️〰️〰️‼️』


ノミソン博士


 『ママの、毛に、ほんの小さな、刺し傷があった。鋭い金属で、刺したんだろう。』


ごき探偵


 『なるほど。動く証拠だ。』


ネコママ


 『あほらし。』


ごき探偵


 『大将は、どこですか?それに、だいたい、本人はどこ?』


ごき中佐


 『出張で、ヨーロッパであります。やましんさんは、けさ、大将を空港に、運びました。その後は、みておりません。帰宅していないようです。それで、ヨーロッパの大将からの指示であります。ほら、持って来い。』


 ごきたちが100ごきほどで、大きな箱をはこんできた。


 バッジで満載である。



はとさぶろ


『なんと。スゴイ数だなぽ、これは。』 


ネコママ


『あらまあ❗あ、あった。これにゃんこ。このかおが、ベートーベンさんにゃんこ。』


はとさぶろ


『きれいな、透き通った、箱に入ってる。』


ごき探偵


『気に入ったとみえますな。』


ごき中佐


『大将は、やましんさんに、返すようにと申しております。ママに、悪気はないとも。探偵の報酬は、バッジのなかから、払ってくれと。』


ネコママ


『にゃんこ。う、う、う。😢』


ごき探偵


『まあ、見つかったから、ぼくの役目は、おわりです。ノミソンくん、帰ろうか。報酬は、じゃあ、これ、三個もらいます。いっこは、ノミソンくんにだ。ちょっと、大きいが。』


ノミソン


『ああ。まあ、ぼくら、主な仕事は、落とし物探しだからな。ノミノミ。なかなか、サイズは合わないんだ。また、やましんさんから、吸うことにする。』


はとさぶろ


『しかし、やましんさん、どこに、行ったのかな? 集金しなきゃ。』


ネコママ


『出歩くのは、あまり、好きじゃないはず。』


はとさぶろ  


『いやな、予感がする。』



 やましんは、飛行機から連れ出され、ロンドンの深い古い、地下鉄の底の底にある、『人』たちはもうだれも入らない場所に、監禁されたのだ。


 やましん、あやうし。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


   『はとさぶろの放蕩生活』に、続きます…………………  




付録


 不思議が池の幸子さん


『いくらなんでも、つまんないでしょ。やましんさん。』


 やましん


『ですね。さっぱり、もう、ひらめかなくて。で、ここは、どこ? 出口、ないぞ。』 



 








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『小さなお話し』 その52 やましん(テンパー) @yamashin-2

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